【コラム】そのブレスト、効果がない!?アイデアを生み出す方法論

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ブレインストーミング、略して「ブレスト」。新しい企画や商品を生み出す際に使われる手法で、会議の参加者が思うままにアイデアを出し合うというものだ。脳(Brain)が集合し、嵐(Storming)を起こすかのように集団で大量のアイデアを出し合うことで他人の思考と連鎖反応を起こし、斬新なアイデアを生み出すことが期待されている。

この方法を提唱したアレックス・オズボーン氏はその著書「独創力を伸ばせ」の中で、ブレストを効果的に行うためには下記のルールが重要だと紹介した。

  1. できるだけ多くのアイデアを出す
  2. できるだけ幅広いアイデアを出す
  3. 互いのアイデアをもとにして発展させる
  4. 出されたアイデアに判断を下さない(批判しない)

だが、ある心理学者たちの実験によって、ブレストはチームでクリエイティブなアイデアを出す上で有効ではないと証明されていることをご存知だろうか。実験では4人で一緒になってブレストをする集団と、4人が個々人で他人と干渉せずにアイデアを1人で出し続ける場合のアイデアの量を比較した。

その結果は驚くもので、後者の個々にアイデアを出したグループのほうが、2倍のアイデアが出たのだ。世界中で同様の実験が25回も行なわれているが、前者のほうが有効だった例は1つとしてない。また、その結果はアイデアの「量」だけでなく「質」に対しても同じだったという。

なぜこのような結果になるのかをミヒャエル・ディールとウォルフガング・ストローブというドイツの研究者が分析したところ、3つの要因があることが分かった。

最初の要因は「ただ乗り効果」で、自分の意見が最終成果物になるわけではないことにより、個々が真剣に考えようとしなくなるためだ。

二つ目は「評価懸念」で、人に向けて発信する際に少なからず相手からの評価を気にしてしまい、思い切った発想をすることを控えてしまうためだ。

そして一番大きい要因とされたのが「ブロッキング」というもので、グループでは1人ずつの発言が必要となり、自分の番を待って話すまで発想が中断されてしまうのだ。人間の脳は聞くこと、発想すること、記憶すること、話すことを同時にはできない。思いついたアイデアもすぐに書き留めたり、話したりする前に忘却してしまっているようだ。そのため、グループの人数が多ければ多いほど中断の時間が多く、生産性が低くなるという結果も出ている。

では、ブレストをやめるべきなのだろうか。「アイデアは交差点から生まれる」の著者フランス・ヨハンソンはそうは考えてはいない。ヨハンソン氏は上記のブレストと生産性の事実を認識した上で、

  1. 集団でブレストを始める前に、個々人でのブレストを15〜20分程度とること。(そしてそれを忘れないようメモしておくこと)
  2. 1人ずつリストを読ませるのではなく、参加者をひとつにまとめ、グループディスカッション形式でブレストを進め、アイデアの連想を誘発すること。

という条件をつければ、ブレストは有効なものになりうるとしている。

また、ディールとストローブはそれ以外の方法として「ブレーンライティング」という手法も推奨している。これは参加者が同じ問題について考えたアイデアを紙に記載し、互いのアイデアをさらに発展させていく方法で、全ては無言で行われる。具体的には、探求すべきテーマや課題を共有された参加者がひとつのテーブルを囲み、各人がそれぞれのシートに一つだけアイデアを記入し、そのシートをテーブルの中央に置き、別の人の記入したシートをとる。参加者はそのシートに書かれたアイデアを読み、何らかの形で発展させたものを記載し、またテーブルの中央に出すということを繰り返し、アイデアを発展させていく。

そのブレスト、意味あるものになっていますか?

上記の実験結果を日々の生活や業務に照らしてみて、いかがだろうか。形だけのブレストを行ってしまってはいないだろうか。筆者は広告会社というアイデアを生み出すことも生業とする職場で働いているが、確かに「何となく大勢が集まってブレストをする会議」でいいアイデアが生まれたことがないように思う。

一方で、本当に優秀なマーケターやクリエイターを見ていると、日々、四六時中その課題のことを頭の片隅で考えているので、常に個々人でのブレスト、アイデア出しの作業が一定のレベルまで完了している印象も受ける。常にその課題について考え続け、いつブレストや意見を求められる場があっても対応できる人材は重宝されるだろう。

以上が「ブレスト」から考える有効なアイデア発想方法だ。自分がアイデアを生み出すようなミーティングをセッティングする機会があった際は、ぜひ上記の事実を意識して「個々人が、当事者意識をもって思考を最大限活性化しつつ、他人とのアイデアの連想や創発をおこす」ための方法論を試してみてほしい。