ロンドン発、見えないハンディキャップを抱えた人でも席を譲ってもらえる青バッジ

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世の中には、一見しただけでは分からないものの実は隠れた病気や障害を抱えており、電車やバスなどで優先席を必要としている人々がたくさんいる。彼らは本来座席を必要とする立場でありながら、そのハンディキャップの分かりづらさゆえに車内で席を譲ってもらうことができず、人知れぬ苦労を抱えている。

そんな状況を改善するべく、イギリスの首都ロンドンで新たな取り組みが始まっている。このたびロンドン交通局(TfL)が新たに導入したのは、”Please offer me a seat”と書かれた小さな青いバッジとカードだ。

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日本にも国が発行する妊婦用のバッジがあるが、このロンドンのバッジとカードは妊婦だけではなく公共交通機関を使用する全ての人々が利用できる。

これまでロンドン市内を走る電車やバスは、目には見えない隠れた病気や障害を持つ人々にとってあまりフレンドリーな場所とは言えなかった。しかし、このバッジとカードにより、ロンドンの人々は見ただけでは分からないハンディキャップを公に認識することが可能となった。ヨーロッパでは初の試みだ。

今回TfLが導入したシステムの素晴らしいポイントは「バッジとカードの2種類が発行される」という点と「席を譲ってもらう際に理由を知らせなくても済む」という点の2つだ。

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カードはバッジの代替品として設計されたもので、保持者は自身が病気であることを公に知らせたくない場合は、控えめに提示することができる。また、このカードの保持者は「なぜ席が必要なのか」という理由を明かさずともそれを見せるだけで席を譲ってもらえるという仕組みになっており、プライバシーも守られる。

今回のバッジとカードの導入に先立ち、TfLは昨年9月から6週間にわたって試験運用を実施し、1,200人以上が参加した。その結果、72%の人々がバッジの効用により交通機関を使用して移動することが簡単になったと回答したほか、86%が車内で座席を求める際に自信をもってお願いすることができるようになったと回答したという。全体としては98%がこの新たなシステムは大変有効であり、ぜひおすすめしたいと答えたとのことだ。

このトライアルの成功を受けて、TfLは今年の春からこのバッジとカードの両方を本格的に導入する予定だ。

TfLは、カード保持者と一般の乗客へ向けて「カード保持者は車内に入ったらバッジやカードを提示して下さい。そしてそれらを提示された乗客は速やかに席を譲ってください。車内には優先席が用意されていますが、それ以外の場所でもこれらのカードを所持する人々には親切に席を譲ってください。またバッジやカード保持者は他の乗客に座席が必要な理由を説明する必要はまったくありません。このバッジとカードの目的は、座席を必要とする理由を他の乗客に説明する必要性を排除することです。」とメッセージを伝えている。

今後、この新しい試みをきっかけに人々が認識を変えて、お互いが公共交通機関の利用時に気持ちよく席を譲り合える環境が作られることがTfLの願いだ。

理由に関わらず本当に席を必要としている人々に譲ることができ、反対に個人的な病気や障害、妊娠などのプライバシーを公表せずともカードやバッジを見せるだけで席を譲ってもらえるというこのロンドンでの試みは、ぜひとも全世界に広がってほしいアイデアだ。

袖振り合うも多生の縁。電車内での席の譲り合いは、人の優しさがダイレクトに伝わる温かな場面の一コマだ。このバッジを通じて他人とのコミュニケーションがさらに増え、日々シンプルな幸せを感じることができれば、世の中はさらに素敵なものとなるに違いない。

【参照記事】‘Please Offer Me a Seat’ badge and card to be rolled out permanently after successful trial
【参照記事】Please offer me a seat

(写真提供:Flicker Transport for London