天災を恵みに変える!雨水からビールをつくる「Hemelswater」

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今、西欧諸国では気候変動による降水量の増加がもたらす都市洪水のリスクが懸念されている。そのなかでも、ライン川下流の低湿地帯に位置し、国土の4分の1が海面下にあるオランダは、実に国土の3分の2が洪水の恐れが高い地域となっており、歴史的に人々は常に水害と隣り合わせで暮らしてきた。

オランダの風物詩ともいえる風車は治水ポンプの役割も果たしている。首都アムステルダムはアスファルトで覆われているため、地面に雨が浸透しにくく、人口密度も高いので都市洪水に用心を怠るわけにはいかない。

その雨水を逆手にとって、アムステルダムにあるフォルクスホテルの屋上で雨水を集め、ビールにしてしまったのが、オランダ語で「天国の水」という意味を持つ社名の醸造所、「Hemelswater」だ。

商品化されたビールはオランダで豪雨や降雪等の激しい気象を意味する言葉「Code Blond」と命名された。同社は2016年5月に1000リットル以上の雨水を集めて初めて製造。細菌除去や加熱処理を経た雨水で作ったビールは水道水のものに比べて、やや柔らかくで苦みがあり、濃い味に仕上がり、1本2ユーロで売られている。

この企画は人々に気候変動や治水へのアクションを喚起するのが狙いだという。ビール醸造のためには大量の水が必要であるため、音頭をとったヨリス・ホーベは、回収した雨水でのビール製造を「ウィン-ウィン」と表現する。

同社は雨水のジントニックも製造しており、今後はアイスクリームやスープなど様々な雨水商品を投入する予定だ。そのためにはさらに多くの雨水が必要で、スマートバレルとよばれる装置を街中のビルに次々と設置。その数が増えるに従い、ロジスティックスも重要になり、雨水の樽が満タンになると自動的に通知するセンサーを備えて効率的に回収している。オランダは季節による降水量の違いがあまりなく、年間を通じて、毎月50mmから80mmの降水があるため、幸い安定して原料となる水を供給することができる。

日本でも津波や台風に代表されるように種類は異なるが、水害は他人事ではない。このようなプロジェクトは行政主導の公共事業として行われることが多い。むしろ日本での治水は行政主導という発想しかないのではないだろうか。環境問題とより災害に強い街づくりを民間の商品開発で一手に担ってしまう、こんなに頼もしいことはない。環境は人々をたくましくするが、商品が売れれば売れるほど、アムステルダムの治水力が増す、なんとも魅力的な取り組みだ。

日本は歴史的に蘭学と呼ぶくらい、長崎の出島を介して多くの西洋知識をとりいれてきた。時代は変わったが、オランダから学ぶべきことはまだまだありそうだ。

【参考サイト】Hemelswater
【参照記事】Hemelswater Makes Beer From Rain On Urban Rooftops