3Dプリント技術でつくられた自給自足のスマートホーム「PassivDom」

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例えば、木々の葉音と小鳥のさえずりが耳に心地よい山の奥地の一軒家。明かりの灯った室内で、適度な室温と湿度を保つために自動制御システムが働き、IoT接続されたホームデバイスがオーナーのスマートフォンからの指示を待つ。

気候条件や利便性に縛られず、どんな場所にも快適な家を構えて移り住むことができるのだとしたら、今あなたが住む町は、変わらず住み続けたい場所だろうか。

ウクライナのスタートアップ、Passive House Ukraineは、エネルギー供給網による立地の制約を受けず、思い立ったその日から住みたい土地に設置して暮らし始めることのできるコンパクトで快適なモバイルホーム、PassivDomを生み出した。

PassivDomは3Dプリンティングにより作られた家だ。あらかじめ工場で生産され、倉庫で保管されるため、注文から竣工まで長期間を要する注文住宅とは違い、地域によっては注文後即日納品が可能となる。構造上、基礎工事の必要はなく、生活に必要な設備とミニマルな家具が備わり、車で運ばれてきたその日からそこで暮らし始めることができる。また、一般的な建売住宅と異なり、土地の広さや家族構成に合わせて容易に拡張可能だ。既存のモジュールを組み合わせることで、好みに応じて部屋を簡単に増設できるデザインとなっている。

入居にあたり、電気やガスの手配に煩わされる心配もない。屋根に設置された太陽光発電パネルが家庭生活に必要なすべてのエネルギーを賄う。日照が完全に遮られる天候下にあっても、2週間分のエネルギー自給が可能な蓄電容量のバッテリーが搭載されている。また、先進的な非腐食素材による壁と独自開発の窓が熱を逃さず、たとえ北極圏でも燃料の必要はないという。光熱費がかからず、クリーンエネルギーの利用によりエコフレンドリーであることは言うまでもない。貯水システム、浄水装置、下水システムが装備され、上下水道の配管も必要ない。

居住者のスマートフォンからは、室内のIoTデバイスの操作や、監視カメラの映像確認が可能だ。センサーとセルフラーニング機能の働きにより、室内環境(温度、湿度、二酸化炭素含量、酸素含量など)が天候や居住者の習性に応じて自動制御される。

PassivDomは、都市生活だからこそかなえられるはずだった快適で効率的な暮らしを、そのままどこへでも持ち出すことを可能にした。今後、欧米で見られるテレワークやリモートワークの普及が世界的な広がりをみせれば、働き盛りが都心に住み続けることの必然性も一つ失われる。先進地域における都市部への過度な人口集中が問題視される中、外部のエネルギー供給から自立した近未来型住居の存在が、人々の居住地の選択肢を広げ、住まう形の多様化と住宅事情改善の一助となるかもしれない。

【参照サイト】PassivDom

(※写真提供:PassivDom “Materials for media”