ジェンダーの偏見を可視化する。AIで会議の発言を分析するアプリ「Gender EQ」

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近年では女性の社会進出も進んでおり、職場における男女平等は実現されているように思われる。しかしながら、最も怖いのは無自覚で、無意識的な偏見だ。スウェーデンのストックホルムに本拠を置くデザイン会社のDobermanは、職場における無意識的な偏見に対処するために、音声認識を通じてジェンダーバイアスをグラフ化するアプリ「Gender EQ」を開発した。

意識の有無に関わらず、女性が職場で話すときに偏見に直面していることを示す研究は複数存在する。例えば、イェール大学の心理学者Victoria L. Brescoll氏は、男性と女性の従業員に執行役員の業績を評価させた。この研究によると、よく喋る女性役員の能力評価は14%低くなっている一方で、おしゃべりな男性役員は10%高く評価されていた。この結果を見ると、会議において男性に比べて女性があまり喋らないのも不思議ではない。このリスクは単に知覚されているだけでなく、研究によって実証されているのだ。

Dobermanは、職場におけるジェンダーバイアスをなくすためには、まずその偏見の存在を知ってもらうことが第一歩だと考え、Gender EQを開発した。このアプリは、音声認識に基づき会議をモニタリング・評価・分析し、その会議において男性と女性がそれぞれ話した時間の割合を示すものだ。

このアプリはスマートフォンやタブレットで利用可能で、会議の途中でテーブル上にデバイスを置くだけで、リアルタイムで「誰が、どのくらいの時間話しているのか」をグラフで示すことができる。Gender EQにはデバイスのマイクで拾った音からデータを抽出するアルゴリズムが用いられており、このアプリでは会話内容を録音したり、発言内容を分析したりすることはないため、ユーザーのプライバシーを侵害することなく、あくまで発話頻度を認識して男女のラベルづけのみを行うことができる。

アプリのインターフェースには男性と女性のアイコンがあり、音声認識された性別のアイコン側に、音波に似た線をリアルタイムに示す。つまりこの画面を見ると、今話しているのが男性なのか、女性なのか(もしくは両方なのか)がわかるようになっている。ユーザーがボタンを押してセッションを終了させると、音波の線が画面上を垂直に移動し、会議中の発言時間の概要を示す折れ線グラフになる。このタイトでエレガントなデザインは、非常にシンプルで使いやすい。

もちろん、このアプリを使うことで職場のジェンダー問題の全てが解決されるわけではない。DobermanはGender EQを開発した意図について「ジェンダーアイデンティティは、はるかに複雑なテーマであり、Gender EQだけで全ての問題が解決できるわけではないものの、我々はこのアプリが人々の関わり方や振る舞いについての議論を盛り上げてくれることを望んでいる」と語っている。Gender EQのゴールは、あくまで人々にジェンダーをめぐる偏見の問題を考えるきっかけと材料を与えることなのだ。

我々の職場に存在している無意識の偏見は、その存在を自覚しない限り日常生活に当たり前のように浸透してしまう。このアプリは、たとえジェンダーをめぐるバイアスの根絶に直結しないとしても、見えない偏見の定着化を防ぐための第一歩としては大いに意味がありそうだ。

【参照サイト】Gender EQ
【参照記事】This App Uses AI To Track Mansplaining In Your Meetings

(※写真:Gender EQより)