ビル・ゲイツがVRで伝えたい、小さなイノベーションがもたらす大きなインパクト

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今、世界はよくなっているのだろうか。それとも悪くなっているのだろうか。

終わりのない戦争やテロ、移民問題や格差の拡大など、毎日のように世界を駆け巡るネガティブなニュースのせいで、私たちはこの世界についてつい悲観的な見方をしてしまう。しかし、実際のデータを見てみると、世界全体は少なくともかつてより住みやすい場所になっていることは間違いなさそうだ。

世界銀行の調査によれば、1990年には37.1%だった世界の貧困率は2015年には10%以下へとこの25年で大きく減少した。国連のデータでは、世界の5歳児未満の死亡率は1970年の14.5%から2015年には4.3%まで大きく減少し、世界の平均寿命はこの45年で59歳から72歳まで伸びている。女性の権利は向上し、テクノロジーのおかげで世界は便利になり、私たちはかつてない豊かな時代を生きている。

ここまで住みやすくなった世界を生きる私たちが、なぜ未来に対して希望を持てないのか。それは、自分が何かをしても変わらないだろうという無力感からかもしれない。多くの人々はただ現状を前に立ちすくむだけで、自分の力で何かを変えられるとは思っていないのだ。

しかし、私たちはこの数十年間で劇的に改善した世界の状況が、実は日々の小さなイノベーションの積み重ねによって実現されてきたことをあまり知らない。小さな工夫やアイデアが持つ本当の力を知れば、人々は自分たちの力で世界をよりよい方向へと変えていけるという自信を取り戻すはずだ。

そう考えたビル・ゲイツ氏が作ったのは、アフリカの日常の暮らしを写し出した360度のVR動画だ。”Small Innovations – Big Impact”と名付けられたこの動画は、視聴者にアフリカの人々の日常生活を疑似体験させながら、クイズ形式でその日常に潜む小さなイノベーションと、そのイノベーションがもたらした大きな変化について気づかせる内容となっている。

動画では、部屋のストーブのそばに置いてある栄養価を高くした小麦粉、村のクリニックで使われているHIV感染を防ぐための黒い箱、ワクチンを保存するための電気がいらない冷蔵庫、村の売店で使われている、農夫が借金をせずに肥料や種など大きな買い物をできるスクラッチカードなどが紹介される。

これらはいずれも高度なテクノロジーを必要としないシンプルで原始的なものばかりだが、それでもアフリカの人々の生活の質を劇的に改善させた。母親と乳児は健康を手に入れ、子どもは学校に行けるようになり、感染症は減り、農夫はリスクを追わずに大規模な農業投資と生産ができるようになった。

このVR動画を見ると、たとえ最先端のテクノロジーや知識がなかったとしても、普段から私たちが何気なく思いついたり触れたりする小さなアイデアやイノベーションが、世界を大きく変える可能性を持っていると感じさせられる。一人一人がそのことに気づき、イノベーションが持つ力を信じて小さなアクションを起こしていけば、世界はもっと素敵な場所になるはずだ。

【参照サイト】Hidden in Plain Sight