ブロックチェーンを活用してデジタルIDを発行。難民でも銀行口座を作れるアプリ

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国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の年間統計報告書「Global Trends 2015」によると、紛争や迫害を逃れ、家を追われた人の数は2015年末時点で統計開始以来最多の6,530万人となった。避難を余儀なくされた人々が新たな地で一から生活を築くとき、まず必要となるものは何だろうか。

ドイツのスタートアップ、Taqanuはフィンテックの活用により、身分証明書やパスポートすら持たずに祖国から避難してきた難民の人々が、デジタルIDを取得することで移住先でも銀行口座を開設できるサービスの実現を目指す。

移住を強いられた人々への支援を考えたとき、本来、まずイメージするのは衣類や食料といった衣食住に直結する物資の提供だろう。はたして多くの難民に差し迫る銀行口座への需要があるのか、容易には想像がつかない。しかし実際、地域によっては、賃貸契約をともなう居住地の確保や賃金の受け取りなど、安全に生活し、経済活動に参加するために、様々な場面で金融サービスへのアクセスが必要となる。また、銀行口座があれば、盗難や紛失の危険性のある、現金で全財産を管理する暮らしが改善される。

世界銀行のデータベース、「Global Findex」2014年版報告書によると、世界で銀行口座を持たない成人の数は20億人に上る。口座を持たない人への調査によれば、その理由の一つとして、開設に必要な書類の不在が挙げられている。

Taqanuでは、顧客が住所や公的証明書を提示できない場合でも、ソーシャルメディアやインターネット上のデータや履歴、当人の携帯電話を使って本人確認を行うことで、ブロックチェーン技術にもとづくデジタルIDを発行する。そしてこれをもとに銀行口座を開設し、デビットカードを作成する。デジタルIDの認証データが増えると、それに応じて利用できるサービスも広がるという仕組みだ。やり取りはすべてモバイル上のアプリを通して行われ、基本的なサービスについては顧客に手数料は課されない。

(※画像:Taqanuより提供)

難民とモバイルと聞いて、その接点に違和感を覚える人もいるかもしれない。しかし実際、移住の前後を通じて危険を避けるための情報を把握し、知人とのコンタクトを保つために、彼らにとって携帯電話は「食料や避難場所に次いで貴重かつ必須のアイテム」だ。「手元の資産のうち相当の額を投じてでも携帯を入手する人が多い」と、Taqanuのブログでは分析する。

「Taqanu」は古代セム語の一つであるアッカド語で「安全」を意味する。CEOのBalázs Némethi氏は、急増する難民の流入に対処しきれない欧州諸国の現状を目にして、誰もが利用できる金融システムを着想した。

Taqanu立ち上げから1年あまりにして、そのアイデアは多方面からの支援を得て具体化し、間もなく最初の果実を実らせようとしている。社会的課題の解決に向けた想いが、テクノロジーの活用を促進する。

【参照サイト】Taqanu
【参照サイト】Blog – Taqanu
【参照サイト】数字で見る難民情勢(2015年)
【参照サイト】GLOBAL TRENDS  FORCED DISPLACEMENT IN 2015
【参照サイト】プレスリリース 「銀行口座を持たない人の数が大幅に減少」
【参照サイト】THE GLOBAL FINDEX DATABASE 2014 Measuring Financial Inclusion around the World