業界初、英国のホテルが現代奴隷の撲滅へ向けた取り組みを開始

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「現代奴隷(Modern Slavery)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。いま、世界中で「現代奴隷」の状態にある人の数は実に4500万人を上回っており、日本でもおよそ23万人の人々が現代奴隷に当てはまる労働に従事させられているという。

現代奴隷とは、暴力や威嚇、恐怖によって自由を奪われ、労働対価を得られず経済搾取を受けている状態の人々のことを指す。工場での強制労働や医療産業、子どもによる物乞い、そして、借金の形に漁船などで労働させられることや強制的に家事や売春をさせられることも現代奴隷に含まれる。

現代奴隷や人身売買(Human Trafficking)の撲滅に向けた取り組みは、人に関わる事業を営む人材派遣業界や、サプライチェーン上の労働問題に取り組む製造業の世界ではこれまでにも積極的に取り組まれてきた領域だ。

しかし、今回は英国のとあるホテルグループがこの問題の取り組みに乗り出すということで注目が集まっている。ホテルはゲストに密室空間を提供するという性質上、性奴隷行為などの場所として利用されやすく、長らく現代奴隷や性犯罪の温床となってきた過去がある。

業界の先陣を切って試みを行うのは、イギリス大手のホテルグループ、Shiva Hotelsだ。同社は7月30日の人身売買世界デーに合わせ、現代奴隷・人身売買(児童買春なども含む)の撲滅に向け、ホテル従業員400人以上へ専用トレーニングプログラムを開始した。

Shiva Hotelsは7月24日から26日の2日間にわたり、施設・雇用慣行・サプライチェーンにおける現代の奴隷制のリスクを守る方法をスタッフに教育した。その内容は、毎回現金のみでチェックインをする異常なまでにリピート数が多い客、幼児や若者などと同行していることを隠そうとしているゲスト、極力人と話さないように制御されている従業員やゲストなど、現代奴隷の可能性を秘めるさまざまな事例を紹介するもので、スタッフの問題意識を高め、このような例に該当する従業員やゲストがいないかどうかを観察・察知できるようにするものだ。

また、「Stop Slavery Hotel Industry Network」というホテル業界向けの無料のリソースハブとウェブサイトを開設し、セクター内の人身売買と現代の奴隷制度に対抗し、ホテル産業に関わる全ての人々が現代奴隷への対処に責任があるという意識を持ってもらうことを目指す。さらには業界の他の団体とも協力し、現代奴隷に関する前例を作成、実践的なガイダンスやベストプラクティスなどのトレーニング資料を共有しこのネットワークをさらに広げていく方針だ。

欧州委員会の資金提供プロジェクトであるCOMBATのリサーチによると、現在英国で現代奴隷の状態にある人は約11,700人であり、毎年93,000人が性的に搾取され、さらに4,500人がヨーロッパのホテルで労働搾取をされているという。ホテルやホスピタリティ業界はこの問題に関して、今が対処していくチャンスであるとしている。

「従業員・ゲスト・サプライチェーンというホテル業界に関わるすべての人々の安全と福利が最優先である」として始まったこのプログラムは、ホテル業界だけでなくその周りに関わる人、つまりは市民全体をも視野に入れたとてつもなく大きな意味のあるプロジェクトとなっている。

現代社会の闇であり人権侵害であるこの現代奴隷問題は、いま世界中で蔓延っている。この問題が現実にあることを認識し、問題意識を持ちつつ職場や人と関わることは、あってはならないこの問題を少しずつでも改善していく一助となるのではないだろうか。

【参照サイト】Shiva Hotels
【参照記事】Network launched to combat modern slavery in the hotel sector
【参照記事】First hotel ownership group to roll out comprehensive anti-slavery programme