再エネで貧困を緩和する。イギリスが公営住宅に無料でソーラーパネル設置へ

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英国で戦後最悪となる70人以上の死者を出した今年6月のロンドンのグレンフェル・タワー火災では、その犠牲者の多くが公営住宅に暮らす住民だった。火災に弱い安価な外壁材により被害が拡大したとも言われており、「貧困層が殺された」と自治体や政府への批判が噴出したことは記憶に新しい。

歴史的に支持政党が保守党と労働党で大きく二分していることが象徴するように、英国ではエリート層と労働者階級に大きな溝が存在するが、そんな英国内の貧困格差を、環境・エネルギー対策と掛け合わせることで緩和しようというユニークな試みが始まろうとしている。

英国の再生可能エネルギー企業Solarplicityは9月2日、公営住宅で生活する80万以上の貧困世帯に対し、無料でソーラーパネルの設置を行うプログラムを開始するための第一歩として、オランダの銀行大手、ABNアムロ銀行グループのMaas Capitalから1億6千万ポンド(約234億円)の設備投資資金を確保したことを発表した。

これにより、公営住宅に暮らす貧困層の人々は太陽光発電を通じて年間1億9200万ポンド(約280億円)の電気代を節約できるようになる。Greg Hands貿易相も、オランダの投資家による英国の再生可能エネルギーへの設備投資を歓迎した。

今後、Solarplicityはイングランドとウェールズの公営住宅に順次ソーラーパネルを設置していき、テナントが長期保証される割引の恩恵を受けるコミュニティ・エネルギー・スキームを創出する計画だ。1年半以内に約10万世帯に設置し、5年間は80万世帯まで設置数を拡大する。

ソーラーパネルは公営住宅の住民に無料で提供され、住民は年間平均240ポンド(約3万5千円)の電気使用料を削減することができる。また、このプロジェクトでは、パネルの設置・維持にあたり1,000以上の新しい雇用が創出される予定で、その中には退役軍人も多く含まれている。

SolarplicityのCEOを務めるDavid Elbourne氏は、「今回の発表は、DITを通じた国際的な資本投資を支えとする再生可能エネルギー市場の目覚ましい成長を反映したものだ。Solarplicityは、太陽光、太陽光の双方の顧客の電気料金を削減することにコミットしている」と語る。

公営住宅と再生可能エネルギーを組み合わせたプロジェクトは、今に始まったわけではない。火災のあったグレンフェル・タワーからもほど近いロンドン西部にあるイーリング地区では、貧困を緩和し、CO2排出量を削減するための継続的な取り組みの一環として、2010年以降500の公営住宅に再生可能エネルギーを供給している。同自治体のJulian Bell氏は「住民のお金やエネルギー節約を支援することは常に自治体の優先事項であり、よりクリーンで再生可能な資源への投資は、私たちの任務遂行に役立つ」と語る。

貧富の対立はイギリスの欧州連合(EU)離脱にも大きく影響したと言われており、貧困対策は国家の舵を取る上でも待ったなしの状態となっている。環境にも社会にも優しいこの福祉プログラムは、同様の問題を抱える他国にとっても参考となる一つの事例となりそうだ。

【参照サイト】Press Release: Foreign investment to help tenants save up to £192M a year in energy bills

(※写真:Press Release: Foreign investment to help tenants save up to £192M a year in energy billsより)