インドネシアのバイクタクシー配車アプリ「Go-Jek」、国内移民を救う

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経済成長著しい東南アジアのなかでも、2.6億人の人口を抱え、毎年5%の経済成長を続けるなど特に注目度が高いインドネシアで、革命的なビジネスが登場していることを読者の皆様はご存知だろうか。それが、バイクタクシーの配車アプリ「Go-Jek」だ。

日本では、タクシー事業に関する様々な規制があり、Uberのような配車サービスが参入できる余地があまりない。しかし、インドネシアの都市部ではすでに「タクシーはスマホアプリで呼ぶもの」となりつつある。とくにバイクタクシーの配車を手がけるGo-Jekは、同国が抱える貧困問題すらも解消しうる有力なビジネスとして国際的にも注目されている。

かつて、新興国であるインドネシアの国民にとってインターネットは「高嶺の花」だった。パソコンとは言い換えれば「富裕層向けの道具」であり、最低法定賃金で生きる庶民にとってはまったく無縁のものだった。それが、スマートフォンの普及によりインターネットが身近な存在となったのだ。

もしインターネットがインドネシアの隅々まで行き届くようになれば、まず情報格差がなくなる。同国の教育水準はまだまだ決して高いとは言えず、国民の多くは情報を伝聞に頼っているのが現状だ。インフラ整備の問題から新聞や雑誌すら行き届かない地域もある。そのため、中央政府が国民全員に正しい情報を発表するための手段はテレビ中継かインターネットに限られるのだ。

また、インターネットは「正当な対価」というものも教えてくれる。外国人が現地のタクシーを利用すると、明らかに不当な運賃を要求されることが度々起こる。現実問題として、インドネシアには「現地人価格」と「外国人価格」が存在する。もちろん高いのは後者だ。

だが、Go-Jekを使えば、そうした不透明性を全て排除できる。目的地までの運賃は予めスマホの液晶画面に表示されており、到着後にそれを支払えばいいだけだ。

Go-Jekがインドネシアの国民と外国人の両方からの信頼を勝ち取るまでに、それほど時間はかからなかった。そして需要の増加と同時に、Go-Jekの専属ライダーを志望する者が次から次へと現れた。Go-JekはUberと同じく、常時専属ライダーを募集している。

就労者側にとってのメリットは、まず「客引きをする必要がない」ということだ。通行人に対して「乗って、乗って」としつこく声をかける姿は特に外国人から敬遠されていた。だが、Go-Jekのライダーになれば自分が何もしなくともスマホが利用客の存在を知らせてくれるのだ。

もうひとつ、「正確な位置情報が手に入る」という点も見逃せない。ホワイトカラーはともかく、一般の庶民は地図など読まないし、読み方を知らない人も少なくない。実はこれが都市部の出身者と地方からの出稼ぎ労働者とを隔てる格差の原因ともなっているのだ。

ジャカルタの細かい地名や建物の位置を知らないと、ジャカルタっ子から嘲笑され遠ざけられる。もちろん、そうしたことは何もジャカルタのみの現象ではない。大都市ならばどこでもあり得ることだ。いわゆる「国内移民」の問題である。

だが、Google Mapの位置情報は誰の目にも非常に分かりやすいため、これがあれば迷うことはない。地方からの出稼ぎ労働者でもジャカルタっ子と同等のパフォーマンスを発揮できるのだ。

Go-Jekは今や、都市部の雇用を支える一大産業と化した。地方からの出稼ぎ労働者にとってGo-Jekほどありがたいものはない。そしてそれは、ジャカルタで働く外国人駐在員にとっても同じだ。法外な値を吹っかけられる可能性はなくなった。

これこそ「ウィンウィン」と言える関係性ではないか。Go-Jekの大成功は、まさにこのウィンウィンを達成したからに他ならない。

【参照サイト】Go-Jek