傘のシェアリングエコノミーは可能か?日本と中国のサービスを比較する

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昨今では、様々なシェアリングサービスが活気づいている。需要があるからには供給も必要であり、自分が持つモノを貸し出すオーナー側として参加したい人もいるだろう。その際に気がかりなのは、シェアしたモノを盗まれることではないだろうか。部屋はさすがに盗めないが、持ち運びができるものは要注意だ。

その現実を失敗から学んだ人がいる。中国で傘のシェアリングサービス事業を始めたSharing E UmbrellaのCEO、Zhao Shupingだ。「通りで見るものはすべてシェアできる」と思い立ち計30万本のシェア用傘を各都市に配備したものの、わずか数週間でほとんどの傘が行方不明になってしまったのだ。この傘はロックもかかり、利用者はお金を払って得たコードを入力して使うという、それなりの管理システムがあったにも関わらずだ。

自転車のシェアリングビジネスは上手くいくのに、なぜ傘だとダメだったのか。Zhao Shupingは「自転車はどこにでも停められるが、傘はどこか引っ掛ける場所が必要だったから」と分析する。利用者は傘をどこに戻したらいいのか分からず、そのまま何となく家に持ち帰ってしまったのだろうか。

このケースとは対照的に、返却率70%を誇る傘のシェアサービスを成功させたのがダイドードリンコ株式会社のレンタルアンブレラという取り組みだ。ダイドードリンコは自販機を中心に売り上げを出していることから、自販機の側面にレンタルアンブレラBOXを設置し、傘を無償で貸し出す活動を始めた。無料のサービスなため特にハイテクなシステムもなく、「使った後はこのBOXに戻して」と告知するだけのシンプルなものだ。

成功の要因としてダイドードリンコは、品質の高い傘を用いたこと、「DyDo」のロゴを傘に大きくプリントしたこと、そして利用者が傘を返却しやすい適切な場所選定を心掛けたことを挙げている。確かに黒地の傘に白字で大きく「DyDo」と書かれていては、しれっと持ち続けるわけにもいくまい。ただそれを言うならSharing E Umbrellaのシェア用傘も虹色という派手さでレンタルアンブレラに匹敵する、いや上回るデザインではあるのだが。

やはり適切な場所選定、そして使った後どこに戻すかというルールが明確にされていたことが大きな勝因か。確かにレンタルアンブレラの実施規模を見てみると、関西エリア全体で自販機130台程度。1 台につき7本ほど傘が付いているようだから、本数で言うと900 本前後という辺り。Sharing E Umbrellaの30 万本と比べると大きな差だ。この差は単に中国の方が広いからとか人が多いからといった理由だけでなく、ダイドードリンコが場所の厳選をしたという証ではないだろうか。

ダイドードリンコは今後サービスを愛知エリアや関東エリアにまで広げる予定。Sharing E Umbrellaも今年末までにさらに3000万本の傘を配備するとのことで、どちらも拡大路線に舵を切っている。傘のシェアは可能なのか?両社の今後に期待したい。

【参照サイト】Chinese umbrella-sharing firm remains upbeat despite losing most of its 300,000 brollies
【参照サイト】レンタル傘で70% の返却率を誇るダイドー 成功の秘訣は?

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