マイクロプラスチックを水と二酸化炭素に。分解を速める新フィルター

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世界中で問題となっているマイクロプラスチックは、洗顔ソープやシャンプー、日焼け止めなど、多くの日常生活品に含まれているとても小さなプラスチックだ。マイクロプラスチックは微小なため下水処理場では完全に処理することができず、フィルターを通過して海に流されてしまう。これを微生物が食べ、魚や鳥が食べ、それを最終的にはヒトも食べるという食物連鎖により、生態系へもたらされる影響が懸念されている。2016年5月に富山で開催されたG7環境大臣会合では、「マイクロプラスチックは海洋生態系にとって脅威であり、世界的課題であることを認識する」と確認された。

こういった世界的関心を受け、2017年11月、スウェーデンのロイヤル技術研究所(KTH)はスウェーデンのPP Polymer ABとともに、プラスチックを水と二酸化炭素に分解するプロセスを促進する半導体材料を含むナノスケールのフィルターを開発した。

Photo: courtesy of Joydeep Dutta

通常、プラスチックは太陽光に晒されることで無害な成分に変わるが、これには時間がかかり、種類によっては数年を要するものもある。KTHのJoydeep Dutta氏はこう語る。「この半導体材料を含むナノスケールのフィルターシステムは、太陽からの可視光線と紫外線をより有効に利用することで、分解プロセスを加速させる。これがプラスチック汚染の最も効率的な対処方法だ。」

この半導体材料は、可視光線である太陽放射の40%を使って、電子を活性化させてプラスチックの分子と反応させ、油などの揮発性汚染物質を無害な水と二酸化炭素に変えるのだ。

このフィルターは今後、一般家庭や下水処理場に設置してテストされる予定だ。一般家庭でのテストではこのフィルターシステムを家庭排水の出口に設置する。また、下水処理場では従来の水処理後にこのフィルターを設置して、マイクロプラスチック分解を促進させるという。

KTHが開発したこの新フィルターは、欧州の海を綺麗にするための新たな方法の開発・展開に向けて13か国が参加する2017年から2021年までのプロジェクト(CLAIM)の技術革新の一環でもある。このプロジェクトではその他に、河口で目に見えるプラスチックごみを回収するフローティングブームを展開したり、フェリー航路などでプラスチック測定システムを試験している。

世界的な社会課題となっているマイクロプラスチック。この問題解決には、私たちが日常生活で使っているプラスチックを減らすことが一番効果的であり、最近では環境への関心の高まりとともにプラスチックの買い物袋の代わりに布袋を持参する人も多くなってきた。しかし、多くの日常生活品にマイクロプラスチックが含まれている現状では、個人の努力だけでプラスチックの海への流出を防ぐのには限界がある。

この問題解決に貢献する、KTHが開発したマイクロプラスチックを効率的に水と二酸化炭素に変えてくれる新フィルター。これからの展開に期待したい。

【参照サイト】EU testing way to use Sun to break up plastics in wastewater
【参照サイト】G7富山環境大臣会合 コミュニケ(仮訳)

(※写真:KTH Royal Institute of Technologyより)