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プレスクリプション・ゲーミング(Prescription Gaming)とは・意味

ゲームをする家族

プレスクリプション・ゲーミング(Prescription Gaming)とは?

プレスクリプション・ゲーミング(Prescription Gaming)とは、医師の処方のもと病気の治療としてゲームを用いること。プレスクリプション(prescription)とは英語で「処方・処方箋」を意味する。エビデンスに基づき病気の治療にゲームやアプリといったソフトウェアを活用する「デジタル治療(デジタル・セラピューティクス)」のひとつである。

とくにADHD(注意力欠陥/多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症)、うつ病、ブレインフォグなどの神経疾患や精神疾患といった、患者の認知・行動が大きく関わる疾患に効果を発揮するといわれている。

プレスクリプション・ゲーミングで使用するゲームは、一般的な処方薬と同じように医師の処方によってのみ使用可能である。また販売には、臨床試験等によるエビデンスの証明と承認プロセスが必要となる。

「デジタル治療」が当たり前になる未来

プレスクリプション・ゲーミングをはじめとする「デジタル治療」は近年世界的に注目を集めており、これまで医薬品による「化学的作用」や医療機器による「物理的作用」だけでは達成できなかった領域の治療が可能になると期待されている。

プレスクリプション・ゲーミング以外のデジタル治療としては、糖尿病患者向けの血糖値管理支援アプリや、ニコチン依存症治療アプリ、高血圧治療用アプリなどが開発されている。

プレスクリプション・ゲーミングのメリット

病気の治療でプレスクリプション・ゲーミングを行うメリットは大きく3つある。

    1. 患者のモチベーション維持
    1つは、治療にゲーム要素が加わることで患者のモチベーションが上がり、病状の改善に向けた行動の変化を促すことができる点だ。

    このような仕組みは「ヘルスケア・ゲーミフィケーション」と呼ばれる。ゲーム感覚で治療を進められることで、患者は苦痛を感じることなく治療を継続でき、治療効果もより高められる。

    2. 副作用がない
    2つめは、副作用の心配がほとんどないことだ。これはデジタル治療全般にいえるが、プレスクリプション・ゲーミングには薬や手術などのような身体的副作用がなく、患者への負担が少ない。
    3. 低コストで開発・アップデート可能
    3つめに、プレスクリプション・ゲーミングは通常の医薬品に比べると低コストで開発ができる。また、データ収集や分析による機能のアップデートも容易である。

プレスクリプション・ゲーミングの事例

世界初ADHD治療用プレスクリプション・ゲーミング

プレスクリプション・ゲーミングが実際の治療に使われる動きはすでに進んでおり、2020年6月にFDA(米食品医薬品局)が世界で初めて市販のゲームをADHDの治療薬として販売することを承認した。

承認されたのはアメリカのAkili Interactive(アキリ・インタラクティブ)が開発した『AKL-TO1(EndeavorRX)』というゲームだ。

『AKL-TO1』は神経科学に基づいて認知機能に働きかけ、ADHDの注意力欠陥症状を改善するよう設計されている。

患者はキャラクターを動かして障害物を避けながら、特定の標的をタッチしていく。このように複数の課題に同時に取り組むことで、認知機能に深く関わる脳の前頭前野を活性化させる仕組みだ。

また適応アルゴリズムにより、個々の患者ごとにゲームの難易度が最適化される仕組みになっており、医師や介護者が患者に合わせて治療の様子を継続的に管理することができる。

『AKL-TO1』はEUの基準に適合していることを示すCEマークも取得済みで、日本では塩野義製薬が提携し販売権を取得している。

腰痛治療用のVRプレスクリプション・ゲーミング

また2021年11月には、アメリカのApplied VRが開発したVRプログラム『EaseVRx』が慢性腰痛の治療薬としてFDAに承認された。

『EaseVRx』はVRヘッドセットとコントローラーを使った治療プログラムで、認知行動療法に基づいた2~16分のVRセッションを行うことで腰痛緩和を目指す。

プログラムには横隔膜呼吸トレーニング、マインドフルネスエクササイズ、リラックスなど56のVRセッションがあり、その中には実行機能ゲームが含まれる。臨床試験では、『EaseVRx』を使った治療により痛みや睡眠、ストレスなどの改善が証明された。

プレスクリプション・ゲーミング今後の課題

医療のデジタル化が進む中、今後プレスクリプション・ゲーミングの普及には、医薬品と同じような有効性や安全性を確かめるための仕組み確立が必要である。

併せて、薬事承認や保険適用のための規制や法整備も進めなければならない。

今後プレスクリプション・ゲーミングが一般化すれば、治療の選択肢がより広がり、より少ない負担で個々のニーズに最適化したヘルスケアが可能になる。それにより、多くの人が心身ともにより健康で過ごすための可能性がさらに広がることが期待される。

【関連記事】ADHDを治療するビデオゲームが登場。自閉症、うつ病の治療にも有効か
【参考サイト】Akili Interactive
【参考サイト】Wunderman Thompson Prescription gaming
【参考サイト】RelieVRx (EaseVRx)
【参考サイト】日本総研「医療のデジタル化における デジタルセラピューティクス(DTx)導入の推進 に関する提言」
【参考サイト】メディアスホールディングス「加速するデジタル治療用アプリの開発」
【参考サイト】事業構想「VR治療プログラムも登場 広がる「デジタル治療」の可能性」
【参考サイト】薬事日報 社説「夜明け近いデジタル治療産業」




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