デミセクシャル（デミセクシュアル）とは？

デミセクシャル（デミセクシュアル）とは、精神的なつながりを感じる相手に対してだけ、性的な欲求を抱くセクシャリティ（性的指向）のこと。基本的には、デミセクシャルの人は性的欲求や性的興味を持たず、強い愛情や深い友情など精神的なつながりがある相手にだけ、性的な欲求を抱く。

古くからの友人など数年かけて構築される関係から性的欲求が芽生える場合もあれば、短期間で濃い時間を共にした体験（例えば海外での旅行など）から性的欲求を抱く場合など、一口にデミセクシャルといってもその考え方や価値観は多様である。

デミセクシャルの特徴

先述の通り、デミセクシャルの中にも多様な特徴があることを念頭におきつつ、ここでは基本的な特徴を紹介する。

強い絆をもった相手に性的欲求を抱く

精神的に強い結びつきを感じられる相手にだけ、性的魅力を感じることがあるデミセクシャル。

基本的に性的欲求を抱かないセクシュアリティとして、ノンセクシュアルやアセクシュアルがある。ノンセクシュアルは他者に対して性的欲求を抱かないセクシャリティで、アセクシュアルは他者に対して性的欲求も恋愛感情も抱かないセクシュアリティだが、デミセクシャルは相手と強いつながりを感じることができれば性的欲求や恋愛感情を感じるという点で、異なる。

心理学者のアントニア・ホール氏によると、デミセクシャルの性行為は性的欲求というよりも、「相手とより親密になりたい欲求」から性行為におよぶ場合が多いという。

初対面の人や関係がうすい人には性的な欲求や恋愛感情を抱かない

精神的なつながりや絆を大切にするデミセクシャルの人は基本的に、初対面の人や関わりのうすい人には性的な欲求を抱かない。芸能人やセレブリティへの性的な話題にも違和感を覚えてしまうことがある。また、一目惚れもしないといわれている。

性別にとらわれないケースが多い

デミセクシャルの人が何より重要視するのは、精神的な心のつながりや信頼関係である。そのため、外見や職業はもとより、性別にとらわれず相手に惹かれるケースが多いのだ。

デミロマンティックとの違い

デミロマンティックとは、感情的な絆や信頼関係が築かれている関係の人に対してのみ、まれに恋愛感情を抱くセクシュアリティ。デミセクシャルは性的指向であるが、デミロマンティックは恋愛指向のことであるという点に違いがある。

デミセクシャルへの正しい理解

デミセクシャルの特徴に対して、「お互いを知った後に、体の関係を持ちたいと思うことはデミセクシャルでなくても、普通の感情ではないか？」という意見もある。
体の関係も持つか持たないかはさておき、デミセクシャルではない人は精神的なつながりを持たない人でも性的欲求を感じることはある。例えば、道端で出会った人、クラスメートや同僚、芸能人やセレブリティなどほとんど関わりのない人に対してである。

しかし、デミセクシャルの人はそういった人には性的欲求を抱くことができない。彼らにとって、体の関係を持つことは相手との精神的なつながり、絆、信頼関係が前提条件になる。

また、デミセクシャルはそもそも性的欲求を持たない人が多い。2014年のAVENの国勢調査では、デミセクシャルの3分の2はセックスに興味がないか、セックスに強い嫌悪感を示した。しかし、それが全員というわけではなく、性的欲求を持つ人もおり、自慰をする人もいる。

「会ったばかりの人と体の関係を持つのは誰だって嫌」や「そんなセクシュアリティはない」など、デミセクシャルの人の悩みや葛藤を無視した発言により、傷ついている人が存在する。

人の性的指向は多様である。そんな多様な性的指向をグルーピングする言葉は、今回紹介したデミセクシャルのように増えてきている。こういった言葉が浸透することによって心ない差別がなくなることを切に祈るとともに、定義にとらわれることなく一人一人の価値観に寄り添いたい。

【参照サイト】What is Demisexuality?（Demisexuality Resource Center）
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