長距離移動のトラック運転手は、市民の生活にとってもビジネスにとっても不可欠な存在だ。しかし、彼らの多くが疲れや睡眠不足を抱えたまま長時間労働に従事していることが問題となっている。

そうして引き起こされるのが「居眠り運転」だ。イギリスの非営利団体・Brakeによると、世界的には交通事故全体の10％から20％が疲労による居眠り運転に関連していると推定されており、そのほとんどは道路環境が単調な高速道路や二車線道路で起きているという（※）。では、居眠り運転による事故を減らすには、どのような解決策が望ましいのだろうか。

ブラジルでは、トラック運転手の健康と交通安全を促進するため、Volkswagen Caminhões e Ônibus（フォルクスワーゲン・カミンホス・エ・オンニバス）が、運転手の睡眠時間をご褒美に換えるアプリ「Trucker Napp（トラッカーナップ）」の導入を開始した。同社は、トラックやバスなどを取り扱うラテンアメリカ最大級の自動車メーカーで、ブラジルはその世界的な研究開発の中心となっている。

「寝ている間に稼ぐ」ことを意味するTrucker Nappのアプリは、ブラジルで特典プログラムなどを提供するLiveloとの提携により誕生した。現在この取り組みは試験的に実施されており、アプリ上のポイントシステムとスマートウォッチを接続して利用する仕組みになっている。

アプリでは、ブラジル全国の運送ルートに従事するトラック運転手の睡眠時間やその質、頻度を追跡する。利用者は睡眠時間に応じてLiveloから付与されたポイントを、現金や製品、体験、旅行などと変えることができる。現金を選択すると、銀行口座に直接振り込まれる。運転手はTrucker NappのウェブサイトまたはLiveloアプリで無料アカウントを作成し、得たポイントを希望の「ご褒美」に変換するだけだ。

PubMedに掲載された論文によると、ブラジルでは貨物輸送の6割強をトラックに依存しているという。一方で、睡眠不足のトラック運転手による交通事故は6割に達している。

トラック運転手がより質の高い睡眠を十分にとればとるほど、より健康的な習慣が身につくと同時に、居眠り運転の確率を下げることもできる。このアプリ導入は、トラック運転手にインセンティブを与えながら交通事故を防ぐことでブラジル経済にも寄与する、革新的な取り組みといえるだろう。

※ Driver Fatigue
【参照サイト】Volkswagen to make Brazil’s roads safer by paying truckers to sleep
【参照サイト】Volkswagen Caminhões e Ônibus Press Room
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Edited by Megumi