学校の制服に袖を通す。シャツの襟元を正し、ブレザーを羽織って、玄関の戸を開ける──ありふれた朝の光景だ。
制服を着ること、それは多くの人にとって、単に身だしなみを整え、自分の所属を示すための行為なのかもしれない。だが、自閉症のある子どもたちの中には、それを大きな苦痛に感じている子もいるのだ。
布地の硬さや首元の締めつけ、肌に触れるタグの感触。制服を着るときのこうした感覚は、一部の自閉症の子どもの授業への集中を削ぐほどのものとなっている。英国の衣類ケアブランドVanishによると、自閉症の生徒の96%が、制服が学校生活に影響を及ぼしていると答えたという(※1)。
この課題を可視化するためにつくられたのが、硬い生地、チクチクする縫い目、締めつける襟、肌に触れるラベルなど、自閉症のある生徒が制服から感じる感覚的な負担を意図的に再現した「The Unbearable Blazer(耐えがたいブレザー)」である。
これは、先述のVanishと、自閉症の子ども・若者を支援する慈善団体Ambitious about Autismが、衣服が自閉症のある人々に与える影響を伝えるキャンペーン「More Than Just Clothes」の一環で展開したもの。ブレザーは、自閉症の若者たちと共同でデザインされたという。
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このブレザーは、学校向けのワークショップで使われ、教師や生徒が、制服がもたらす感覚的な負担を体験できるようになっている。実際に着用した生徒からは、「授業に集中できず、ただじっとしていることに意識が向いてしまう」「窮屈で、自信が持てなくなる」といった声もあがった。
Ambitious about Autismは、制服が自閉症のある生徒の集中や交流、学校生活の楽しさを妨げることがあり、場合によっては登校そのものを難しくすると指摘。また、保護者の86%は、自閉症のある生徒の服装に対して、学校はより柔軟な対応を取るべきだと考えていることも伝えた(※2)。
生徒たちが一律で着用する制服には、ある種の平等性があり、学校全体での一体感を生む役割も担っている。一方で、「同じものを着ること」が、すべての子どもにとって同じ条件設定になっているとは限らない。ある子にとっては安心できるルールが、別の子にとっては学びへのアクセスを妨げる壁になることもある。
服は、ただ身体を覆うものではない。自分の安全ゾーンを守り、世界との距離感を調整するツールの一つだ。「みんなが必ず着るものだから着よう」から、「身に纏うものを学びや参加の助けにするにはどうすればいいだろう?」という問いへ移行するために、私たちは、まず「着る」という行為を見つめなおす必要があるのかもしれない。
※1 IN PARTNERSHIP WITH AMBITIOUS ABOUT AUTISM
※2 4 in 5 autistic children say their school uniform impacts their education.(Ambitious about Autism)
【参照サイト】More Than Just Clothes
【参照サイト】IN PARTNERSHIP WITH AMBITIOUS ABOUT AUTISM






