食のバリアフリーとは
世界には宗教や文化による思想、アレルギーや健康上の理由などで食の制限を持つ人々が存在するが、すべての人がそのバリアを感じず、食の楽しみを共有できる取り組みのこと。
食のバリアフリーが注目される背景
新型コロナウイルスが流行する以前は、訪日外国人の数が年々増加し、2019年には過去最高の3188万人に上った。また東京オリンピックの開催にあたって、世界の様々な国や地域から人々が訪れ、多様な文化背景を持った人と関わる機会が増えることが予測されていた。
そうした中、訪れた人が自身の食のスタイルを尊重しながら、誰もが楽しんで食事ができるように、多様化する食への配慮が求められるようになった。具体的には、食事や食材の内容のわかりやすい明記や、対応メニューのバリエーションを増やすことなどだ。
世界の主な食習慣や制限など
宗教的な背景によるもの
代表的なものはイスラム教のハラルやユダヤ教のコーシャなど。それ以外にもヒンドゥー教やキリスト教、仏教などでも制限されるメニューもある。
豚、アルコール、宗教上の適切な処理が施されていない肉、血液を連想させるものを食さない。ただし、宗派や個人によってその判断基準は異なる。
豚、宗教上の適切な処理が施されていない肉、血液を連想させるもの、乳製品と肉料理の組み合わせは特に避けられるが、その他にも甲殻類やウロコを持たないウナギ、アナゴなども食さない人が多い。その他、同じ料理の中に魚と肉の両方を使ってはいけないなど独自のルールが 存在する。
思想的な背景によるもの
ベジタリアンやヴィーガンがこれに当たる。環境保護や動物愛護、健康思考などの考えから、動物性のものを控えることが信条だが、その度合いは人によって様々だ。また一部宗教をベースとしたベジタリアンの人々もいるので、それぞれの対応が必要となる。
動物性の食品を摂取せず、穀物や豆類、野菜などを中心とした食事を摂る菜食主義の人達を指す。ベジタリアンの中でも、卵を食すオボ・ベジタリアン、乳製品は可能なラクト・ベジタリアン、魚を摂るペスカタリアンなど様々な特徴がある。
ベジタリアンの中でも最も制限が多く、魚、卵、乳製品はもちろん蜂蜜なども含め、動物性のものは一切口にしない。
健康上の理由によるもの
特定の食品に含まれる成分(アレルゲン)を摂取することで皮膚や消化器、呼吸器などに異常が起こる。人によってアレルギーの種類、発症する摂取量や症状が異なるため、注意が必要で、同じ厨房内での調理を避けなければいけない場合などもある。
消費者庁では、以下の食品の表示規程を定めている。
【必ず表示される7品目】※微量でも表示が義務づけられているもの
そば、落花生、卵、乳、小麦、えび、カニ
【表示が勧められている 21品目】
あわび、いか、イクラ、サケ、サバ、オレンジ、キウイフルーツ、桃、りんご、バナナ、くる み、牛肉、鶏肉、豚肉、大豆、まつたけ、やまいも、ゼラチン、アーモンド、カシューナッツ、ごま
元々はセリアック病や小麦アレルギーの人を対象にした食事法だが、最近ではヘルシー志向の人々がダイエット目的などで小麦製品を摂取しない場合などもある。
糖尿病や、肥満症、高齢者など様々な健康状態によって、塩分や糖分の制限や、調理法のアレンジが必要など様々な対応が求められる。
その他の食のバリア
1歳未満の乳児には蜂蜜を避けた方が良いとされている。また、離乳食は固形食へ移行する期間の乳幼児向けの食事。
環境や健康への配慮から、自然の力で生産された農畜産物やその加工品(有機物)を摂取し、農薬などの化学物質や化学肥料、添加物などが含まれるものを避ける食事。
日本での食のバリアフリーへの取り組み
日本における食のバリアフリーの促進や人材育成のため、2019年4月に「一般社団法人日本フードバリアフリー協会」が設立された。同協会では食のバリアフリーを実践するために、下記の5つの行動を定義している。
1. 食のバリアに対する正しい知識を得る
ベジタリアンやハラル、アレルギーなどに対する正しい知識、市場の最新情報などを学ぶ
2. 食事の内容をわかりやすく表示する
食事のメニューを、日本の食に知識がない人や食に制限のある人が理解できるような表記にする
3. 使用している食材を明記する
食事に含まれる食材を正しく表示する。また、可能であればカロリー、塩分などの量の表記も行う
4. 共通のマークで、誰にでもわかりやすく
子供や外国人、障害をもつ方でも理解できるように、共通のマークなどで表記をする
5. 食のバリアフリーを実践し、お客様に伝える
食のバリアフリーに取り組んでいる企業、店であることを表示し、利用促進や集客につなげる
また、原材料や調味料等に含まれる食材を表す32項目のピクトグラムを無料で配布するなど、飲食店や食品事業者など、食に従事する人が誰でも簡単に取り組める活動を推進している。
現在は内閣府や政府観光局なども、食のバリアフリーに取り組むことが、観光や地域活性化の重要なポイントになると考えており、積極的に食のバリアフリーを掲げる企業や地方自治体も増えている。
食のバリアフリーで目指す未来
今後、食の世界でもますますダイバーシティ(=多様性)が広まっていくだろう。世界には思想や文化、宗教等により様々な食品や料理が存在している。また、健康上の嗜好や医療的な制限を持ち、食事をする人たちもいる。
すべての人が同じ空間を共有し、同じように美味しく食事をすることができる機会を増やしていくためには、そうした一人ひとりの背景を理解し、尊重することが大切だ。違いではなく共通点を見出すことで、食を通じて得ることができる心の充実を、誰でも平等に体験できる世の中を実現を目指したい。
【参照サイト】一般社団法人日本フードバリアフリー協会|フードバリアフリーについて
【参照サイト】一般社団法人日本フードバリアフリー協会|世界中の様々な食の規律等
【参照サイト】一般社団法人日本フードバリアフリー協会|おいしい食をすべての人に
【参照サイト】ブランド総合研究所|食のバリアフリーとは?
【参照サイト】ブランド総合研究所|世界中の様々な食の規律等
【参照サイト】株式会社ブランド総合研究所のプレスリリース|食物アレルギー32項目のピクトグラムの無料提供を開始
【参照サイト】消費者庁 | アレルギー表示について
【参照サイト】日本政府観光局 | ハラールやヴィーガンなど。食の多様性をインバウンドの強みに(前編)
【参照サイト】NIKKEI STYLE|ビーガンでもジビエOK? 食のバリアフリーを考える
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