ファイナンシャルセラピスト（Financial Therapist）とは？

ファイナンシャルセラピスト（Financial Therapist）とは、ファイナンシャルプランニングの専門知識と心理療法の2つを活用して人々の金銭面に関する問題や不安を改善し、お金との付き合い方をサポートする専門家。

こうしたファイナンシャルプランニングと心理療法を組み合わせたカウンセリングは2008年に起きたリーマンショック以降に誕生した分野だといわれ、ファイナンシャルセラピー（Financial Therapy）と呼ばれる。

ファイナンシャルセラピーでは金銭管理やライフプランニングなどの金融に関するアドバイスに加えて、顧客が自分の財政状況についてどのように考え、感じ、行動するかといった感情・心理的側面についても、カウンセリングを通して指導する。

ファイナンシャルプランナーが実生活における財務状況を重視したアドバイスを行うのに対し、ファイナンシャルセラピストは金融に関連する感情や思考プロセスに焦点を当てて、ストレスを管理しながらお金と上手に向き合えるようサポートするのが特徴だ。

金銭面とメンタルヘルスの関連性

お金とメンタルヘルスに密接な関連性があることは、1990年代以降に行われてきた様々な研究で明らかになっている。

アメリカのファイナンシャルセラピー・アソシエーション（Financial Therapy Association）の共同設立者であるリック・ケーラーとその研究者グループによると、「人の財務上の決定の90％が感情的に行われている」という。

なかでもファイナンシャルセラピストが求められるのは、下記のような金銭面の問題を抱える場合だ。

• 脅迫的な支出
• 買いだめ
• ギャンブル
• 買い物依存症
• 過労
• 過度なリスク回避（必需品であってもお金を使うことを拒否するなど）
• パートナーとの金銭面での問題

このようなお金に関する習慣の多くが幼少期の経験や記憶を起因として作られるといい、財務状況の整理だけでは問題から抜け出せないことも多い。

そこでファイナンシャルセラピストは収支、貯蓄、退職、投資といった金融面の実質的な計画を立てながら、カウンセリングでその人の行動の根底にある感情や心理を紐解き処理していく。

ファイナンシャルセラピストの需要の高まり

ファイナンシャルセラピストは、近年コロナ禍の影響で経済不安が高まったこともあり、セラピーやカウンセリングが一般化しているアメリカを中心に注目されている。

アメリカの金融会社Capital Oneが2019年に行った調査では、アメリカ人の73％が金銭面を最も大きなストレス源として挙げたという。

また新型コロナのパンデミック発生後、2021年にピュー・リサーチセンター（Pew Reseach Center）が実施した調査によると、失業者の56％が「不安やうつなどの感情的・精神的な健康問題を経験した」と答えている。

こうした状況から、財務面だけでなく精神面からお金との向き合い方にアプローチし、サポートするファイナンシャルセラピストの需要が高まっていると言える。

まとめ

過去や現在の感情・心理が金銭面の問題を引き起こしていたり、反対に金銭面の問題により不安やうつなどメンタルヘルスに支障をきたしたりといった問題は、生活をする上で誰もが直面しうる。

日本でも、日本ファイナンシャルプランナー協会が2020年に3,000人を対象に行った調査で、回答者の半数以上が「現在または将来のお金に不安がある」と答えている。

だからこそ金融の専門知識を持ちつつ、心理状態と金銭面のつながりをよく理解した専門家が身近にいて相談できる意味は大きい。アメリカほどセラピーが普及していない日本だが、同じようにファイナンシャルセラピストを必要とする人は多くいるだろう。

専門家のサポートにより人々がお金のストレス管理を上手に行えるようになれば、よりポジティブにお金と付き合える社会をつくることにつながるかもしれない。

【参照サイト】Survey Reveals Tension in How People Think About Finances｜Capital One
【参照サイト】Unemployed Americans are feeling the emotional strain of job loss; most have considered changing occupations｜
【参照サイト】What Is Financial Therapy? Financial Therapist Overview
【参照サイト】Money problems? Here’s how financial therapy might help｜CNBC make it
【参照サイト】くらしとお金に関する意識調査2020｜日本FP協会

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