墓地で太陽光発電。まちの課題を同時に解決する、フランスの市民参画プロジェクト

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墓地は、近しい人の死を悼む場所だ。そのため、暗く冷たいイメージを持っている人もいるだろう。しかし、大きな墓地は緑があること、また広々としていることから、散歩道として使われたり、人々の憩いの場になったりすることもある。今回紹介するのは、そんな「墓地」にソーラーパネルを屋根として設置することを決めた、フランスの町の事例だ。

それが、Saint-Joachim(サン・ジョアキム)と呼ばれる、フランス西部の町だ。ロワール河口にあるブリエール湿地の真ん中に位置している。

広大な泥炭湿地の近くにあり、海抜0メートルの場所にあるサン・ジョアキムは、長らく冬の浸水に悩まされていた。町の東部にある墓地も、頻繁にぬかるんでしまうという。一方、夏の時期は乾燥が続き、芝生に水やりをする必要があるほどだ。

そんな地域の抱える問題を一気に解決しようと、市長は「墓地を覆って雨水を迂回させるソーラーパネルの設置」を提案した。ソーラーパネルが墓地を覆うことで、冬は水が溜まるのを防ぐことができる。そして、夏は屋根を通じて迂回した雨水を、隣接するスポーツクラブなどの施設の乾いた芝生や緑地の水やりに活用できるのだ。

Image via Brièr'Energie

Image via Brièr’Energie

市長が地元住民に意見を求める手紙を送ったところ、97%がこのアイデアに賛同したという。サン・ジョアヒム墓地プロジェクトでさらに興味深いのは、これがアイデアに賛同した住民たちを巻き込んだ「共同建設」としているところだ。

人口約4,000人のこの町で、すでに約420人の住民がこのプロジェクトへの参加を表明。彼らは、5ユーロ(約800円)の支払いで、最終的にはそこで生産されるエネルギーを分配してもらえることになる。電力が供給されるのは、2025年の夏からになる見通しだ。

地域の課題に向き合い、地域の人々の声を聞き、住民と共同で建設を進める、サン・ジョアキム墓地のプロジェクト。住民の一人はそれを「美しいアイデアだ」と評価する。フランスの町で起こったこの“小さな”動きは、今後世界中にインスピレーションを与えていくかもしれない。

【参照サイト】Brièr’Energie – Promotion des énergies renouvelables en Brière
【参照サイト】‘A beautiful idea’: This French Town Is Making its Cemetery a Source of Solar Energy
【参照サイト】‘A beautiful idea’: This French town is making its cemetery a source of solar energy
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