認知バイアスとは?
記憶や経験に基づく偏見や先入観などによる非合理的な心理現象で、人が意思決定や判断をする際に無意識に生じる偏った思考パターンや傾向のこと。ビジネスシーンや人間関係、買い物などの日常の行動から、投資判断や災害時の行動など大きな決断を下さなければならない時まで、あらゆる場面においての物の見方や考え方に影響を及ぼす。
私たちの脳は常に大量の情報を処理しているため、できるだけその情報処理を単純化したりショートカットしたりする傾向がある。そのため、これまでの経験値などから導き出されるものだけで、物事を正しいと判断してしまう脳の癖のようなものがあり、それが考え方の偏り、すなわちバイアスとなる。
この考えは1970年代に心理学者のAmos Tversky(エイモス・トベルスキー) と Daniel Kahneman(ダニエル・カーネマン)によって提唱された。
認知バイアスの種類と例
John Manoogian III(ジョン・マヌーギアン3世)と Buster Benson(バスター・ベンソン)が作成した「Cognitive Bias Codex(※)」では約180もの認知バイアスが存在すると言われる。状況によって下記の4つのタイプに分けられているが、ここではそのうちのいくつかを例に挙げる。
「Cognitive Bias Codex」の4タイプ
What should we remember?(何を記憶すべきか?)
人、出来事、情報に対する記憶に影響を与えるバイアス
Too much information(情報過多)
特定の出来事や人々に対する認識に影響を与えるバイアス
Not enough meaning(不十分な意味)
情報の不足に対するギャップを埋めるためのバイアス
Need to act fast(迅速な行動の必要)
意思決定に影響するバイアス
後知恵バイアス
物事の結果を知った後に、その結果は簡単に予想できたと考えてしまう傾向。期待した結果が得られると「やはりそうだと思った」と言い、逆に期待した結果が得られなかった場合は「だから無理だと言ったでしょ」といった発言をする。これは自身の予測に対してだけではなく、他者の予測に対しても生じることがある。
例:スポーツの試合で、試合が終わった後に、「私は最初からこのチームが勝つと思っていた」などと発言する。
行為者・観察者バイアス
自分(行為者)の行動の原因については、状況など外的要因の影響力も考慮する一方で、他者(観察者)の行動の原因については、その性格や能力のような内的要因を重視しやすい傾向。
例:自分のコレステロール値が高いのは遺伝のせいだが、他人のコレステロール値が高いのは食生活の乱れや運動不足のせいだと考えてしまう。
ハロー効果
人や物事を判断や評価する際に、見た目や肩書などわかりやすい特徴に引きずられ、他の特徴の評価までそれに左右されてしまう傾向。ハローとは絵画などで天使や聖人の頭上にある光輪(halo)のこと。良い点と悪い点のどちらにフォーカスするかによってポジティブ・ハロー効果、ネガティブ・ハロー効果と言われる。インフルエンサーや著名人などが薦める商品を購入してしまうこともこのハロー効果による傾向である。
例:学歴が高い人は仕事においても優秀だという判断をする、会社のウェブサイトが充実していると会社としても信頼性が高いと思う、不祥事を起こしたタレントが出ているCMの商品の購買をやめてしまうなど。
確証バイアス
予想についての判断を行う際に、その予想を確証できる都合の良い情報を優先し、適合しない情報を過小評価する傾向。日常的に起こりうるバイアスで、自分の考えを正当化し、「やはり自分の考えが正しかった」と確信しようとする脳の癖によるものである。
例:ある人に対して、「あの人は社交的だ」という事前情報があった場合に、実際に会った際に社交的であることを裏付ける行動ばかりに注目し、それ以外の面について知ろうとしない。
フレーミング効果
同じ情報でもその提示方法や焦点の当て方によって、受け取る側の印象が異なりその意思決定に影響を与える現象
例:術後の可能性などで「生存率90%」と表現するか「死亡率10%」とするか。栄養成分の含有量などで「ビタミンC1000mg含有」と表示するか「ビタミンC1g含有」とするかなど。
正常性バイアス
人はめったにないことや予想外の状況が起こった時に、「自分は大丈夫」「大したことにならないだろう」と都合の悪い情報を無視や過小評価し、無意識にストレスを回避しようとする心理現象
例:災害時に避難警報が鳴っても通常どおりに過ごす、健康診断で再検査に行かないなど(結果的に逃げ遅れたり、症状が悪化したりするなど悪い状況を回避できなくなる恐れがある)。
認知バイアスの対策方法
認知バイアスは意思決定を効率化するための脳の機能でもある。うまく利用すれば、マーケティングなどに活用することもできる。一方でビジネスや教育の場面で差別を生み出したり、意思決定を誤る可能性があったり、災害などトラブルが起こった時に正しい判断ができないといったネガティブな側面も多い。認知バイアスは人間の思考プロセスと密接な関係があり、すべてを無くすのは難しいが、バイアスに支配されず、適切な判断を行うための対策をいくつか紹介する。
1. 認知バイアスについて知る
まずは、認知バイアスの存在を知り、どのようなパターンがありそれがどのような結果をもたらすのか学ぶことが必要だ。また、自分自身の思考プロセスと照らし合わせ、自身にどのような傾向があるかを知っておくことも大切だ。
2. 正しい情報収集を行う
複数の異なる情報源から情報を集めたり、一次情報にアクセスしたりすることを心がける。また、できるだけ数値データや実証実験の結果など客観的な判断を行える情報を収集する。
3. 双方の意見に耳を傾ける
自分の思考に近い意見だけを聞くのではなく、賛成と反対、メリットとデメリットなどの複数の視点や角度からの意見を参考にし、より良い選択を検討する。
4. すぐに決断しない
何かを決定する時にすぐに答えを出すのではなく、時間を置くことや、自分の直感や前提に対して「なぜ」と疑いを持つことも、冷静な判断につながる。
また、認知バイアスによって精神疾患(うつ、不安障害など)を引き起こすこともあるが、その改善を行う認知バイアス修正(CBM:Cognitive Bias Modification)といった方法や、最近では認知バイアス診断のアプリなども登場している。
まとめ
現代ではインターネットが社会に普及しているが、このインターネットはアルゴリズムによってその利用者が「見たいであろう」情報を優先的に表示する仕組みを持っている。こうした見たい情報だけに囲まれる状況をフィルターバブルというが、これはまさに認知バイアスを助長させる環境だ。私たちは、そうした環境にいることを認識し、改めて自身の情報や考え方が偏っていないか、一方的になっていないかを振り返る習慣を持つことを心がけたい。
【参照サイト】verywellmind | Cognitive Bias: What It Is, Signs, How to Overcome It
【参照サイト】Positive Psychology | What Is Cognitive Bias? 7 Examples & Resources (Incl. Codex)
【参照サイト】錯思コレクション100 | 認知バイアスとは
【参照サイト】THEORIES
【参照サイト】LIBERARY LAB | 認知バイアスとは? あなたの判断を歪める心の仕組み
【関連記事】災害時の避難を妨げる「認知バイアス」。その特性と付き合い方は?
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