Browse By

削減貢献量(Avoided Emissions)とは・意味

環境とカーボンフットプリントのイメージ

削減貢献量(Avoided Emissions)とは?

削減貢献量(Avoided Emissions)とは、直訳すると「(本来なら環境負荷を出すはずだったのに)回避された排出量」。企業のバリューチェーンから排出され、社会に影響を与えうるGHG(温室効果ガス)の排出削減に「どれだけ貢献したか」を定量的に示す指標だ。

GHGの排出量の算定基準を定めた「GHGプロトコル」という世界的なガイドラインで使われており、ネットゼロ(※1)達成に必要な製品やサービスの開発・拡大を支援するとして、脱炭素化を加速させる新たな基準と言われている。

※1 GHG の排出量を正味(=ネット)ゼロにするという意味で、GHG排出量をゼロにするのではなく、排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにすることを意味する。

WBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発のための世界経済人会議)などが共同で発表した「Guidance on Avoided Emissions(削減貢献量に関するガイダンス)」では、削減貢献量について以下のように記されている。

削減貢献量は、ある解決策がGHGに与える影響を、その解決策を用いない場合のシナリオと比較した場合に、社会に与える「ポジティブな」影響として定義される。

したがって削減貢献量は、「発生する、または発生するであろうGHG排出量(上記でいう“ある解決策”)」と、「解決策がなければ発生したであろうGHG排出量 (上記でいう“その解決策を用いない場合のシナリオ”で発生するGHG 排出量)」の差を表す。

またWRI(World Resources Institute:世界資源研究所)は、削減貢献量を「製品のライフサイクルやバリューチェーンの外で、その製品を使用した結果として生じる排出量削減」としている。WRIは、排出量を回避する製品(商品やサービス)の例に、低温洗浄や省燃費タイヤ、エネルギー効率の高いボールベアリング(※2)や電話会議サービスなどをあげている。

※2 外輪と内輪の間に精密なボールを保持する構造を持つ軸受のこと。高精度な回転が要求される機器の軸に使用される。(引用:ボールベアリングの解説 | イプロスモノシリ | モノシリ | 製造業技術用語集

みずほ情報総研 環境エネルギー第2部 岡田晃幸・内田裕之・古島康「製品・サービスによるGHG削減貢献の必要性と最新動向」(『電機』 No.802、一般社団法人日本電機工業会、2019年)では、削減貢献量は「製品・サービスの普及が社会全体の温室効果ガス(GHG)排出量の削減に資する量を定量化する」ものとして紹介されている

削減貢献量を表す関連用語

GHGプロトコル(GHG排出量を算定・報告する際の国際的な基準)に記載されたサプライチェーン排出量を示す指標にスコープ1、2、3がある。これらはGHGの排出方法、排出主体によって分類された指標で、内容は以下の通りである。

  • スコープ1:直接排出量(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出。燃料の燃焼や工業プロセスなど)
  • スコープ2 : 間接排出量(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)
  • スコープ3 :その他の間接排出量( スコープ1、スコープ2以外の間接排出。従業員の通勤や出張、サプライチェーンの排出など)

スコープ3と削減貢献量の違い

スコープ3(その他の間接排出量)と削減貢献量はしばしば混同されるが、この2つの概念は異なるものである。

たとえばスコープ3の算定は、企業の視点に立つものであること。特に、「販売した製品の使用」に伴う排出は複数のスコープ3カテゴリにおける変化とみなされ、それらは販売した製品のライフサイクル排出量を反映している。またスコープ3の排出量は同一企業の過去年度の排出量と比較される。

一方で、削減貢献量の算定は社会的な文脈と解決策の利用の観点から構築され、以下の2つの状況が比較される。一つは企業が販売した解決策を利用した場合、もう一つは解決策がなければ発生したであろう最も可能性の高いシナリオ(他社の製品や全く別の解決策など)である。

スコープ3削減と削減貢献量の最大化を追求した際の結果も異なる。スコープ3削減の追求は、企業ポートフォリオの脱炭素化を促進する。たとえば、ガスボイラーを販売している企業がより効率的な製品を製造すれば、企業ポートフォリオが改善され、スコープ3の削減につながる。

削減貢献量の最大化への追求は、企業ポートフォリオにより多くの脱炭素化に向けた解決策を追加し、脱炭素化が最も必要な市場を優先することで、企業に社会の脱炭素化への貢献を加速させるインセンティブを与える。たとえば、暖房器具を販売する企業がガスボイラーの代わりにヒートポンプの販売に注力し、二酸化炭素排出量の高い暖房器具を備えた住宅に住む顧客に製品の販売を集中させれば、削減貢献量の最大化につながる。

また近年、新たな概念として「スコープ4」という用語が登場した。これは、温室効果ガスの削減貢献を指す。

スコープ4と削減貢献量の違い

WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は「削減貢献量に関するガイダンス」の13ページにて、スコープ4という表現は、同ガイダンスにおける削減貢献量が企業のGHGインベントリ排出量(※3)と同レベルとなることから誤解を招くとしている。

※3 気候変動・地球温暖化の文脈において、企業が1年間に排出・吸収する温室効果ガスの量を取りまとめたデータのこと

WBCSDのガイダンスによると、GHGインベントリ排出量は、企業の排出量の2時点間の変動に焦点を当てている。一方、削減貢献量は解決策に関連するシナリオ(実際に実施されるシナリオ)と参照シナリオに関連するシナリオの間の排出量の差に焦点が当てられる。これらの違いから、ガイダンス上では全て「削減貢献量(avoided emissions)」と表されている。

WRI(世界資源研究所)も解説記事「Do We Need a Standard to Calculate “Avoided Emissions”?(削減貢献量の算定基準は必要か?)」にて、回避されたGHG排出量を表す国際基準や一貫した用語は存在しないと記している。個々の企業や業界は、削減貢献量について独自のアプローチを開発することを余儀なくされており、このことが削減貢献量に関する用語や定義の一貫性の欠如につながっているとしている。

スコープ4という指標はGHG排出量を分類するGHGプロトコルには含まれていない。だが、脱炭素社会への移行を加速させる上でその重要性が改めて認識されており、2023年4月に札幌で開催された気候・エネルギー・環境大臣会合の付属文書には「『削減貢献量』を認識することも価値がある」と記されている

削減貢献量を評価する利点

スウェーデンRISE研究所のシニアアドバイザーであるデニス・パムリン氏はWBCSDのガイダンスの序文にて、企業が削減貢献量を評価する利点について以下のように述べている。

  • GHG排出量削減の解決策となる製品やサービスの販売に結びつけることができる
  • 「ネットポジティブ」な影響を測定できる指標を提供することで、目的主導型企業を目指す企業への支援になる
  • 「公正な移行を実現できる」という検証データを受け取ることで、GHG排出削減へのダイナミックなアプローチを支持する文化的な変化が起きる
  • 削減貢献量の最大化が社会にポジティブな影響を与えることを念頭に置いたうえでの優秀な人材を採用するまたとない機会となる
  • 社会へのポジティブな影響に関するデータや、これまで認められてこなかった無形資産を示すために利用できるデータを持つソリューション・プロバイダーとして、投資家やその他のステークホルダーと関わることができる
  • 将来の収益源を探る際、ビジネスモデルの革新とGHG排出量削減の解決策を加速的に展開させるための指針を提供できる

先で紹介したスコープ3の算定のように、企業が自社のGHG排出量をいかにして削減するかに焦点を当てる企業の視点に立った取り組みも、ネットゼロの達成、脱炭素化の加速に重要だ。

しかしデニス氏は、社会における削減貢献量が、企業から見たときに「自社のGHG排出量をいかに削減するか」という取り組みそのものを代替するのではなく、すでに始めている事業に「加えて」行われるものであることを強調する。

スコープ3やスコープ4、GHG排出量削減のあらゆる取り組みと削減貢献量の間には用語として違いはあるものの、いずれの取り組みも、社会の脱炭素化において重要なものである。

まとめ

ネットゼロへの移行は新たな局面を迎えている。企業がGHG排出量の削減目標に対してどのように説明責任を果たせるか、また世界的なネットゼロ目標を達成するための最も効率的な方法を定義するために、すべての機関がどのように協力できるかが焦点となる。

WBCSDのドミニク・ウォーフレイ上級副会長は、「削減貢献量に関するガイダンス」の利用について、「既存および今後の解決策で回避可能な排出量を理解することで、企業の脱炭素化の取り組みを加速するための重要な決定事項に必要な基盤が構築される。最も影響力のある解決策を導入し、協力し合いながらネットゼロ社会への道を構築するためにも、ぜひこのガイダンスを利用してほしい」と述べている

WBCSDのガイダンスでは、削減貢献量を課題に見せたり、GHG排出量を減らす努力を行わずに削減貢献量だけを示したり、グリーンウォッシュにつながりかねない誤った使い方を制限するために、「スコープ1,2,3に取り組んでいること」「技術が最新の気候科学に沿っていること」「技術が削減に直接寄与していること」といった条件を示している。

削減貢献量≠スコープ4であり、スコープ4はGHGプロトコルに含まれていないが、地球温暖化や気候変動の影響を受け、脱炭素化を目指す社会において重要な用語といえる。削減貢献量を取り巻く規定に今後も注目したい。

【参照サイト】New avoided emissions guidance provides companies with a credible way to assess the decarbonizing impact of their solutions.
【参照サイト】guidance on avoided emissions
【参照サイト】Do We Need a Standard to Calculate “Avoided Emissions”? | World Resources Institute
【参照サイト】『電機』 No.802
【参照サイト】排出量算定について – グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 環境省
【参照サイト】産業の脱炭素化アジェンダに関する結論
【参照サイト】温室効果ガスインベントリの概要
【参照サイト】温室効果ガス排出削減の新たな概念、Scope4とは? 2023年05月29日 | 大和総研 | 太田 珠美
【参照サイト】イノベーションを通じた企業の課題解決力を計る、「削減貢献量」とは?

FacebookTwitter