ゲイバーフッド(Gayborhood)とは・意味
ゲイバーフッド(Gayborhood)とは?
ゲイバーフッドとは、英語の「neighborhood(近所)」と「Gay(ゲイ)」を合わせた造語である。性的マイノリティの人々が多く居住し、LGBTQ+フレンドリーの店やレストラン、バーなどが多く集まる地区・エリアのこと。ゲイビレッジ、ゲイタウン、LGBTQ+ディストリクト、ゲイディストリクトなどと呼ばれることもある。
ゲイバーフッドではLGBTQ+を象徴するレインボーフラグやストリート・アートなどが多く見られたり、プライド・パレードなどのLGBTQコミュニティが中心となったイベントが開催されたりする。
またゲイバーフッドは古くからLGBTQ+の人々にとってより安全な居住活動の場所と認識され、出会い、交流や自己表現の場としても機能している。
ゲイバーフッド地区の基準
LGBTQ+の住環境支援を行うアメリカの非営利団体ゲイバーフッド・ファウンデーションによると、ゲイバーフッドの定義は以下のような基準を満たす地区だという。
- LGBTQ+の人々が平均より多く、地域内に目に見える形で住んでいる。
- LGBTQ+の権利や問題に対して住民が献身的に取り組んでいる。
- エリア内にレインボーフラッグ・ストリートアート・壁画などにより、LGBTQ+コミュニティへのサポートが誇り高く、目に見える形で示されている。
- 他の地域に比べて同性愛に対する嫌悪犯罪のリスクが大幅に低い。
- 劇場、音楽、ドラァグ、キャバレーなど、地区内に定期的なLGBTQ+パフォーマンスがある。
- プライド・パレードなどのLGBTQ+関連イベントが開催される。
世界のゲイバーフッド(地区)
以下が世界的にも有名なゲイバーフッドの一例である。
アメリカ
サンフランシスコ・カストロ地区、シカゴ・ボーイズタウン地区、ニューヨーク・マンハッタン地区、ボストン・サウスエンド地区
ヨーロッパ
イギリス:ロンドン・ソーホー地区、チェルシー地区、エディンバラ・ブロートンストリート地区
ドイツ:ベルリン・レンドルフプラッツ地区、シェーネベルク地区
フランス:パリ・マレ地区
フィラデルフィアの歴史と事例
ゲイバーフッドの中でも、クィア・フレンドリー都市として特に有名なのがアメリカ・フィラデルフィアのセンターシティ(ダウンタウン)地区だ。この地区では世界に先駆けて、ゲイバーフッドとしての歴史や特性を活かした「クィアツーリズム」が発展している。
フィラデルフィアは1960年代にアメリカ初のLGBTQ+の権利に関する抗議活動が行われた場所でもあり、LGBTQ+コミュニティの交流の場としての歴史も深い。
2007年にはフィラデルフィア市が11 番街〜ブロードストリート・パインストリート・ウォルナットストリートに囲まれた地区を正式にゲイバーフッドとして認め、地区全体に36のレインボーフラッグシンボルと道路標識を追加した。
地区内にはウィリアムウェイLGBTQコミュニティセンターのほか、国内で最も古いLGBTQに焦点を当てた書店などがある。また2014年には、フィラデルフィアで唯一のLGBT高齢者向け住宅もオープンしている。
ゲイバーフッドの近況とこれから
近年では世界的にLGBTQ+の権利が広く認められ始めたことから、ゲイバーフッドがよりさまざまなエリアに小さく分散する傾向があり、都市内に小規模のゲイバーフッドが点在することもある。
これはゲイバーフッドがより多くの住民にとって身近な存在になってきているともいえるが、必ずしも全てのエリアが本当の意味で多様性を認め合う場所となっているとは限らない。
ゲイバーフッドは「ピンクエコノミー」と呼ばれるLGBTQ+をターゲットとしたニッチ市場のビジネスが盛んに行われることから、街の再活性化などといった都市計画戦略のひとつとして注目されることもある。
このため中にはLGBTQ+サポートではなく、単なるマーケティング目的であえてレインボーフラッグを掲げている場合もあるという。
ゲイバーフッドにおいて、このような目的により成り立つ関係性ではなく、LGBTQ +コミュニティと周辺住民が相互に良好な協力関係を築いていくには、地域全体がより長く深い繋がりを求めて歩み寄り、理解し合う努力が大切だろう。
【参照サイト】Gayborhood – Encyclopedia of Greater Philadelphia
【参照サイト】Guide To Philadelphia’s Gayborhood
【参照サイト】Why Gayborhoods Matter: The Street Empirics of Urban Sexualities | SpringerLink
【参照サイト】The Gayborhood Foundation