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ヘドニスティックサステナビリティとは・意味

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ヘドニスティックサステナビリティとは

ヘドニスティックサステナビリティ(hedonistic sustainability/快楽主義的持続可能性)とは、建築、都市デザインにおける新たな考え方だ。デンマーク出身の建築家ビャルケ・インゲルス氏が著書『Yes is More』で提唱しはじめ、それを形にしたプロジェクトを次々と実現している。

簡単に言うとヘドニスティックサステナビリティは、人々の生活の楽しさと、環境へのやさしさなどの「持続可能性」を融合しよう、というアイデアだ。ヘドニスティック(快楽主義的)とサステナビリティ(持続可能性)という2つの言葉は、これまでは「うまく組み合わせられない」と、多くの人々から捉えられてきた。地球や社会の持続可能性を追求するには、楽しさではなく、何らかの「我慢」「あきらめ」が必要だと思われることが多いからだ。

インゲルス氏は、そうではなく、持続可能性を追求しながら、使う人々がワクワクするようなデザインを提案している。その内容は驚きに満ちており、世界から注目されている。

世界でのヘドニスティックサステナビリティの実践例

代表的な例の1つが、コペンハーゲンの街中にできた、今まで見たことがないようなデザインのゴミ処理場兼スキー場だ。なんと、このゴミ処理場の上が高さ90メートル、面積31,000平方メートルのスキー場となっていて、エレベーターで頂上に上がり、スキーができるのだ。環境教育の役割も担っており、ゲレンデの上まで登っていくエレベーターからはゴミ処理場内部の業務が見え、巨大な煙突からは1トンの二酸化炭素が排出されるごとに直径30メートルの煙の輪を吐き出す。

2010年にヴェネチア建築ビエンナーレで発表されたLOOPプロジェクトでは、スウェーデン南部とデンマークの間に高密度大都市圏を形成することを提案。この大都市圏の規模はサンフランシスコのベイエリアとほぼ同じで、この沿岸に持続可能な公共交通機関や持続可能なエネルギー施設、電気自動車のインフラのループを整備している。

ニューヨークでは、市民と共に洪水対策のためのインフラをデザイン。洪水に備えた高架道路を作りながらその下には収納壁のある展示スペースやバスケットボールのゴール、散歩道を設置し、日常的な楽しみの場にした。また、公園に丘を作り、普段は車道の騒音を遮断しながら、いざという時には高潮の波を食い止められるようにしている。

日本でのヘドニスティックサステナビリティの実践例

日本でも、2020年末に閉鎖されるトヨタ・東富士工場(静岡県裾野市)の跡地を利用し、2021年初頭から着工する「Woven City(ウーブン・シティ)」のプロジェクトが進められている。都市内の建物は主にカーボンニュートラルな木材で作られ、屋根には太陽光発電パネルを設置している。また、完全自動運転かつゼロエミッションの車両が走行する車道、スピードの遅いパーソナルモビリティや歩行者の通る道、歩行者専用の遊歩道の3つの道路が作られる予定となっており、人々の快適な生活と持続可能性を満たす構想となっている。

さらに現在、インゲルス氏は気候変動に適応でき、SDGs目標を全て実現するような、海に浮かぶ水上都市の計画も進めている。

ヘドニスティックサステナビリティの今後

気候変動による影響が深刻化する中、建築、都市デザインにおけるサステナビリティ(持続可能性)の重要性が今まで以上に高まっている。しかし、我慢ばかり強いられるワクワク感のない施策では、多くの人の共感を得られない。

そんな中、楽しさと持続可能性の両方を叶えるヘドニスティックサステナビリティを掲げる建築、都市デザインへの支持はますます高まっていくだろう。また、建築、都市デザインの分野だけでなく、他の分野においても、このような考え方が広まれば、より多くの人々がサステナビリティを身近にとらえ、楽しみながら社会、環境の持続可能性につながるモノづくり、買い物、まちづくりを目指すようになるだろう。ヘドニスティックサステナビリティはこれからの社会の在り方を考える上での大きなヒントになりそうだ。

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