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インディジネス・イノベーションとは・意味

先住民の子供達

インディジネス・イノベーションとは

インディジネス・イノベーション(Indigenous Innovation)とは、先住民族が持つ知恵や文化的背景をいかし、新たな価値を生み出すイノベーションのことを指す。

インディジネス(Indigenous)は日本語で「(地域や国の)原産の、土着の、先住の」と訳される。イノベーション(Innovation)は日本語で「革新、刷新、イノベーション」と訳され、人々が世界に望む変化を生み出すための新しいアイデアや解決策を構築することを指す。

従来のイノベーションと違い、インディジネス・イノベーションは先住民族が長年にわたって継承してきた知識や文化、先住民族が暮らす地域特有の自然環境や生態系との関わりに根ざしたものである。

インディジネス・イノベーションは、文化的多様性を尊重し、地域社会に合わせた持続可能な発展を実現するために重要な役割を果たす。

先人の知恵は、意外と身近にある

1971年に設立されたカナダ先住民組織Congress of Aboriginal Peoplesはウェブサイトにて、「先住民は伝統的な知識を使い、常に問題の解決策を作り出してきた」と紹介する。同ウェブサイトやカナダ政府のウェブサイトで、カナダ先住民族(ファースト・ネイション、First Nations)とイヌイットが発明または最初に発見したものには以下のものが挙げられている。

  • カヤック・カヌー
  • 壊血病の治療
  • ワセリン
  • 鎮痛剤
  • チューインガム
  • ラクロス
  • ゴーグル
  • スノーシューズ
  • ダーツ

たとえば、カナダ先住民族は壊血病(ビタミンCの欠乏によって引き起こされる疾患)を防ぐため、ヘムロック(毒ニンジン)やマツの樹皮を煮て、ビタミンCの強壮剤を作った。イヌイットは狩りの際に雪の眩しさを防ぐため、骨や角、象牙のゴーグルを開発した。

インディジネス・イノベーションでは、このようにしてさまざまな問題解決策を作り出してきた先住民族の伝統的な知識や文化を取り入れて問題解決を図る。そうすることで、従来の技術や知識では解決できなかった問題に対して、より持続可能で有効な解決策を実現できる。

先で紹介した壊血病の治療薬や鎮痛剤といった、先住民族が伝承してきた植物の利用方法を活用した医薬品の開発などもインディジネス・イノベーションの一例といえる。

インディジネス・イノベーションの具体例

ここからは、現在動いているインディジネス・イノベーションの具体例をご紹介しよう。

アメリカ・ハワイの土地管理システム「アフプアア(ahupua‘a)」

ハワイ大学が紹介するインディジネス・イノベーションの事例に「アフプアア(ahupua‘a)」が挙げられる。アフプアアとは「ハワイアンの人々が共同生活を営んでいた1つの地域や土地区画を指すハワイ語(出典:アロハプログラム 文化・自然保護活動|ハワイ州観光局公式ラーニングサイト)」で、古代ハワイで使われていた効率的で持続可能な土地管理システムである。

ハワイ島の地形から生まれたアフプアアは、山から海へと続くくさび形の土地で、流域の自然な境界線に沿った形をしている。それぞれのアフプアアには、魚や塩の池、作物を育てるための肥沃な農地、木材を供給するための斜面の森林など、コミュニティに必要な資源があり、沿岸部の村人たちは魚を他の食料と交換したり、カヌーや家を建てるための木材と交換したりした。また、地域特有の専門的な知識や資源はアフプアアの間で共有されていた。

アフプアアの土地と資源の管理は、漁業や収穫、植林を制限する「カプ(kapu)」制度によって守られており、バランスのとれた持続可能な生態系が形成されてきた。しかし現在のハワイは自給自足から遠ざかっているのが現状だ。島の人口を維持するために必要な食料や物資の約90%は船や飛行機で運ばれてくるもので数日のうちに絶えず補充しなければならない。現在のハワイの農業は小規模に行われており、ほとんどの農園はニッチなレストランを主な顧客としている。

ハワイにおけるより良い未来を創造するため、インディジネス・イノベーションの実践と先住民コミュニティとの議論で浮かび上がってきたその他の問題を解決するため、ハワイ大学は先住民イノベーションオフィス(the Office of Indigenous Innovation、OII)を設立した。OIIはテクノロジー教育の非営利団体Purple Mai’a Foundationとともに、アフプアアの回復力と豊かさを取り戻すため、ハワイ海洋生物学研究所とヘエイア自然河口域研究保護区を支援している。

カナダの鉱山プロジェクト「AMAK」

カナダ・ウォータールー大学のプロジェクト「Anishanaabe maamwaye aki kiigayewin (AMAK)」は、鉱業における先住民族と企業の関係を促進しながら、鉱山の復旧・復興を目指している。

AMAKは、カナダ・オンタリオ州ティミンズで過去1世紀にわたって行われてきた採掘に対応するため、大学の研究者チームと先住民族、大手鉱山会社の3者が協力関係を築いたプロジェクトである。「Anishanaabe maamwaye aki kiigayewin 」とは、先住民族により話されている言語・オジブウェー語で「すべての人々が一緒になって地球の回復を目指す」という意味を表す。

環境・社会・ガバナンス(ESG)コンテンツを配信する3BL Mediaの記事には、鉱山の採掘によって作られた地形にヘラジカが何度も入り込んでしまったことがこのプロジェクトのきっかけとなったと書かれている。

2010年、カナダの貴金属生産会社・ゴールドコープ社のポーキュパイン金鉱山(PGM)のドーム坑に若いヘラジカが迷い込んだ。従業員はヘラジカを安全な場所に誘導したが、数日後、ヘラジカは再びドーム坑に迷い込んでしまった。PGMは先住民族との条約締結地にあり、またヘラジカは先住民族にとって忍耐と生存のシンボルであることから、この出来事をサインと捉えたゴールドコープ社は、オンタリオ州北部のマタチェワン先住民の一員で、森林管理計画に関する調査コーディネーターでもあるマーティン・ミレンに相談し、協力を仰いだ。

AMAKでは、先住民族と企業のコミュニケーションと関係構築の強化、知識移転の促進、共同環境モニタリングの実施という3つの戦略によって、土地の再生利用を促進することに重点を置いている。

3BL Mediaの記事で、PGMの先住民コミュニティ担当マネージャーのメアリー・ボイデンは「ゴールドコープ社は先住民族に、資源開発やビジネスイニシアチブの意思決定の指針となるような商業的、技術的な知識を教え、先住民族の教えはゴールドコープ社の環境保護活動、地域社会の解決策、価値観のマッピングに役立っている。このことは企業と先住民族の双方に持続可能な利益とポジティブな影響をもたらしている」と答えている。

その他の事例 国連大学

国連大学のウェブサイトでは「先住民の知識+科学的手法=イノベーション」と題し、インディジネス・イノベーションの事例を紹介している。たとえばイヌイットがGPSシステムを使ってハンターの情報を取得し、それを科学的な測定値と組み合わせてコミュニティで使用する地図を作成するというものや、気候変動が生物多様性に与える影響を予測する際、パプアニューギニアのヘワ族の鳥類に関する知識を活用するといったものである。

「イノベーションとは、常に新しいものを生み出すことではない」

2015年に行われたインディジネス・イノベーション・サミットで、カナダ・マニトバ州に住む先住民族で初めて判事を務めたマレー・シンクレア氏はこう述べた

「イノベーションとは、常に新しいものを生み出すことではない。イノベーションは時に、これまでのやり方を振り返り、それをこの新しい状況に持ち込むことでもある」

本記事で紹介した先住民族の実用的な発明はすべて、科学、技術、イノベーションに関する高度な知識を示す。これら先住民族の知恵は古代からの経験によって培われたものだ。そして今もなお、先住民族は地球とのバランスをとりながら持続可能な生活を送るための重要な知識を持ち続けている。

先住民族の知恵、先祖代々の知識は人間によるイノベーション、スキル、レジリエンスを証明する。飢饉や洪水、火災や病気、植民地化や社会的・経済的な排除、文化的虐殺や気候変動など、さまざまな危機に直面しながらも私たちが何千年にもわたって生存し繁栄してきたのは先住民族の知恵、先祖代々の知識があってからこそだ。

インディジネス・イノベーションは、地球上で差し迫った問題のいくつかを解決できると期待されている。

【参照元】Indigenous Innovation – Widjiwagan
【参照元】Did you know?
【参照元】Indigenous Innovation Initiative
【参照元】Indigenous innovation | Waterloo Institute for Social Innovation and Resilience
【参照元】Indigenous Innovation – Noelo
【参照元】アロハプログラム 文化・自然保護活動|ハワイ州観光局公式ラーニングサイト
【参照元】Ahupuaʻa System – Independent & Sovereign Nation State of Hawaii
【参照元】Anishanaabe Maamwaye Aki Kiigayewin (AMAK) | Waterloo Institute for Social Innovation and Resilience
【参照元】Heeding the Call of the Moose
【参照元】12th Annual Social Impact Summit – Martin Millen
【参照元】Indigenous Innovation at Vanguard of Climate Change – Our World.
【参照元】Indigenous Innovation Summit Report | McConnell Foundation
【参照元】The Wisdom of Indigenous Innovation: “The Knowledge is in our DNA”

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