ナレッジ・クォーター(Knowledge Quarter)とは・意味
ナレッジ・クォーター(Knowledge Quarter)とは?
ナレッジ・クォーター(Knowledge Quarter)とは、イギリス・ロンドンのキングスクロス駅周辺にある多様な知識リソースが集まる地区のこと。大英図書館とロンドン芸術大学によって、ロンドンのイノベーションを活性化するために設立された。
具体的には、キングスクロス、セントパンクラス、ユーストン駅周辺にまたがるエリアに、大小100以上の文化、研究、科学、ビジネス、学術機関などが集まり、世界最古の書籍資料から、最新のファッション、クリエイティブデザイン、データサイエンス、最先端の医療研究、ライフサイエンスなど、さまざまな知識リソースに一般の人がアクセスできるようになっている。
また、それらを必要とする人々が日々交流し、互いにアイデアを共有しコラボレーションすることで、新しいイノベーションを生み出す世界最大の知識拠点となっている。
ナレッジ・クォーターが目指すもの
ナレッジ・クォーターは世界をリードするイノベーション地区となることを目指し、具体的に以下のような目的で運営されている。
1.アドボカシー
さまざまな機関が関わることにより政治・経済・社会的に影響を与える存在として、地域の知名度を国内外で高めていく。
2.知識の交換
メンバー間での情報交換、コラボレーション、繋がりの機会を作り、新たなイノベーションを促す。
3.交流の機会
互いに協力し合いながら、知識、リソース、コレクションへの一般アクセスを増やし、地元市民との交流の機会を作り出す。
4.場所づくり
地域環境を改善する仕事をサポートし、人々が住みやすく、働きやすく、そして訪れたくなる最適な場所を作る。
ナレッジ・クォーターを構成するパートナー組織
ナレッジ・クォーターのメンバーになるには、キングスクロス駅の半径1マイル(約1.6km)以内に位置し、企業・団体の従業員数に基づき定められた年会費を払う必要がある。また、常に知識の進歩や普及に積極的に取り組んでいることが求められる。
ナレッジ・クォーターを代表するパートナー組織には、創設メンバーである英国図書館とロンドン芸術大学に加え、以下のような企業・団体がある。
大英博物館、アガ・カーン大学、カムデン・カウンシル、アイリントン・カウンシル、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London)、ロンドン大学、ロイヤル獣医大学、ユダヤ博物館ロンドン、ウェルカム・トラスト、リージェンツ・ハイスクール、Google、ユニバーサル・ミュージックなど
上記のほか、スタートアップ企業などの小規模な組織を含む100以上の機関が参加している。パートナーの中には、最新のサステナブル製品・ビジネスを扱う企業もある。
ナレッジクォーターの成果
国内外から多種多様な知識リソースが集まるナレッジ・クォーターは、現在、米国ボストンにあるイノベーション地区「ケンドール・スクエア」とも競合する国際的な知識リソース特区となっている。特に、ライフサイエンス、データサイエンス(おもに機械学習、人工知能の領域)、デジタルコレクションの領域では世界を代表する存在だ。
また知識リソースの発展だけでなく、雇用創出や経済成長、環境整備など、地域社会の発展にも貢献している。周辺地域のカムデンとイスリントンでは、2003年〜2013年の10年間に約42,000人の雇用が科学技術分野で創出され、経済成長に大きく貢献した。
今後もより多様な領域の組織と協力し、共同研究や知識共有の範囲・数を増やしていくとしている。
ナレッジ・クォーターのこれから
一方で、ナレッジ・クォーターの成長が周辺地域のインフラに影響を与えていることが一つの課題となっている。具体的には、地価の高騰、ローカル輸送システムの混雑・遅延、電力不足、ネットワーク回線の過負荷などだ。
現在、周辺地域では住宅が不足しており、価格も高騰している。2016年の周辺地域カムデンの住宅価格中央値は、地区内労働者の給与中央値の19.6倍にのぼった。また、商業用不動産の価格も急騰しており、小規模なスタートアップ企業の参加を阻んでいるほか、地区内で利用可能なスペースが不足していることも問題となっている。
こうした問題に対処するため、ナレッジ・クォーターはさまざまな機関と協力し「KQ2050」という長期の空間計画を作成した。2050年までの長期的視点でこの計画を進めることで、持続的な地区の発展を目指していくとしている。
今後はイノベーションや経済成長だけでなく、周辺地域や国全体を持続可能なかたちで発展させていくための取り組みがより重要になるだろう。
【参照サイト】KNOWLEDGE QUARTER
【参照サイト】KNOWLEDGE QUARTER SCIENCE AND INNOVATION AUDIT SUMMARY REPORT
【参照サイト】Knowledge Quarter|Camden council
【参照サイト】London’s ‘Knowledge Quarter’ is one of the world’s best locations for science and innovation|Royal Veterinary College
【関連記事】スタートアップの力で繊維業界をサステナブルに。香港生まれ、ロンドン育ちのイノベーションハブとは?