リビングラボとは・意味
リビングラボとは?
「Living(生活空間)」と「Lab(実験場所)」を組み合わせた言葉であり、その名の通り、研究開発の場を人々の生活空間の近くに置き、生活者視点に立った新しいサービスや商品を生み出す場所を指す。また、場所だけでなく、サービスや商品を生み出す一連の活動を指すことも多い。
リビングラボという言葉は、1990年代前半にアメリカで生まれたと言われているが、この活動はアメリカよりもヨーロッパにおいて定着・発展してきた。2000年頃から北欧を中心に活動が展開され、2006年以降はEU全体にリビングラボが広まっていったという。2016年1月時点で、ヨーロッパを中心に世界50か国・388のリビングラボが活動。近年では日本においても、行政、研究機関、企業が運営主体となったリビングラボが誕生している。
日本国内の事例
リビングラボは、組織外からアイデアや技術を取り入れながら、新たな価値を創出する「オープンイノベーション」を実践する場として発展してきた。そのため、リビングラボにおいては、異なる強みを持つ企業、行政、住民などが共創することが大切だ。以下では、多様な参加者で構成されるリビングラボの事例を紹介する。
2020年8月に始まった事業で、介護ロボットの開発から普及までの流れを加速化することを目的としている。事業の一環として全国8か所にリビングラボが設置されており、企業が開発するロボットの安全性や使用効果を評価・検証することができる。リビングラボとして選ばれているのは、東北大学やSOMPOホールディングスの施設など様々だ。
横浜市内のエリアの名前をつけたリビングラボが、15か所以上で活動している。南区井土ヶ谷のリフォーム会社と住宅供給公社のコラボレーションにより生まれた「井土ヶ谷リビングラボ」、企画会社やフェリス女学院大学が運営に関わる泉区の「緑園リビングラボ」などが、例として挙げられる。空き家問題や女性の活躍など、それぞれのエリアの課題に沿った活動を展開しているのが特徴だ。
2017年1月に、今泉台町内会や鎌倉市などが連携してスタートした「鎌倉リビングラボ」。様々な企業の新商品や試作品を、今泉台町内会が中心となって使用し、そこで出た意見をサービスや商品の開発に活かしている。活動の企画運営には、東京大学高齢社会総合研究機構も携わっている。
地域固有の課題から、新しいビジネスを生み出す
リビングラボは、地域住民が感じている社会課題を、企業や行政と協力しながら解決するという、これまでの日本ではあまり見られなかった取り組みだ。社会課題を解決する過程で新しいビジネスが生まれ、住民にとってより住みやすい街になるという好循環が期待できる一方で、新しい取り組みには障壁がつきものだ。たとえば、以下のような壁にぶつかることが考えられる。
- 誰もが納得する社会課題を絞り込めない、課題がいくつもあって集約できない
- 新しいチャレンジをするための予算がない
- リビングラボを運営するための人材確保が難しい
- リビングラボのメンバーが固定化してきて、新しい人が入りにくい
- 事業化の壁、事業化できても継続することが難しい
経済産業省が2020年に発行した「リビングラボ導入ガイドブック」では、全国の5つの事例を紹介しながら、リビングラボを実施するにあたっての障壁と解決のアドバイスを載せているので、参考にしてみるといいだろう。
リビングラボを運営するには、様々なノウハウやコツが必要だ。そのため、いきなり大きなプロジェクトにしようとせず、小さなアイデアを実践・検証しながら、徐々にスケールアップさせることがポイントとなる。
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【参照サイト】 リビングラボ | 一般社団法人YOKOHAMAリビングラボサポートオフィス (livinglabsupportoffice.yokohama)
【参照サイト】 鎌倉市/鎌倉リビングラボの取組について (city.kamakura.kanagawa.jp)000256.pdf (meti.go.jp)
【参照サイト】 【シニア】第17回 世界と日本で広がるリビング・ラボの活動|日本総研 (jri.co.jp)