メタコマースとは？

メタコマース（メタバースコマース）は、仮想空間に作られたバーチャルショップを指す。人数参加型のデジタル仮想空間を指す「メタバース」と、オンライン上の商品取引を意味する「Eコマース（E-Commerce）」を合わせた言葉である。

新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の流行により、オンラインショッピングの市場はますます加速していった（※1）。とはいえ、店舗に足を運ぶ従来のショッピングの形が懐かしくなる瞬間もある。そんなとき、メタバースに活用されている仮想現実（VR：Virtual Reality)や拡張現実（AR：Augmented Reality）の技術が役に立つのだ。

メタコマースとEコマースの違いは、買い物の体験にある。Eコマースはオンライン上で買い物をすることだが、メタコマースの場合、仮想空間上の街やショッピングモール、百貨店などの中にショップが存在し、顧客は仮想空間上で自分（ユーザー）の分身となるキャラクター「アバター」を使って店舗に入り、買い物を楽しむ。実店舗でTシャツやサングラスを手に取って触るのと同じような感覚で、商品を見たり、試着したり、店員のアバターとやりとりしたりすることができる。

メタコマースに力を入れるブランドは、没入感のある体験を提供するメタバース上で、顧客にリアルな体験を提供しているといえるだろう。

メタコマースの事例

デジタルスニーカーやバーチャルウェアを販売しているブランド「RTFKT Studio」は、2021年初頭に10分間で620個のバーチャルスニーカーを販売している。バーチャルスニーカーは現実の世界には存在しない。だが、RTFKT StudioはユーザーがRTFKT Studioの製品を生産するのを許可しているため、バーチャルスニーカーを物理的なものにすることは可能だ。

1856年創業の伝統的な英国ブランド「バーバリー」は、2021年の初めにバーバリー銀座店をベースにしたバーチャルポップアップをスタートさせた。実際の商品をインターネット上で閲覧、試着、購入することができる。このバーチャルショップでは、購入すると実物の商品を受け取ることができる。

セレクトショップ「BEAMS（ビームス）」も2020年12月19日〜2021年1月10日まで開催されたイベント「バーチャルマーケット5」でバーチャル店舗をオープン。この店舗では、現実に存在する店員がアバターをまとい、リアルタイムに接客をする「バーチャル接客」が行われた。2021年8月に開催された「バーチャルマーケット6」では、スタッフがヘッドセットとコントローラーを使ってアバターを操作し、声でコミュニケーションを取りながら接客を行った。自然なコミュニケーションが実際の商品販売につながる。

日本のコンビニエンスストアチェーン「ローソン」は、2021年12月4日〜19日まで開催されたVRイベント「バーチャルマーケット2021」にバーチャル店舗をオープン。リアル店舗で販売する商品のバーチャル展示や、3Dモデルのケーキ素材にトッピングを選んでオリジナルクリスマスケーキを作成したり、その場で撮影した写真でオリジナルパッケージの商品『オリジナルからあげクン』をつくったりする体験を提供。また人気Vtuberが1日店長となり、顧客のアバターと交流するイベントも行われた。

まとめ

メタコマースは、リアル店舗、Eコマースに次ぐ第3のショッピングの場になりつつある。

メタコマースの利点は、インターネット上で没入感のある体験ができることだけではない。いくつかの道徳的なジレンマがなくなることへも期待が高まっている。たとえばメタバースで着る毛皮は、現実の動物を傷つけることはない。デジタルクローゼット上に保管される余分な服が廃棄物の山をつくることもない。

動物福祉と環境保全を意識した「ファー・フリー」や「クルエルティフリー」の思想やサステナブルファッションの観点からも、メタコマースの存在は期待されている。

※1　総務省 – 令和3年版情報通信白書　オンライン消費の増加
【参照サイト】4 Metaverse Commerce Predictions To Watch Out｜ART Labs
【参照サイト】The Dawn of Meta-commerce – Digital Media Team
【参照サイト】バーバリー銀座バーチャル ポップアップ｜Burberry®️ 公式サイト
【参考文献】三谷弘美編『日経トレンディ2022年1月号』（日経BP、2021年12月4日）

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