ミスジェンダリングとは？

本人が自認するジェンダー（ジェンダーアイデンティティ）と異なる性として扱うこと。具体的には下記のような言動が当てはまる。

• トランス男性を女性として、トランス女性を男性として扱う
• ノンバイナリーの人に対し、he/him（彼）、she/her（彼女）という代名詞を使用する
• ジェンダーノンコンフォーミングの人々を「it」と呼ぶ
• 使用する名前を変更したトランスジェンダーやノンバイナリーの人々に対し、変更前（戸籍上などの）名前で呼ぶ（デッドネーミング）
• 相手の性別に対し間違っていると言う
• 侮辱として意図的に相手を間違った代名詞で呼ぶ

ミスジェンダリングは、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々に対するものであることが多いが、どのジェンダーに対しても起こりうることである。

ミスジェンダリングはなぜ問題なのか？

日常のあらゆる場面で、当人が認識しているジェンダーと違う性別として扱ったり、望まない代名詞で呼んだりすることは、その人が「自分は無価値な存在で周囲から無視されている」と感じさせる原因となる。こうした状況が続くことで人格や尊厳を傷つけられ、精神的な健康へ悪影響が出たり、社会で孤立したりしてしまいやすいのだ。

また、意図的に間違った性別で扱うことでその人を貶めることは、トランスフォビア（トランスジェンダーに対する否定的な行為）や性差別など抑圧の手段にもなる恐れがある。

ミスジェンダリングを無くすために

それではミスジェンダリングを招かないために、私たちはどのようなことを心掛けたら良いのだろうか？

勝手に判断しない

元々、性を男女の2つに振り分けてきたというこれまでの社会的習慣から、戸籍や外見で相手の性を判断しがちだが、心の性と身体の性について正しく理解し、勝手な判断を避けるようにする。

呼び方や代名詞を適切に使う

機会があれば、相手に自分の呼び方や代名詞を伝え、また相手が希望する呼び方や代名詞を聞く。最近はメールの署名やSNSにジェンダープロナウン（代名詞）を記載する人も増えている。

また適切な代名詞が明確ではない場合は、名前やthey/themなどニュートラルなものを用いる。

性別を区別しない言葉を選ぶ

間違えた時は素早く訂正し、弁明したり追求したりしないようにする

意図せず相手のジェンダーを間違えた時は、まず謝り、素早く訂正する。大袈裟に弁明したり、深く追求したりすることで周囲の注目を集めたり、余計に相手を傷つける可能性があるので、話題を変えるなど自然に会話を続ける。

正しい知識を学び、周囲と共有する

自身がシスジェンダーでミスジェンダリングを受けることが少ない場合でも、それぞれのジェンダーやアイデンティティのことを理解することを心掛ける。間違った認識を見たり聞いたりした時はそれを訂正するなど、より多くの人が関心を持ち、正しい知識を共有することが大切である。

まとめ

2023年に「LGBT理解増進法」が施行され、性的マイノリティに対する理解が世の中でも
広まっているように思える。一方で、この法律の中に「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」という内容が盛り込まれたことに対し、「トランスジェンダーやノンバイナリーの人がいることは安心できる社会ではないというような表現で、むしろ差別する側に配慮している」と言った反発の声も上がっている。すべての人がお互いに敬意を持ち、平等な社会というのはどういったものか、ということを改めて考え、既成概念に捉われず、前に進むことが求められている。

【参照サイト】Harvard Health Publishing | Misgendering: What it is and why it matters
【参照サイト】MEDICAL NEWS TODAY | Understanding misgendering
【参照サイト】朝日新聞GLOBE＋ | 自称すれば女性？トランスジェンダーへの誤解　マジョリティーは想像で語らないで
【参照サイト】朝日新聞SDGs ACTION! |「LGBT理解増進法」施行　当事者・支援団体からは内容に批判も　企業への影響は？
【参照サイト】Vogue Japan | シスジェンダーが前提? 日常会話にトイレ問題etc. トランスジェンダー女性が経験した移行期の苦悩。【アンコンシャスバイアスを探せ！】

用語の一覧