シードライブラリー(種の図書館)とは・意味
シードライブラリー(種の図書館)とは?
図書館で本を借りるように花や野菜、ハーブの種を借り、育ててできた種をとって返す仕組み(目安は半年から1年後)。米国やヨーロッパの公共の図書館を中心に広まっている。「種とりに成功しなかったら、返さなくても良い」というルールにしている場所が多い。
なぜ「種の図書館」が必要なのか
「種の図書館」が始まった背景にあるのは、種の多様性の喪失への危機感だ。今、世界規模で活動する種苗会社が種の特許を取得し、種子の独占を進めている。また、それらの種子は効率的に栽培・収穫・流通することを目的に作られていて、次世代に同じ形質のものを受け継ぐことができない。その結果、特に在来種や固有種における、種の多様性が失われているのだ。
こうした状況のなか「このままだと、みんなが使える公共の種がなくってしまう」という危機感のもと「種を採って、蒔いて、分かち合うという種と人とコミュニティの循環を取り戻したい」という想いを持った人々の呼びかけで、種の図書館が始まった。種の貸し借りはカフェやイベントで行われることもあるが「種を、誰にでも手に入れやすい公共性のあるものにしたい」という考えから、公共の図書館で借りられるようにしている場所が多い。
種の図書館のメリット
種の図書館には、以下のようなメリットがある。
- 地域の緑を豊かにする
- 食料の自給自足の手助けになる
- 「シードバンク(種の銀行)」として多様な種を保管し、絶滅の危機から救える(※特に伝統野菜などの地域固有の種(在来種の種)の場合、絶滅の危機から救うことにつながる)
- 地域のつながりを豊かにする(種を通じた会話や交流が生まれることが多いため)
種の図書館の事例(海外)
多くの人がアクセスできる場所に、種の図書館が設置されている。以下はその一例だ。
カリフォルニア州バークレー市(米国)
市内のNPOエコロジーセンターにBASIL(Bay Area Seed Interchange Library)という名の種の図書館を設置。米国で最初に作られたとされている。
カリフォルニア州リッチモンド(米国)
リッチモンド公共図書館(Richmond Public Library)内に、リッチモンド・グロウ種子貸出図書館が設置されている。パーマカルチャー活動家のレベッカ・ニューバーン氏がコーディネーターを務めており、これが米国初の、公共の図書館内にできた種の図書館だと言われている。
ロンドン(英国)
スピタルフィールズ・シティファームで、ウェブサイト連動型で誰でもアクセスできる公共の種の図書館The Connected Seeds Libraryを展開している。
種の図書館の事例(日本)
日本でも、種の図書館が少しずつ増えている。
名古屋(愛知県)
愛知教育大学附属図書館(愛知県)では、2014年から「図書館『種』プロジェクト」として、図書館内で環境に関する特別コーナーを設置している。
南山城村(京都府)
2021年に村内の移住交流スペース「やまんなか」に種の図書館を設置。地域の交流を深める役割も果たしている。
那覇(沖縄県)
2019年より那覇にあるブックカフェ「ゆかるひ」の入り口で、種の図書館をおこなっている。主に県内の無農薬栽培の農家から種を預かり、貸し出している。
種の図書館の今後
近年、貧困で苦しむ人たちが、食料を安定して得るために、種を借りる事例も増えており、種の図書館は貧困問題の解決策としても注目されている。また、生物多様性と食料安全保障の観点からも、公共の資産として種を守り、受け継ぐことは重要だ。
今後、より多くの市民の働きかけで、世界中に種の図書館が増えていくことが期待されている。