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サステナビリティフィクションとは・意味

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サステナビリティフィクションとは?

サステナビリティフィクションとは、持続可能性に関するテーマを空想に基づき描いたフィクションのこと。「空想科学」を意味するSF(Science Fiction)にかけて創られた用語である。

健康食品やバイオ燃料を手掛けるバイオベンチャー企業の株式会社ユーグレナが、文学における新しいジャンルのひとつとして2022年に広めたワードだ。

サステナビリティフィクションは空想上のストーリーではあるが、ファンタジーとは異なり、あくまで現実の科学技術に基づき未来を想像する。類似語として、気候変動や環境破壊に関するテーマを物語化した「エコフィクション」という文学ジャンルもあり、近年北米地域を中心に注目されてつつある。

サステナビリティフィクション小説の例

株式会社ユーグレナは2022年に早川書房の協力のもと作家4名とコラボレーションし、サステナビリティフィクションの小説を発表している。

100年後の未来の物語を通して、自社が掲げるフィロソフィー「サステナビリティ・ファースト」に基づく経営計画・ビジョンを体感してもらいながら、未来を予測し、真のサステナビリティについて考え、伝えることを目的としている。

各小説では、以下のような社会問題がテーマとして描かれている。

『貧困の博物館』

貧困がなくなった100年後の世界で貧困がどのように根絶されたかを展示する「貧困博物館」を舞台に、水・電気・栄養といった物質的な貧困がなくなった未来に残る「新たな貧困」について考える物語だ。

ウェルビーイングや心の貧困といった、次世代の”豊かさ”がテーマとなっている。

『モラトリアム』

人々が宇宙へ移住し、無限の電力によって働く必要すらもなくなった未来で、月面世界を舞台に描かれる冒険物語である。

労働・愛・ジェンダー・社会的承認といった社会概念が大きく変化していることが予想される100年後の世界で、人の行動や科学の役割がどう変容していくのかがテーマとなっている。

『共棲の始まり、そして未来』

ES(ecosystem sheet)と呼ばれる「生態系復活装置」を用いて、荒廃地の食料供給計画に従事する主人公の物語だ。主人公は宇宙で最愛の妻を亡くしたことをきっかけに、恒星間小惑星宇宙船「遥」の開発に着手する。

微生物から人まで、100年後の未来における地球内外での生態系のあり方や共棲をテーマとしている。

『幸せな⻑い人生』

科学の発展により人類の病がほぼ克服されても、個人の記憶の底にあるトラウマは依然解消されない。健康寿命が伸びた22世紀中盤において、記憶をピンポイントで消し去る装置を自ら治験する主人公の物語である。

テクノロジーが発展した未来における人の精神や生き方、コミュニケーションの変容などがテーマとなっている。

4つの作品は、ユーグレナのWebページから無料で読むことができる。

海外のサステナビリティフィクション

海外でも、「サステナビリティフィクション」とは呼ばれていないものの、環境問題をテーマにしたフィクション作品は多く執筆されている。

例えばオーストラリアの環境化学者・小説家のガイ・レーンは、蒸気船を舞台に地球温暖化や気候変動といった気候科学をテーマとして描いた『Yongala(ヨンガラ)』や、海洋科学アドベンチャーの『Aquaria(アクアリア)』などを制作している。

作品内ではサステナビリティについて明白に記述したり、諭したりするのではなく、あくまで物語を通して読者が自然に考えられるようにストーリーや文脈、キャラクターなどが構成されているという。

また23世紀のタイを舞台に地球温暖化やバイオテクノロジーについて扱った、アメリカの作家パオロ・バシガルピの『ねじまき少女(The Windup Girl)』も有名である。

サステナビリティフィクションが社会に果たす役割

近年、ユネスコを主導機関として「持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)」が国際的に推進されており、以前に増してサステナビリティ教育が重要視されている。

2019年の第40回ユネスコ総会ではESDの新たな国際枠組みとして、「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)」が採択された。

また日本でも、2020〜2022年に全面実施された小中高校の「新学習指導要領」では、ESDが基盤の理念として掲げられ、「持続可能な社会の創り手の育成」が明記されている。その中でサステナビリティフィクションは科学や政治が絡み、難しくなりがちな環境問題や社会問題について分かりやすく伝える手段、議論の出発点として活用できる。

物語を通してサステナビリティに触れることで、複雑なテーマをより気軽に取り上げて学ぶことができ、持続可能な社会のあり方や未来を考える想像力、問題解決のためのアイデアを生み出す力を育むきっかけになるだろう。

まとめ

サステナビリティフィクションは創作されたばかりの新ジャンルであり、今後も社会や科学技術の変容とともに多様に変化していくことが予想される。

「持続可能性」という広く奥深いテーマを空想を基にしたフィクションという形で表現するからこそ、誤解を生んだり、読者を誤った方向に誘導したりする内容が含まれていないかは確認が必要だ。

【参照サイト】Sustainability Fiction|ユーグレナ
【参照サイト】持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)|文部科学省
【参照サイト】 The best books about green living for children of all ages
【参照サイト】 Sustainability Themes in Fiction Writing: Reaching a wider audience
【参照サイト】Guy Lane

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