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有害なポジティブさ(Toxic Positivity)とは・意味

Pink highlight pen text on blue background - TOXIC POSITIVITY means being an optimist and engaging in positive thinking, rejects difficult emotions - takes positive thinking to overgeneralized extreme

有害なポジティブさとは?

有害なポジティブさ(Toxic Positivity)とは、どんなに悲惨で困難な状況でも、人々はポジティブな考えを維持すべきだという信念を表す。ネガティブな感情を切り捨て、“good vibes only”、すなわち、前向きな願いや思考、姿勢だけを受け入れる姿勢を示す。

楽観的であることやポジティブな考え方をすることには利点がある。だが、人生は常にポジティブであるとは限らない。後悔や悲しみ、喪失感といった精神的苦痛を味わうことだってある。

精神的苦痛を味わうことはしばしば不快に感じられる。しかしアメリカ心理学会のウェブサイトに掲載された論文によると、精神的苦痛を受け入れることで、ストレスの原因に対するネガティブな感情を抑えることができるとされる。より良い精神的な健康を得るためには、つらく不快なことを率直に感じ、受け入れ、対処する必要がある。

しかし有害なポジティブさは、すべての精神的苦痛を否定して、明るい感情を優先する。有害なポジティブさは、「ポジティブに見せかけること」を優先してしまうのだ。この姿勢は、単に楽観主義を強調するだけでなく、幸せやポジティブでない人々の感情を抑え込み、否定さえする。

有害なポジティブさの具体例

有害なポジティブさは、日常生活の中にさまざまな形で現れる可能性がある。

たとえば、職を失ったり、何か悪いことが起こったりしたとき、あなたに「とにかく前向きに」「明るい面を見るように」という人がいるかもしれない。このような発言には同情的な意味もあるが、相手の言いたいことや、吐き出したい感情を封じ込めてしまうことがある。

また、ある種の喪失を経験したあと、「すべての出来事には理由がある」という人がいるかもしれない。そのような発言をするのは慰めになると思ってのことだが、この発言は喪失を経験した人の苦痛を避けるための手段でもある。

「ポジハラ」になっていないか注意しよう

ポジハラとは「ポジティブハラスメント」の略で、ポジティブ思考の押し付けやポジティブ思考への無理な転換を表す。

ハラスメント(harassment)は、誰かに迷惑をかけたり、困らせたりすることを意味する。ハラスメント行為とみなされるものの定義は明確ではないが、広義としては、肉体的に、または言葉によって、あるいは示唆される言動によって、不快感や屈辱感、精神的苦痛を与える好ましくない行為を指す。

上記の発言は、多くの場合、良かれと思って発せられるものである。または、他に何を言っていいかわからないとき、どう共感していいかわからないときに発せられる。だが、相手にとってその発言は、ポジティブ思考を無理やり押し付けるハラスメント行為かもしれない。

有害なポジティブさはためにならないことを認識するのが重要だ。

有害なポジティブさの兆候

有害なポジティブさの兆候を見極めることで、その性質をよりよく理解することができる。その兆候には、次のようなものがある。

  • 自分の本当の気持ちを隠す
  • 自分が感じていることに罪悪感を覚える
  • 問題を直視するのではなく、問題を払いのける
  • 気になることを「それはそれだ」と言って受け流す
  • 自分が不快になるからと、他人の感情を最小限に抑えつける
  • 他の人がポジティブな態度でない場合に、その人を非難する
  • ストイックになったり、つらい感情を「乗り越えよう」としたりする

有害なポジティブさへの対処法

まず、自分自身の中にある有害なポジティブさへの対処法には次のようなものがある。

  • 「大丈夫でなくてもいい 」という姿勢を身につける
  • ネガティブな感情は否定せずにうまく対処する

ネガティブな感情は放っておくとストレスの原因となる。けれど、ネガティブな感情を持つことは決して悪いことではない。ネガティブな感情が、人生に有益な変化をもたらす重要な情報を与えてくれることもある。常に大丈夫であることは現実的ではないことを受け入れよう。誰かが「大丈夫だ」と思えなくても、それは全く問題ないことなのだ。

加えて、誰かがつらい感情を表現したときには、他人の話に耳を傾け、サポートすることに重点を置く。有害なポジティブさで相手の感情を封じ込めることはやめ、代わりに、相手の感情をありのまま受け入れ、その人の話に耳を傾けよう。

もしあなたが有害なポジティブさにさらされているのであれば、有害なポジティブさをもたらす人やものとの間に境界線を引くことをおすすめする。

たとえば、「ポジティブ」なソーシャルメディアのアカウントをフォローすることは、時にインスピレーションの源となるが、そうしたコンテンツを見たり交流したりした後に自分がどう感じるかには注意が必要だ。もし、「ポジティブ」な投稿を見たあと、恥ずかしさや罪悪感が残るようであれば、それは有害なポジティブさが原因かもしれない。そのような場合には、ソーシャルメディアの利用を制限することを検討したい。

また、自分の正直な気持ちを言葉にして表現することも、有害なポジティブさにさらされた場合の対処法の一つだ。何かつらいことがあったとき、日記を書いたり、友達に話したりしてみよう。自分の感じていることを言葉にするだけで、ネガティブな感情の強さを抑えることができるという研究結果がある。

ポジティブな感情もネガティブな感情も受け入れる

困難な状況に直面したとき、ストレスや心配、恐怖を感じるのは普通のことだ。ネガティブな感情を否定し、ポジティブな感情を維持すべきと考えるのではなく、ポジティブな感情もネガティブな感情も受け入れてバランスを取ることを目指したい。

困難な状況に直面したときには、十分な睡眠をとったり、数分間だけ外に出て新鮮な空気を吸ったり、友人と過ごす時間を大切にしたりといったセルフケアに努めながら、その状況を改善するステップを踏むことに取り組もう。

【参照サイト】What Is Toxic Positivity?
【参照サイト】How Emotional Pain Affects Your Body
【参照サイト】The psychological health benefits of accepting negative emotions and thoughts: Laboratory, diary, and longitudinal evidence.
【参照サイト】What is Considered Harassment? Definition, Types, & Examples
【参照サイト】Toxic Positivity: The Dark Side of Positive Vibes
【参照サイト】5 Self-Care Practices for Every Area of Your Life
【参照サイト】Putting Feelings Into Words – Matthew D. Lieberman, Naomi I. Eisenberger, Molly J. Crockett, Sabrina M. Tom, Jennifer H. Pfeifer, Baldwin M. Way, 2007
【参照サイト】ポジティブ思考の押しつけはNG 自己肯定感にも悪影響:日経xwoman

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