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【まとめ】プラスチック新法、全国のホテルチェーン17社はどう対応した?

ホテル

4月1日から施行された「プラスチック資源循環促進法」。それに伴い、該当する12品目を扱う提供事業者が、それぞれの対応案を発表している。

IDEAS FOR GOODでは、よく利用されるお店や宿泊施設などを調査し、各事業者の対応内容をまとめている。本記事では、「ホテルチェーン(ビジネスホテル等)」の対応状況についてご紹介しよう。

プラスチック資源循環促進法を確認しよう

今回施行された「 プラスチック資源循環促進法」、通称「プラ新法」がなぜ注目されているのか、整理しておこう。

プラ新法は、これまで施行されてきた「容器包装リサイクル法」や「家電リサイクル法」とは異なる。前述した法律は、すでに使用された製品が役目を終えたあと、どのようにして再活用(リサイクル)するかに重点が置かれたものだ。

一方、プラ新法は、サーキュラー・エコノミー(循環経済)の考えにそって設計されている。自治体や事業者が、プラスチック資源の採用から設計、製造、使用後の再利用または廃棄方法など、すべてのプロセスに責任を持つことが強調された法律だ。

ホテルチェーンが求められている対応と宿泊客への影響

プラ新法施行にあたり、ホテルチェーンが求められているのは、基本方針の中にある「特定プラスチック使用製品の使用の合理化(ワンウェイプラスチックの使用の合理化)」である。

従来の使い捨てカトラリーやアメニティ12品目が具体的に選定され、該当製品を扱う提供事業者は脱プラスチック素材への変更や有料化、取り扱い廃止といった対応が求められている。

ホテルチェーンの該当製品は、次の5つ。

  • 歯ブラシ
  • カミソリ
  • ヘアブラシ
  • くし
  • シャワー用キャップ

宿泊施設を利用する場合は、これらのアメニティをどう取り扱っているか、事前に確認する必要性が高まっている。これからはホテルのアメニティを使うのではなく、旅行者自身で必要なトラベルグッズを準備して行くことが求められるのではないだろうか。

知っておくと便利、ホテルチェーン各社の変更点まとめ

ここからは、ホテルチェーン各社の具体的な変更点や対応について見ていこう。本記事で紹介するのは、次の17社だ。

01. ルートインホテルズ

全国200店舗以上を展開している「ルートインホテルズ」は、アークホテル、グランヴィリオホテルを除くすべての店舗で取り扱うアメニティ(歯ブラシ、カミソリ、ブラシ)の本体と包装をバイオマス素材配合製品に切り替えることを発表。宿泊客への対応としては、バイキングやフロントで受け取る形式ではなく、客室への設置を続けるそうだ。

切り替え時期は、従来製品の在庫等を見ながら準備を進めるとしており、2022年夏頃から実施予定とのこと。

【公式サイト】ルートインジャパン株式会社

02. 東横イン

東横インは、国内各店舗の全客室に設置していた「歯ブラシセット」を、4月1日よりフロント周辺のアメニティコーナーに設置変更すると発表した。希望する人だけに提供することで不要なごみの削減を目的としており、同時に「MY歯ブラシの持参」を呼びかけている。

東横インはほかにも、「Toyoko Inn Blue Reborn(ブルーリボーン)プロジェクト」を2021年10月1日より実施。使用済みプラスチック製アメニティの回収を行っている。回収されたアメニティは適切な方法でリサイクルされ、新しい歯ブラシケースへと再生(リボーン)される。

【公式サイト】東横イン

03. アパホテル

アパホテル

出典:アパホテル

アパホテルは、2022年4月から、客室に設置しているアメニティをバイオマス等の環境に配慮した素材に変更した。アパホテルブランド以外のアパ直参画ホテル、佳水郷、海外は対象外となっている。

対象となるアメニティは、タオル、ナイトウェア、歯磨き粉、粉末ドリンク、一部消耗品だ。

具体的には5月中旬より、ヘアブラシとくしを小麦35%配合バイオマス素材に、シャワーキャップをコーンスターチ15%配合バイオマス素材へ変更予定。また、9月からはカミソリを再生プラスチック70%配合(ボディ)と再生鋼100%配合(刃)のものに変更するとしている。

アパホテルはほかにも、施設で提供する紙バッグの持ち手をプラスチックから紙へ改良。ビニール袋もサトウキビ30%配合バイオマス素材に変更、バスタオルはプラスチック配合のものからレーヨンに変更し、すべてのアメニティ包材の厚さとサイズを軽減化している。

チェックインした宿泊客には、到着日にウェルカムウォーターを用意し、2泊以上の連泊清掃時の配布サービスはなくなるとのこと。

【公式サイト】アパホテル

04. スーパーホテル

スーパーホテル

全国で100店舗以上を展開している「スーパーホテル」は、アメニティ(歯ブラシ・カミソリ)の客室設置を取りやめ、必要分をフロントロビーで提供する方式に変更した。

同ホテルはこのほかにも、「エコひいき活動」を推進しており、マイ歯ブラシの持参や連泊時の清掃不要への協力を呼びかけている。清掃不要の申し出があった宿泊客には、ミネラルウォーターを1本プレゼントするキャンペーンも継続して実施中だ。

【公式サイト】株式会社スーパーホテル

05. 東急ホテルズ

東急ホテルズ

4月23日より順次、環境関心度が高いミレニアル世代をターゲットとした「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」、「東横東急REIホテル」にて、植物由来の資源を使用した以下のアメニティを導入すると発表している。

  • 籾殻(もみがら)35%を配合した歯ブラシとレザー
  • 籾殻12.5%を配合したヘアブラシ
  • コーンスターチ20%を配合したシャワーキャップ
  • コットン100%のボディータオル

東急ホテルズはほかに、以下の取り組みを実施している。

ウォーターサーバーとエコカップ「森のタンブラー」を設置

「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」、「東横東急REIホテル」の客室で無償提供していたミネラルウォーターを廃止し、代わりに各フロアにウォーターサーバーを設置。加えて、ウォーターサーバーの水を運ぶカップには、アサヒビールとパナソニックが共同開発した「森のタンブラー」を採用した。「森のタンブラー」は、木材由来のセルースファイバーを55%配合したカップだ。

【公式サイト】東急ホテルズ

06. ドーミーイン

ドーミーインは、4月1日からワンウェイプラスチック製品の削減を目指し、国が定めた特定プラスチック製品5種を専用ブースに設置するように変更するとしている。また、姉妹ブランド「共立リゾート」が運営するリゾートホテルで部屋置きする場合は、脱炭素素材を使用したアメニティに変更される。

【公式サイト】ドーミーイン

07. ホテルサンルート(相鉄ホテルズ)

ホテルサンルートは、客室に設置していたアメニティ類を、ロビー内にあるアメニティコーナーへの設置に変更した。対象ホテルは「相鉄フレッサイン」全店と「相鉄グランドフレッサ」全店。対象アメニティは、歯ブラシ、カミソリ、ボディスポンジ、綿棒の4種類となっている。

【公式サイト】相鉄ホテルマネジメント

08. ワシントンホテル

ワシントンホテルは歯ブラシのみ客室に設置、カミソリとヘアブラシは希望者にのみフロントにて受け渡しという方式に変更済みだ。歯ブラシはハンドル(ボディ)部分に籾殻を配合したバイオマス素材を使用し、プラスチックを約35%削減している。

歯ブラシ、カミソリを持参した宿泊客(ホテルが用意したものを使わなかった場合)には、宿泊5回分で500円分のクオカードをプレゼントするキャンペーンも実施中。

また、プラスチックマドラーを木製に変更、ストローは生分解性ストローに変更、シャンプーやリンス、ボディソープは補充式に変更など、アメニティ以外のプラスチックごみ抑制にも積極的に取り組んでいる。

【公式サイト】ワシントンホテル株式会社

09. JRホテルグループ

全国主要都市の駅に直結したホテルをはじめ、日本全国でホテルを展開するJRホテルグループ(JR北海道ホテルズ、JR東日本ホテルズ、JR東海ホテルズ、JR西日本ホテルズ、JR四国ホテルズ、JR九州グループホテル)では、それぞれの運営会社で客室に設置しているアメニティへの対応を行っている。

JR東日本ホテルズでは、加盟している56のホテルの客室に設置していたプラスチック製のアメニティのうち、ヘアブラシ、カミソリ、くし、シャワーキャップをすべて代替素材に変更、もしくは廃止した。

歯ブラシについては、使用感などの問題から今の段階での代替品への変更、または廃止を見送り、引き続き検討したいとのこと。同ホテルはほかにも、レストランやテイクアウト等で提供される使い捨てプラスチック製品(フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー)も代替素材へ変更している。

参照資料:JR 東日本ホテルズ ワンウェイプラスチック製品について

他にも、JR九州グループホテルのJR九州ステーションホテル小倉では、客室常設のアメニティについて梱包材を含み、バイオマスプラスチック製品などに変更している。また、一部アメニティは客室常設から必要な宿泊客だけに提供する形式に変更した。

参照資料:プラスチックごみ削減に向けた客室アメニティの見直しについて

【公式サイト】JRホテルグループ

10. コンフォートホテル

コンフォートホテル

コンフォートホテルは、客室に設置していたアメニティのうちヘアブラシとカミソリの提供をやめ、宿泊客自身がロビーに設置したアメニティコーナーから必要な分のみを選んでいくバイキング形式に変更している。

また、アメニティ製品を含むプラスチック製の消耗品は、すべて代替品への変更や絞り込みの検討を続けるそう。

【公式サイト】株式会社チョイスホテルズジャパン

11. マイステイズ・ホテル

ホテルマイステイズでは、アメニティの一部(カミソリ、ヘアブラシ、シャワーキャップ)を客室常設からロビーに設置するアメニティバーから宿泊客自身で選ぶ形式に変更した。マイステイズ・ホテル・グループに加盟している各ホテルで、客室常設での提供を変更したアメニティは以下の通り。

  • ホテルマイステイズ:カミソリ、ヘアブラシ、シャワーキャップ
  • フレックスステイイン:カミソリ、ヘアブラシ
  • アートホテル・ホテルマイステイズプレミア・マイステイズコレクション:シャワーキャップ

【公式サイト】マイステイズ・ホテル・グループ

12. 阪急阪神第一ホテル

レムや阪急ホテルといったホテルブランドを運営する阪急阪神第一ホテルは、4月1日より使い捨てアメニティグッズの絞り込みを行い、希望する宿泊客のみに配布する形式に変更すると発表した。

実施内容はホテルによって異なり、第一ホテル東京とホテル阪急インターナショナルは、歯ブラシ・ヘアブラシ・カミソリ・綿棒・コットンの上記5アイテムセットを希望した人にのみ配布。上記以外のホテルでは、歯ブラシ・ヘアブラシ・カミソリのアメニティコーナーを設置し、宿泊客に自由に取ってもらうかたちに変更される。

また、配布するアメニティは順次、環境に配慮した代替品に切り替えていくとのこと。採用する製品の概要や、切り替えスケジュール等の詳細は不明だ。

【公式サイト】阪急阪神第一ホテル

13. プリンスホテル

プリンスホテルではアメニティの不使用を提案し、削減できた分だけ各施設が所在する自治体の環境保全活動に寄付すると発表した。同様に、連泊した場合の清掃についても清掃不要の申し出があった分だけ寄付を実施するとのこと。

同ホテルはほかにも、テイクアウト等で使用しているワンウェイプラスチック製品(フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー)を木製などの代替品に順次切り替えると発表している。

【公式サイト】プリンスホテルズ&リゾート

14. ダイワロイネットホテルズ

ダイワロイネットホテルは、全ホテルに先行してダイワロイネットホテル銀座の全客室で、天然由来原料を配合した歯ブラシ・ヘアブラシを導入している。

歯ブラシは籾殻を約25%配合したハンドル(ボディ)製のもの。ヘアブラシには古米や粉米を約20%配合し、原料消費を抑えるためにハンドルを空洞にしている。

【公式サイト】ダイワロイネットホテルズ

15. リッチモンドホテル

「リッチモンドホテル」は、アメニティを客室に設置せずに、チェックイン時にフロントで必要分だけ提供する方式に変更している。

対象アメニティは、歯ブラシ、カミソリ、ヘアブラシ、ボディタオル、綿棒、シェービングクリーム、アフターシェービングクリーム、マウスウォッシュ。また、連泊時に関しても、不必要な交換を行わない取り組みを実施している。

【公式サイト】リッチモンドホテル

16. WHGホテルズ

WHGホテルズ

画像出典:WHGホテルズ

藤田観光が運営するワシントンホテルズは、歯ブラシのみ客室に設置、カミソリとヘアブラシは希望者にのみフロントにて受け渡しという方式に変更済みだ。歯ブラシはハンドル(ボディ)部分に籾殻を配合したバイオマス素材を使用し、プラスチックを約35%削減している。

同ホテルはほかにも、客室の「エコ清掃」を実施。連泊時の清掃をタオル交換・歯ブラシ交換・ごみ処理のみに簡素化して、CO2排出抑制に取り組んでいる。宿泊客からの申し出があった場合にのみ、客室内清掃・バスルーム清掃・ベッドメイキングなどを含む「フル清掃」で対応しているとのこと。

【公式サイト】WHGホテルズ(藤田観光)

17. ヴィアインホテル

JR 西日本ホテル

JR西日本グループのホテルチェーンのヴィアインホテルでは、これまで導入していた宿泊客のみが必要な分だけ使うアメニティバイキング形式を廃止し、基本的には宿泊客自身での持参を推奨していくことを発表した。

使い捨てプラスチックの対象となる製品のうち、ブラシやボディタオル、サニタリー袋、マドラーについては、代替素材配合のものに変更。カミソリやヘアブラシについては、使い捨てではなく繰り返し使える製品をフロントで販売する「有料化」に踏み切った。

【参照ページ】お客さまとともに歩む使い捨てプラスチック削減に向けた取り組み開始のお知らせ|株式会社ジェイアール西日本デイリーサービスネット
【公式サイト】ヴィアインホテルチェーン

チェックイン後に困らないよう準備しておこう

国内のホテルはアメニティを無料でサービスするのが主流ということもあり、一切配布せずに完全廃止するといったホテルはないようだ。

ただ、これまでは客室に常設していたものが、フロントや専用コーナーでのバイキング形式に切り替わるところが多いことがわかる。「いざ使おうとしたら手元になかった」といったトラブルは十分に考えられる。

ホテルを予約するときやチェックイン時には、しっかりと変更点をチェックしておこう。

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※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Life Hugger」からの転載記事となります。

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