休むことを練習しよう。眠らない街NYで広がる、みんなでただ寝転ぶコミュニティ

2026.09.25

Natsuki

ある休日。今日はしっかり休もうと、自分に言い聞かせて朝を迎える。

しかし、「休むために」何をすれば良いかが分からない。結局スマートフォンやパソコンに手が伸びたり、急ぎではない用事を済ませようとしたり……何気なく自分に「やること」を課してしまう。

そんな休むことの難しさ、休むことへの罪悪感を、どう和らげることができるだろうか。

アメリカ・ニューヨークでは、そんな「休みたいのに休めない人」が集まり、公園でただ横になって休むコミュニティ・Club Rest Stopが立ち上がった。ここでのルールは、ただ横になって休むこと。初回には約40人が参加し、2時間にわたって瞑想や呼吸法を実践したり、ヒーリング音楽に耳を傾けて時間を過ごした。

Club Rest Stopの発起人であるマアリヤ・シモーネさんは、自身のインスタグラムで次のように語っている。

ニューヨーク市初となる「休息のためのクラブ(rest club)」を立ち上げようと思いついたきっかけは、人々が安心して自由に休める場所をもっと提供したいという純粋な思いからでした。現在、「Club Rest Stop」のメンバーは700名に達し、今も増え続けています(立ち上げからまだ6週間しか経っていないのに!)

その広がりの裏には「一人で」休むことの躊躇いがあることを、マアリヤさんはNew York Postの取材でこう答えた(※1)。

休息を取ることには、多くの場合、恥ずかしさや罪悪感が伴います。しかし、Club Rest Stopでは、横になることが第一のルールです。みんなそうしているので、自分だけが浮いているような気分にはなりません。

誰にも見られていなかったとしても、「今休んでいていいのだろうか」と不安になる。だから、休むための場所と時間が外部から与えられることに、安心感を覚える人が多いのだろう。

マアリヤさんはイベント中、サンドラ・ダルトン・スミス医学博士が提唱する「7タイプの休息フレームワーク」を紹介。休息は身体的、精神的、感情的、社会的、創造的な側面から7つの種類に分類され、それぞれが異なる休息不足に対処するものだと提唱されている(※2)。睡眠だけではない「休み方」を知ることも、休息への不安感を和らげてくれる。

生産性を求められる社会の中で、本当の意味で「何もしない」を実践するのは意外と難しい。Club Rest Stopの人々が証明したように、休息は孤独に耐えながら取るものではなく、時に誰かと分かち合うことで安心して実行できるものなのだろう。

マクロに捉えれば、「上手に休む」ことを個人の自己責任や努力に委ねるのではなく、誰もが安心して立ち止まれる余白を、社会として設計することも大切である。しかしそれも、すぐに完成するものではない。だから今は、今日という一日を生き、穏やかに明日を迎えるために、「何もせずみんなで休もう」という声かけが必要とされているのかもしれない。

※1 Burned-out Gen Zers are joining lie down clubs to ‘recover’ from hustle culture: ‘A lot of tired people’|New York Post
※2 The 7 types of rest and why we need them all|Harvard Health Publishing

【参照サイト】Rest Stop.|Instagram
【参照サイト】Burned-out Gen Zers are joining lie down clubs to ‘recover’ from hustle culture: ‘A lot of tired people’|New York Post
【参照サイト】Dr. Saundra Dalton-Smith Website
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この記事を書いたライター

Natsuki

Natsuki

IDEAS FOR GOOD副編集長。大学在学中は政治経済を学びながら、難民支援NGOやEarth Company、mymizuなどの活動に従事。スウェーデンへ留学し、環境・開発問題を学んだ。2023年から自然環境・オルタナティブ経済の領域を中心に取材。海外先進事例の企業向けリサーチ業務や、ウェブマガジンの立ち上げ支援・コンテンツ作成、気候変動と創造性を交差させた企業共創プロジェクトの企画運営に従事。脱成長、紛争予防、自然観などを軸に執筆・編集を担当するほか、移住先の地域でまちづくりや環境教育にも携わっている。