「待つ」を価値に。デジタル伝書鳩がメッセージを届けるアプリ・Carrier Pidge

2026.10.02

返信を急かされているわけではないのに、メッセージが届くと「早く返さなければ」と思ってしまう。短文メッセージのラリーを重ねているうちに、楽しかったはずの返信が、いつの間にか小さなタスクのように感じられてしまう。そんなふうに、テキストメッセージでもやもやした経験をしたことがある人は少なくないだろう。

誰かに何かを届けるスピードも、受け取るスピードもかつてなく速くなった今、あえて「待ち時間」を取り戻そうとするメッセージングサービスが登場した。それが「Carrier Pidge」。メッセージを運んでくれるのは、デジタル上の伝書鳩だ。
 
Carrier Pidgeでは、まず友人を一人選んでメッセージを書き、「リリース」すると、デジタル伝書鳩が相手のもとへ飛び立つ。鳩は約時速177キロメートルで進み、送信者と受信者の距離に応じて、実際の伝書鳩を模した速度で移動。メッセージの到着を待つ間は、地図上に表示された伝書鳩のルートや飛行状況、到着予定時刻を眺めることができる。

面白いのが、鳩によって速度のばらつきがあったり、途中で気が散ってしまう鳩がいたりすること。さらには、飛行中に迷子になってメッセージが届かない確率が0.2%あるそうだ。


 
速く届けられるのに、あえて遅くする。それは便利さを否定するというより、速さ一辺倒だったデジタル通信に「待つ」という別の選択肢を足す試みだ。テクノロジーで「もっとできる」を叶えるだけではなく、ときには「しない」「遅くする」ことまでデザインする。

「いつ届くだろう」とじれったく思ったり、わくわくどきどきしたり、時には送ったことさえ忘れてしまうほど長い時間待つことになったり……Carrier Pidgeは、コミュニケーションの進化が必ずしも「もっと速く」への一本道ではないことを、鳩の気まぐれな速度にのせて見せてくれている。

 
【参照サイト】Carrier Pidge — Send Messages at Pigeon Speed(Carrier Pidge)
【参照サイト】carrier pidge(App Store)

この記事を書いたライター

大学ではメディア文化を専攻し、政治、広告からおもちゃ、ファッションまで幅広い題材を通して意味の形成過程やモノの見方について学ぶ。入社後は、IDEAS FOR GOODでの編集・ライティングに従事し、発達障害やうつの方のためのビジネススクール「キズキビジネスカレッジ」との共同ライティングプログラムの立ち上げにも携わる。そのほか、企業のオウンドメディア運営支援や展示企画などを担当。関心テーマは多様性、とくにニューロダイバーシティ。ハッとする言葉や考え方との出逢いは、人をしなやかに変えてくれると信じており、新しいアイデアや発想の仕方、それを届ける多様な表現に触れるのが好き。目標は、言葉の力で、誰かの心を「紙1枚分」軽くすること。