「次このシマを歩いてたら絶対声かけるからね!」
鹿児島県・奄美大島の集落で、おじいちゃんたちに教わった「ナンコ遊び」。小さな木の棒を掌に隠し、勝った負けたと笑い合った帰り際、そんな言葉をかけてもらいました。
旅人と住民。よそ者と地元の人。その境界線が、ふとした瞬間にほどけていく。IDEAS FOR GOODが奄美大島を取材するなかで心に残ったのは、世界自然遺産の雄大な景色だけでなく、こうした人々との何気ない出会いでした。

▶️ 未来に残したいものを、どう決める? 奄美大島で出会った「シマ」という営み
▶️ 踏み込みすぎず、待つ、委ねる。奄美大島で「多種」と生きる作法
2021年、奄美大島と徳之島を含む4地域が世界自然遺産に登録されました。豊かな自然が注目される一方で、島では観光と自然保全、地域経済と文化の継承をどう両立するかという問いが続いています。
そもそも、私たちが島で「守りたい」と願うものは、何なのでしょうか。美しい森や海、固有の生きものたち。そして、山から水を得て、畑を耕し、祭りのたびに顔を合わせ、ともに暮らしを営んできた人々の時間。そこには、自然と人、人と人との関係のなかで育まれてきた文化があります。
しかし、人口減少や暮らしの変化によって、これまで当たり前に続いてきた営みを、同じ形で次の世代へ手渡すことが難しくなっている地域もあります。何を残し、何を変えていくのか。そして、それを誰が決めるのでしょうか。
そんな問いを考えるうえで、もう一つ目を向けたいのが、同じ奄美群島に位置する徳之島です。徳之島を含む奄美には、こんな言葉が伝わっています。
「水や山うかげ 人や世間うかげ」
水があるのは山のおかげ。人が生きていけるのは、周囲の人々のおかげ。
徳之島では、自然の恵みを受け取りながら、人々が互いに手を貸し合う「結い」の文化が育まれてきました。しかし、機械化や生活様式の変化によって、かつて人が集まらなければできなかった仕事も、少人数でできるようになっています。便利になった一方で、顔を合わせ、ともに手を動かす機会も変化しています。

Image via 南西旅行開発
そんな徳之島でいま、島の自然や文化を未来へつなぐ営みに、旅人も参加する「シマモリ」という取り組みが進められています。
かつて島で育てられていた琉球藍を再び植える。山を歩き、自然と暮らしのつながりを知る。地域の人たちと一緒に手を動かす。そこにあるのは、完成された地域づくりの成功事例ではありません。何を次の世代へ残し、どのように人々の関係をつなぎ直していくのか。島の人々自身が模索を続ける、現在進行形の営みです。
▶️ 効率を手放し、「つながりの確認」のために集う。徳之島「シマモリ」が問い直す、生命の源流へ還る旅
では、そんな島の未来に、旅人である私たちにも何か役割はあるのでしょうか。
もちろん、外から訪れる人が善意だけで地域に関わればよいわけではありません。何かをすることだけでなく、相手の話を聞くこと、ときには踏み込みすぎずに見守ることも、関係を育てるうえでは大切でしょう。観光客でも、住民でもない。けれど、その土地に暮らす誰かの顔を知り、ともに手を動かし、旅を終えたあとも気にかけ続ける。そんな関係が、島の未来にも、私たち自身の暮らしにも、新しい豊かさをもたらすかもしれません。
今回のオンラインイベントでは、奄美大島を取材したIDEAS FOR GOOD編集部と、島々を舞台に新たな旅の形を模索する旅行会社、そして徳之島で暮らす人々が集まり、観光の先にある地域との関わり方を考えます。
島の未来に、自分ができることはあるのでしょうか。その答えを急ぐ前に、まずは、そこで暮らす人々が何を大切にし、何に迷い、どんな未来を思い描いているのかを知ることから。島との新しい関係を、そんな対話から探ってみませんか。
イベントで考えたい3つの問い
① 私たちは、なぜいま「シマ」に目を向けるのか?
自然と人の暮らしが重なり、集落ごとに異なる文化や知恵が育まれてきた島々。人口減少や暮らしの変化のなかで、何を残し、何を変えていくのか。そして、それを誰が決めるのでしょうか。奄美・徳之島の現在から、私たちの社会にも通じる問いを探ります。
② 島の未来に、旅人の役割はあるのか?
旅先の自然や文化を楽しむだけでなく、その土地の営みに関わることはできるのでしょうか。一方で、外からの善意が必ずしも地域のためになるとは限りません。島の人々の声を聞きながら、旅人だからこそできること、そして踏み込みすぎないことの大切さを考えます。
③ 一度きりの旅から、関係はどう育まれるのか?
ともに歩き、手を動かし、語り合う。そんな時間を通して、旅人と地域の人々の間には何が生まれるのでしょうか。旅が終わったあとも、相手の暮らしを気にかけ、ときには再び訪れる。島の人々との対話から、役割やつながりが少しずつ育まれていく可能性を探ります。
今回のイベントでは、12月のツアーで実際に訪れる場所や、そこで出会う人々の取り組みも紹介します。完成された成功事例を視察するのではなく、いまも模索が続く現場に足を運ぶこと。その意味も、島の人々とともに考えていきます。
▶️【12/4-6・参加者募集】私たちは、何によって支えられているのか。多層性の島・徳之島でたどる「源流」ツアー
プログラム構成
19:00〜19:05 オープニング・趣旨説明
19:05〜19:15 伊藤智子(10分)奄美で出会った「シマ」の風景、人々との関係、問い
19:15〜19:25 内山貴之(10分)旅人は、島の未来にどう関われるのか。「シマモリ」という実践
19:25〜19:40 林美樹(15分)徳之島の暮らしの現在地。失われつつあるもの、つなぎたいもの
19:40〜20:10 パネルディスカッション(30分)島の未来に、旅人の役割はあるのか
20:10〜20:20 質疑応答・スピーカーとの対話(10分)
20:20〜20:30 徳之島ツアーの紹介・クロージング
※スケジュールは当日変更となる可能性があります。
開催概要
日時:2026年10月28日(水)
時間:19:00〜20:30(Zoomオープン17:50)
会場:オンライン
参加費:無料
お申し込み:Peatixページよりお申し込みください。
主催・運営:南西旅行開発株式会社、一般社団法人徳之島観光連盟
企画・協力:アーティクル株式会社/IDEAS FOR GOOD
※当日ご参加いただけない方も、後日アーカイブ動画をお送りいたします(トーク部分のみ)。
スピーカー
林 美樹(はやし よしき)氏

一般社団法人徳之島観光連盟 事務局長 / 徳之島町亀徳集落・副区長。徳之島生まれ。中学校まで島北部の山集落で育ち、高校進学を機に島外へ。防衛大学校卒業後、海上自衛隊での勤務を経て、父の病をきっかけに徳之島へ戻る。帰島後は父が植えたコーヒーの栽培とカフェを12年間経営、令和元年より集落支援員として、地域の暮らしや文化、自然を次世代へつなぐ地域づくりに携わってきた。現在は徳之島観光連盟の事務局長として、観光資源を単体で消費するのではなく、島の風土や暮らし、人とのつながりを含めて伝える観光のあり方を模索している。
大保 健司(おおぼ けんじ)氏

とくのしま伊仙まちづくり協同組合 事務局長。20代から全国70以上の有人離島を巡り、2020年に徳之島2世の妻と関西から徳之島へ移住。現在、島で生まれた4歳の娘を育てる。2022年に「とくのしま伊仙まちづくり協同組合」を設立し、事務局長に就任。地域の人手不足や移住定住の課題に向き合い、雇用創出、住まいの支援、関係人口づくりなどを横断的に展開。また、奄美群島認定エコツアーガイドとして自然環境や環境教育に携わるほか、伊仙町社会教育委員会長を務める。人と地域のつながりを大切に、次世代が暮らし続けられる島を目指して活動している。
内山貴之(うちやま たかゆき)氏

南西旅行開発株式会社代表取締役。国際協力の仕事に5年弱従事した後、家業の南の離島専門の旅行会社・南西旅行開発に転じ代表就任。南西諸島の島々と関わるうち、人口減少などによりその場所ならではの暮らしが失われゆくことを危惧し、島の風土の持続可能性などに関心を寄せるようになる。旅で訪れることが現地のお手入れになるプログラム「シマモリ」の企画・実施を南西諸島の方々と手掛ける。
伊藤 智子(いとう ともこ)

IDEAS FOR GOOD編集部。大学時代、ヨーロッパで数年間過ごし、大学院では移民・難民研究(開発人類学)を専攻。帰国後、大阪から千葉の里山に移住し、山の中の古民家でシェアハウス生活を送りながら、生態系の一部としての人間のあり方を模索している。食を通じた地域づくりや高校生への講師活動にも携わり、人と人がつながる場づくりに取り組む。2020年からIDEAS FOR GOODで取材・執筆を続け、人間以外の視点にも寄り添いながら、日々の暮らしと社会の問いを地続きに捉える記事を届けている。
南西旅行開発株式会社
1988年設立。35年以上にわたり、奄美・沖縄など南西諸島を中心に島旅を手がけてきた旅行会社。島の自然だけでなく、そこで営まれてきた暮らしや文化、人と人とのつながりを含む「風土」を大切にし、地域に根差した体験や旅を企画している。近年は、島の自然と人、人と人との関係性を探る「島の風土探究」などを通じ、訪れる人と地域の双方にとって、島の風土を未来へつないでいく旅のあり方を模索している。
URL:https://south-west.co.jp/
一般社団法人徳之島観光連盟
徳之島の観光振興を担う地域団体。島内の観光事業者や地域の人々と連携しながら、自然、文化、歴史、暮らしなど、徳之島ならではの魅力を伝える観光情報の発信や体験づくりに取り組んでいる。2016年に一般社団法人化。観光地としてつくり込むのではなく、島に受け継がれてきた自然や文化、集落の日常そのものに触れてもらうことを大切にしながら、地域とともに徳之島の観光のあり方を模索している。
URL:https://www.tokunoshima-kanko.com/
▶️ お申し込み:Peatixページよりお申し込みください。



