FemTech(フェムテック)とは
FemTech(フェムテック)とは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけあわせた造語。女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決できる商品(製品)やサービスのことを指す。
たとえば、生理痛の改善や月経周期の予測、妊娠中のQOL向上、不妊対策、更年期障害の改善、セクシャルヘルス(セックストイなど)、女性特有の病気などのケアなどを解決する製品がこれにあたる。日本でも認知度の高い生理予測・妊娠サポートをするアプリ「ルナルナ」も、実はフェムテックに当てはまるものだ。一方、テクノロジーを用いず女性の健康にアプローチする製品は「フェムケア」と呼ばれる。
株式会社矢野経済研究所が2023年に行なった調査によれば、2022年のフェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場は前年比107.8%の695億100万円と推計されており、2021年と比べ市場拡大が勢いを増しているという(※)。2021年には、フェムテックという言葉が新語・流行語大賞にもノミネートされた。アメリカのリサーチファームFrost&Sullivanの2018年の調査によると、フェムテック市場は2025年までに5兆円規模になると予測されており、いま注目の分野である。
なぜ?フェムテックの盛り上がりの理由
フェムテックは、女性の健康問題、いわば世界の全人口の約半分の健康問題に取り組むテクノロジーだ。盛り上がりの背景にはさまざまなものがあるが、ここでは大きく二つにわけてご紹介しよう。
女性が声をあげやすい社会に変わってきた
まず、フェムテックは、これまでタブー視されてきた女性の「性」の課題に真っ向から取り組み、解決してくれるものだということが大きい。生理の話やセックスの話など、多くの人が悩みを抱えているにも関わらず、他人には共有しづらかった女性特有の悩みや問題が、近年少しずつ可視化されるようになってきた。それをさらに「個人差があるから仕方ない」で片付けるのではなく「解決しよう」としてくれるビジネスは、悩みを抱える女性にとっての救いとなる。
また女性起業家が増え、「女性による女性のためのビジネス」の隆興や、多くの女性が声をあげた#metoo運動も後押ししていると考えられる。依然として経済・政治分野でのジェンダーの不平等はあるものの、より女性の意図や女性特有の悩みが汲み取られやすい社会へ変革している時なのだ。
テクノロジーの進歩
近年のテクノロジーの進化もフェムテック分野の追い風となっている。女性の健康問題に限らず、Fintech(金融×テクノロジー)やAgritech(農業×テクノロジー)など、さまざまな社会課題を解決するテクノロジーを用いて、より正確な情報の提供や、効率的かつ根本的な解決策を提供できるようになった。
人間の誰しもが気にする「健康」に光を当て、女性特有の悩みをデータ化してより適切な治療法を提案するフェムテックが注目されるのも納得である。もちろんセキュリティへの配慮が必要だが、医療機関と連携して多くのデータを集めることで、たとえば専用アプリで医師とつながって体の悩みを相談したりできるようになる。
フェムテックの事例
では、実際にどのような事例があるのかを見てみよう。
海外企業・スタートアップの事例
01. Cora(コーラ)
月経周期、月経量に合わせてカスタマイズし、毎月生理用品を送ってくれるCoraもフェムテックの1つだ。オーガニックコットンや綿花農家とのフェアトレードにもこだわっている。また、パッケージも「女性らしさ」を強調するのではなく、部屋に置いておきたくなるようなスタイリッシュなデザインが魅力だ。
02. Clue(クルー)
Clueは月経周期の管理や、PMS(月経前症候群)の予測に役立つトラッキングができるアプリだ。生理の日を記録しておくだけで、分析と予測をしてくれる。1000万人ものユーザーが集まる、注目のアプリだ。このClueを開発した起業家のイダ・ティン氏は、フェムテックという言葉の生みの親でもある。
03. Elvie(エルヴィー)
妊娠、出産を機に筋力が衰えやすいという骨盤底筋。骨盤底筋を絞める力が衰えると尿漏れや頻尿の原因にもなるという。この骨盤底筋を鍛えるテクノロジーとして、Elvieが誕生した。小さなキットを膣内に挿入しておくとアプリと連動して骨盤底筋を絞めるトレーニングができる。
04. FlowSense(フローセンス)
FlowSenseは、視覚障害があり、かつ生理のある人たちのためのデバイス。生理用ナプキンや下着に取り付けられる使い捨ての試験紙が、液体のpH値を測定することで経血と膣分泌物を判別し、それを付属のデバイスに送信。すると、デバイスがリアルタイムで音声や触覚フィードバックを提供してくれる。さらに、そのデータが集積されていくことで、連携するアプリで月経管理も行える。
05. Dadi(ダディ)
不妊治療は女性だけのものではない。WHOの調査によると、不妊の原因の41%が「女性のみ」、24%が「男性のみ」、24%が「男女とも」という結果になった。精子も加齢とともに精子量が減り、妊娠しづらくなるという。
Dadiでは採取した精子を郵送すると、精子量や濃度が検査されたレポートを受け取ることができ、また精子を保管することができる。理論上は200年にわたって新鮮な精子と同じくらいの精度を保って管理できるようだが、これも年齢を問わず妊娠できるようになる一つの手段だ。
日本企業・スタートアップの事例
06. fermata(フェルマータ)
fermataは、「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」をビジョンとし、女性のウェルネス課題を解決・支援する事業を行う企業だ。国内外のフェムテック・フェムケア商品のオンラインストアでの販売や、最先端のフェムテック商品やサービスを展示する「Femtech Fes!」を主催・運営するなど、フェムテックの浸透を目指し幅広い事業を行なっている。
07. OiTr(オイテル)
生理用品の購入が生理のある人の経済的負担になることを表す言葉、生理の貧困。これを解決しようとするのが、トイレの個室に設置できるディスペンサー「OiTr」だ。使用者はスマートフォンアプリをダウンロードし、サイネージに流れる広告を見ると無料で生理用品がひとつもらえる仕組みだ。商業施設や学校、オフィスなどを中心に設置が進んでいる。
フェムテックの拡大に期待
フェムテックは、女性の健康維持・改善の助けになるだけではなく、製品を通して病院では取りにくい生体データを収集できたり、将来的には個人がヘルスリテラシーを高め事前にケアすることで、医療費の削減にもつながったりといった可能性が期待されている。
近年進んでいる、女性特有の課題をオープンに議論できる風潮と、女性の細かく多様なニーズの可視化。こうした背景に後押しされたフェムテックで、少しでも女性、またその周りにいるパートナーや家族をはじめとした、すべての人が生きやすい世の中になることを期待したい。
※ フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査を実施(2023年)
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