ジェンダー不平等
ジェンダー不平等とは?(What is Gender Inequality)
ジェンダー不平等とは、社会的・文化的な性別(ジェンダー)にもとづく偏見や、男女の雇用・賃金格差といった経済的な不平等に関する問題を指します。
ジェンダー(gender)とは、生物学的な性別(sex)に対し、社会的・文化的役割としての性別を意味します。男性・女性であることにより期待される役割はもちろん、性別による機会の違い、男女間の関係性などもジェンダーに含まれています。
たとえば、「料理や子供のお迎えは母親がするのが当たり前」「男は泣いてはいけない」「女性は男性をたてるべき」「リーダーはやっぱり男性がいい」といった社会通念により規定される性は、ジェンダーだと言えるでしょう。イギリスのロンドンでは、私たちが持つ無意識のジェンダーバイアス(性に基づく偏見)を問う広告が出されるなど、問題視されています。
世界には、ジェンダーに基づいた偏見や不平等が多く存在しているのが現状です。本記事では、ジェンダーの不平等の問題点や、数字と事実、不平等が起こる原因、解決策などの情報をわかりやすくまとめました。
ジェンダー不平等に関する数字と事実(Facts & Figures)
日本のジェンダー不平等の現状に関する数字、そして世界のジェンダー不平等の事実をまとめています。
日本
- ジェンダー・ギャップ指数 日本は116位/146か国 (2022年/男女共同参画局)
- ジェンダー不平等指数 日本は24位/162か国(2020年/UNDP)
- ジェンダー開発指数 日本55位/167か国(2020年/UNDP)
*ジェンダーギャップ指数(GGI):各国の男女格差を数値化したもので、スイス非営利財団世界経済フォーラムが2006年から毎年発表している指標。「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成されており、0が完全不平等、1が完全平等を示す。
*ジェンダー不平等指数(GII):リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、エンパワーメント、労働市場への参加、という3つの側面における達成度から、女性と男性の間にある不平等を映す指数。0が完全平等、1が完全不平等を示す。
*ジェンダー開発指数(GDI):人間開発の成果におけるジェンダー・ギャップを表した指数。人間開発の3つの基本的な側面である健康、知識、生活水準における女性と男性の格差を測定している。
- 国会における女性議員の割合 日本は166位(2020年/列国議会同盟)
- 男女の幸福度 日本では女性の方が男性より8.2%幸せだと感じている(2014年/世界価値観値調査)
- 「女性の幸福度マイナス男性の幸福度」日本は世界1位(2010年/世界価値観値調査)
- 女性賃金が男性賃金に対して何パーセント低いかを示す「男女間賃金格差」が、日本は23.5%。OECD加盟国の中では2番目に高い(2021年/世界経済フォーラム)
- 日本では、結婚したことのある女性のうち7人に1人が身体的暴力の被害を受けたことがある(2020年/政府広報オンライン)
世界
-
- OECD諸国の男女間の賃金格差の平均は12%(2020年/OECD)
- 男女差別に基づいて失われている所得は、世界全体で6兆米ドル、対GDP比7.5%に上る(2019年/OECD)
- 米国のほとんどの州で男女の賃金格差が見られる(AAU)
- サウジアラビアでは、2018年6月にはじめて女性の運転が解禁された
- サウジアラビアでは、女性は海外旅行、銀行口座開設、パスポートの取得など一人で行うことができない。すべて男性親族の「後見人」の承認が必要(2019年現在)
- 「児童婚」南アジアやサハラ以南のアフリカの国々では女性の40%が18歳までに結婚している
- 東欧グルジア、アフリカのエチオピアなどで、男性が求婚する女性を誘拐する風習「誘拐婚(略奪婚)」がある(2019年時点)
- 紛争中に25万人の女性が性的暴力を受けており、コンゴ民主共和国東部では10歳~30歳までの女性の3分の2が性的暴力の被害にあっていると言われている(2017年/独立行政法人国際協力機構<JICA>)
- 世界で、男女に平等な教育へのアクセスを提供する国は40%以下
- 男女の教育格差が世界で最も大きい国の一つイエメンでは、初等教育の純就学率が男子85%に対し女子65%、成人識字率は男性76%に対し女性39%(独立行政法人国際協力機構<JICA>)
- 宗教上の理由から、女性器切除などの手術を受ける地域もある
日本は、UNDPが発表する「人間開発指数(ジェンダー開発や不平等指数)」においては20位以内にランクインしていますが、ジェンダーギャップ指数およびジェンダー・エンパワーメント指数の順位においては、先進国の中で特に低く評価されていることがわかります。
一方で、世界の国々のなかで随一の「女性の幸福度の高さ」を誇る国でもある日本。意外だと思われた方もいるのではないでしょうか。
ジェンダー不平等が起こる原因(Causes)
ジェンダー不平等が発生する原因は様々ですが、主な原因としては下記が挙げられます。
- 宗教の決まり
- 伝統的な社会構造・風習
- 家庭内・家庭外での教育の欠如
- 広告やTVなど、メディアによる「性の役割」の強調 → それが社会的に広がり人々の当たり前になり、ジェンダーバイアス(性に基づく偏見)につながる
これら基づいた考え方や行動が、ジェンダーの不平等や偏見を引き起こしています。
日常に潜むジェンダーバイアス
ジェンダーバイアスとは、人や社会が無意識のうちに性差や男女の役割について固定的な思い込みや偏見を持つこと。今日の社会では、男性が女性よりも優位であるという偏見から男性が優遇措置を受けることが多く、女性が男性よりもジェンダーバイアスの影響を受けやすいことが明らかになっています。以下は、日常的に見かけるジェンダーバイアスです。
色のジェンダーバイアス
男性は青や黒、女性は赤や紫など色が性別の判断材料になっています。例えば、トイレのピクトグラムでは男性が青、女性が赤で示されていること。iOS絵文字の男性が着用している服は青、女性が着用している服は紫。※現在はニュートラルカラーのグレーが追加されています。
形のジェンダーバイアス
男の子は星、女の子はハートやリボンなど形が性別の判断材料になっています。例えば、織姫と彦星のイラストでは、織姫はリボンを身に纏い、彦星は星を付けている場合が多いです。
言葉のジェンダーバイアス
Google翻訳で「彼は看護師です。彼女は科学者です。」と英語入力し、代名詞に性別がないジョージア語やトルコ語に変換し、翻訳後の文章を再度翻訳して英語に戻すと「彼は科学者です。彼女は看護師です。」と翻訳されるなど、言葉にもジェンダーバイアスが含まれています。
以下のCMでは、さまざまな年齢の子供たちに「女性のように走ってみてください」と指示。男女問わず、小学生高学年くらいの年齢から“女性らしい”イメージを再現することや、逆にバイアスに触れる経験の少ない小さな子供たちは思い切り走るなど、ジェンダーバイアスを明らかにする興味深い実験です。
ジェンダー不平等はなぜ問題なのか?(Impacts)
ジェンダー不平等はなぜ問題なのでしょうか。主な問題点としては下記が挙げられます。
- 政治・経済共に重要な意思決定への女性の参加率の低さ → これにより、一部の属性の人々により重要な決定がされること
- 男女の賃金格差
- ジェンダーと社会的役割に関する偏見(差別・マイクロアグレッションなどにつながる)
- セクハラ・モラハラ問題
- 男性優遇・女性優遇制度(“ピンク税”やレディースデーなど)
日本での男女格差、ジェンダー不平等を語る際によく使われるのが、ジェンダーギャップ指数。この指数は「教育」「医療」「政治」「経済(働き方)」の4つの分野で評価をします。日本は、そのうち「政治」と「経済(働き方)」で低い評価を受けています。
政治活動においては、国会における女性議員の割合が著しく低い日本。そして企業でも幹部のほとんどは男性が占めるなど、重要な意思決定に女性が参加できる機会が少ないです。経済活動においては、賃金格差も見られます。OECDのデータによると、日本は2017年時点で、G7の中で最も「主要先進国におけるフルタイム労働者の賃金」の男女格差がある国にランクインしています。
では、女性の幸福度が高いのは?働く女性が増え、仕事によって女性も自己実現ができる時代になってきてはいますが、政治・経済活動への参加が、必ずしも多数の女性の幸福度に結び付くというわけではないのかもしれません。
そして、社会的役割について。現在でも、男だから立派に働かなくてはならない、女だから家事はすべてこなさなくてはならない…… など自分自身や周りから性別によって「すべき」行動が決められてしまったり、将来の可能性を狭められてしまったりすることもあります。これが意思に反しているのであれば、生きづらさにつながります。
ジェンダー不平等に関する国際団体(Organization)
ジェンダー平等の是正に取り組む国際的な団体としては下記が挙げられます。
ジェンダー不平等を解決するアイデアたち(Ideas for Good)
IDEAS FOR GOODでは、最先端のテクノロジーやユニークなデザインでジェンダー不平等の問題解決に取り組むプロジェクトを紹介しています。