生分解とは?
生分解とは、バクテリアや菌類などの微生物によって、有機化合物が水や二酸化炭素といった無機物(※)まで分解されること。微生物の消費活動によって物質が分解され、自然に還ることをいう。
※水、空気、鉱物、無機化合物などの物質
一番身近な生分解は、微生物の力で生ごみなどの有機物を分解・発酵させ、有機肥料をつくるコンポスト(堆肥化)である。
有機化合物の多くはいずれ生分解され土や水に還るが、分解のスピードが早いほうが環境への負荷は小さく、分解に時間がかかる物質は、廃棄問題などで環境へのリスクが大きくなるといわれている。
生分解のスピードは物質の性質によって異なるほか、生分解が土壌か水中か、酸素量、温度、湿度など様々な環境条件によって変化する。
おもに綿などの天然素材は生分解性が高く、反対に石油製プラスチックなどの化合物は生分解に膨大な時間を要する。例えば飲料用のペットボトルは、分解に約450年かかるともいわれている。
生分解性プラスチックは環境負荷が低いのか?
近年、プラスチックごみによる環境汚染問題の解決策として開発が進んでいるのが「生分解性プラスチック」だ。
生分解性プラスチックは通常のプラスチックと違い、短い期間で生分解され自然に還る点で、環境への負荷が小さいといわれている。
世界では少なくとも年間800万トンのプラスチックごみが海に流出していると推定されており、海の生態系に大きな影響を与えている。2050年にはプラスチックの量が海の魚の量を超えるともいわれており、代替素材として注目されるのが生分解性を有したプラスチックだ。
ただ生分解性プラスチックの中には、特定の環境でしか分解されずに海中に残ってしまうものや、石油由来の原料を使用しているものもあり、生分解性プラスチックであれば100%環境にやさしいという訳ではない。
自然界で生分解されない素材もある
“生分解性”を謳う素材のなかには、大規模な堆肥工場など特殊な環境でしか生分解されないものがあり、それらは「Industrial Compostable(工業的に堆肥化可能)」と呼ばれる。対して、家庭や一般的な自然環境で生分解可能なものは「Home Compostable(家庭で堆肥化可能)」という。
Industrial CompostableとHome Compostableの違い
これら2つの違いは、家庭や自然界など普遍的な環境下で生分解できるかどうかである。
Industrial Compostable(工業的に堆肥化可能)
- 分解地
堆肥工場など、特殊な環境でしか分解できないため、分解可能な場所まで輸送する必要がある。
- 分解環境
60℃以上の高温かつ高湿度な場所、そして特別な微生物環境でしか分解せず、自然環境の中では生分解されない。
- 認証マーク
アメリカ:PBI(Biogradable Products Institute)
ヨーロッパ:TUV’s OK compost INDUSTRIAL
Home Compostable(家庭で堆肥化可能)
家庭の庭、埋め立て地、その他一般的な土壌、自然環境のどこでも分解可能
- 分解環境
常温かつ、自然界の一般的な微生物環境で分解が可能
- 認証マーク
TUV OK compost HOME ロゴ(製品特有の認証番号付き)
工業的にのみ堆肥化可能な素材にも関わらず、一般に「生分解性がある」と記載され売られている商品も少なからずあり、消費者は混乱しやすいのが現状だ。
そうした混乱をふせぐため、アメリカ・カリフォルニア州では、プラスチック製品に「生分解可能」「堆肥化可能」と記載する事を原則禁止している。
生分解とバイオマスプラスチックとの違い
同じく環境へ配慮した代替素材として注目されるのがバイオマスプラスチックだが、生分解性プラスチックとは区別される素材である。
バイオマスプラスチックはトウモロコシやサトウキビなど植物由来の材料から作られ、「原料」の面で環境に配慮した素材だが、生分解されるものとされないものがある。
また逆に生分解性プラスチックも、植物由来の原料を使用したものもあれば、石油や化石資源から作られたものもある。
注目される日本の生分解性素材
使い捨て容器や漁業用品などを中心に、生分解性に着目した代替素材の開発が進むなか、日本でも新素材が生まれている。
- Bio PBS(三菱ケミカル)
三菱ケミカルが開発した生分解性プラスチック「Bio PBS」は、耐熱性の高さが注目されており、生分解性プラスチックの用途拡大に期待が高まっている。また他の生分解性プラスチックと違って、分解の際に熱を加える必要がなく、コンポストにいれるだけで常温でも分解が可能だ。
- カネカ生分解性ポリマーPHBH(カネカ)
化学メーカーのカネカが開発した「カネカ生分解性ポリマーPHBH」は、海水中でも分解される新素材のポリマーだ。植物油などのバイオマスが原料で、微生物の発酵プロセスを利用して生産されることから“微生物が作った生分解性プラスチック”ともいわれる。すでにセブン&アイホールディングスや資生堂、アシックスジャパンなどが採用している。
プラスチックに限らず、廃棄物の処理問題は今後も地球環境保護において最重要の課題である。「生分解」という自然界の循環メカニズムを上手く活用した最先端技術や新素材の開発には、今後も注目していきたい。
【参照サイト】 WWF Japan『海洋プラスチック問題について』
【参照サイト】 日本バイオプラスチック協会『生分解性プラスチックの現状と課題』
【参照サイト】 経済産業省 METI journal
【参照サイト】 三菱ケミカル BioPBS™(バイオPBS)
【参照サイト】 カネカ 生分解性ポリマー










