電子ごみのない世界へようこそ。土に還るスピーカー「Mapu Speakers」

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乾電池やコンピューターなど、さまざまな電子機器の廃棄物である、電子廃棄物(E-waste)。その発生量が、2019年に過去最多になったことはご存じだろうか。

国連が発表した「世界のE-wasteモニター2020」によると、世界の電子廃棄物の発生量は、2019年に5,360万トンにのぼったという。発生量は5年間で21%増加しており、2030年には7,400万トンに増えると予測されている(※1)

電子機器の生産や処分のあり方を見直し、電子廃棄物を減らせる、クリエイティブなアイデアはないだろうか。

ドイツのスタートアップ企業であるMapuは、粘土などの自然素材でできた、生分解性80%のスピーカー「Mapu Speakers」を開発した。配線など非生分解性の部分もあるが、ほとんどが粘土、革、コルクでできているという。

電子廃棄物の削減につながるMapu Speakersは、エコフレンドリーであるだけでなく、チリの伝統工芸産業の活性化にも一役買っている。

Mapuの共同創業者であるパブロ・オクケトー氏は、チリ生まれ。後継者のいない地元の陶芸工房が閉まっていくのを見て、「何か力になりたい」と思っていたという。

そんななか注目したのが、チリの家庭によくある、粘土でできた水瓶だった。「これでスピーカーができるかもしれない」と思い付いたオクケトー氏は、ナシミエントという地域の職人たちに声をかけ、プロトタイプを完成させた。

Mapuはその後、ポルトガルの職人たちとも仕事をするようになり、工芸品を若い人たちにとって魅力的なものにしようと奮闘している。同社は通常の場合、職人たちに平均以上の額の賃金を支払っているという。

Mapu Speakersは、社会課題とデザインをつなげる国際的なプラットフォーム「What Design Can Do」が2021年に実施した、「ノー・ウェイスト・チャレンジ」という公募プログラムで選ばれた、16の受賞プロジェクトのひとつだ。ノー・ウェイスト・チャレンジは、イケア財団がサポートしているプログラムでもある。

Mapu Speakersという名前の由来である「Mapuguaquén」は、南米に暮らすマプチェ族の言葉で、「大地の音」という意味だそうだ。大地から得られた粘土が奏でる音を、ぜひ聴いてみたい。

※1 世界のe-waste(電子ごみ)が過去最多に、5年で21%増加|国際連合大学のプレスリリース
【参照サイト】MapuSpeakers – Hand-Crafted Clay Speakers
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