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CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)とは・意味

環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 のイメージ

CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)とは?

CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)とは、日本を含む、アジア太平洋地域を中心とした国々が結んだ自由貿易協定である。正式名称は「Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership」といい、2018年12月に発効。

加盟国は、日本、オーストラリア、カナダ、メキシコ、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ベトナム、マレーシア、ペルー、ブルネイの11か国で始まり、2024年にはイギリスも加わった。

イギリスが加わったことで、その市場規模が世界のGDPの約15%を占めることとなったCPTPPは、21世紀型の経済連携協定として国際的にも注目されている。

CPTPPは何をするための協定なのか

CPTPPは、多国間で自由貿易を行える協定だ。自由貿易とは、関税や輸出入の制限といった国ごとの障壁をできるだけ減らし、モノやサービス、投資が国境を越えて自由に行き来できるようにするものである。

CPTPPは単なる自由貿易協定にとどまらず、アジア太平洋地域におけるルール主導の経済秩序形成に貢献しているとの評価もある。その理由の一つは、関税撤廃だけでなく、資源の生産国と消費国を横断して知的財産、競争政策、電子商取引、国有企業の規律といった「貿易のルール」に関する基準を定めている点にある。

一般財団法人国際貿易投資研究所の研究主幹・高橋俊樹氏は、包括的かつ高水準な協定内容が、加盟各国の制度改革を促す「外圧」としても機能していると指摘。CPTPPのような多国間協定を通じて、加盟国が国際的な共通ルールを採用することは、国内の市場構造の改善や、制度的な信頼性の向上にもつながる。これは外国からの投資を呼び込み、経済の持続的な成長にも寄与するとされている。

まとめると、CPTPPでは自由貿易以外に以下のような項目を柱としている。

  • 知的財産や電子商取引に関するルールの整備:国境を越えるデジタル経済の取引を支えるためのルールを定めている
  • 投資やサービス貿易の自由化:企業が外国に進出しやすくなるよう、投資環境の透明化と予見可能性を高めている
  • 中小企業の国際化支援:情報提供や電子的手続きの簡略化などで、中小企業の参入ハードルを下げている
  • 将来的な拡張性の確保:新しい国の加盟を受け入れる枠組みが用意されており、地域全体の経済的結びつきを強める構造となっている

TPPからCPTPPへ。きっかけは米国の離脱

もともと、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)としてスタートした。TPPは先述した11カ国に加え、米国を含めた12か国によって署名された貿易協定だったが、2017年にドナルド・トランプ大統領が就任した途端に米国が離脱を決定。

トランプ大統領は、TPPのような多国間の貿易協定は米国の製造業の雇用を奪い、国益を損なうとして批判してきた。特に、グローバル化によって苦境に陥ったラストベルト(さびついた工業地帯)の労働者を意識し、自由貿易が国内の雇用を失わせると主張。多国間協定では米国の主張が通りにくいため、米国の利益を最大限に反映できる二国間の貿易交渉を重視する姿勢を明確にしたのだ。

米国の離脱を受け、残る11か国で再交渉が行われた結果が、CPTPPという新たな協定である。以下に、TPPからCPTPPへの流れを時系列順で示す。

2016年2月:米国、日本、カナダ、オーストラリアなど12か国でTPPに署名。
2017年1月:米国のトランプ大統領が就任直後にTPPからの離脱を表明。
2017年11月:残る11か国がベトナム・ダナンでのAPEC首脳会議で協定の再構成に合意。
2018年3月:CPTPPとして署名。
2018年12月:協定発効(6か国の国内手続完了により発効条件を満たす)

TPPとCPTPPの主な違いは以下の通り。

TPP:米国を含む12か国で2016年に署名されたが、米国の離脱によって未発効に終わる。
CPTPP:TPPから米国を除いた11か国で再交渉されたもの。TPPの内容を引き継ぎながらも、一部の規定(投資家・国家間の紛争解決、知的財産権保護の強化など22項目)が一時停止している。

CPTPPは、TPPと比べて基本的な枠組みや高い自由化水準は維持しつつも、米国の要求で導入された特許や投資分野の一部規定などが凍結された形となっている。

米国が離脱しても残るCPTPPのメリット

CPTPPには、加盟国にとってさまざまなメリットがある。

  • 高水準の関税撤廃:加盟国間では、工業製品や農産品など幅広い分野で関税の撤廃・削減が行われており、貿易の活性化が期待される。日本は、CPTPP加盟国に対し、99%の関税を撤廃している
  • 実質所得の向上:OECD(経済協力開発機構)などの分析によれば、CPTPPにより加盟国の実質GDPや家計の所得が増加するとされている。OECDの試算では、日本の労働者1人当たりの実質所得が、2030年までに年490ドル(約7万円)増加する可能性がある
  • 中小企業の輸出チャンス拡大:中小企業にとっては、共通ルールによって貿易手続きが簡素化され、新興市場へのアクセスが広がる利点がある。部品や食品の輸出だけでなく、現地生産やサービス提供の形でも市場への参入がしやすくなった
  • 制度的信頼の向上:知的財産や競争政策、電子商取引などに関する高いルールが整備されることで、ビジネス環境の透明性が高まり、外資の呼び込みにもつながる。また、後述するいくつかの国が加盟を希望しており、CPTPPが世界的に信頼される貿易ルールとして位置づけられつつある

また、CPTPPは将来的な拡大を見据えた「開かれた協定」として設計されており、実際にいくつかの国々が加盟を申請・検討している。これにより、CPTPPは単なる地域連携にとどまらず、グローバルな経済ルールの形成主体として、今後も国際経済における存在感を高めていくと考えられる。

ただし、米国が懸念したように関税撤廃によって安価な輸入品が流入し、国内の特定産業、特に農業分野などが厳しい競争にさらされるという懸念は根強くある。また米国が不在の今、CPTPPの経済的効果は、当初のTPPが目指したものより限定的だと考えられる。

CPTPPに関する最新情報(2025年時点)

最近の動向として、以下のような注目すべき展開がある。

  • イギリスが正式に加盟:2024年12月、イギリスが12か国目の加盟国として加わった。アジア太平洋圏外から初の加盟となり、協定の地理的広がりが拡大している。
  • 韓国で会合開催:2025年5月には、韓国の済州島でCPTPPの部長級会合が行われ、加盟国間で今後の戦略や新規加盟国対応について協議がなされた。
  • フィリピンの加盟申請予定:2025年内に正式な加盟申請を行うと発表しており、東南アジア諸国の中でも注目が高まっている。
  • 中国・台湾・コスタリカなどの加盟申請が審査中:とくに中国は2021年に申請しており、制度の整備や加盟条件の調整が続けられている。
  • EUとの協力強化の兆し:EUも貿易枠組みの連携強化を模索しており、将来的なCPTPPとの関係が注目されている。

【参照サイト】Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership (CPTPP) | Australian Government Department of Foreign Affairs and Trade
【参照サイト】Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership (CPTPP)
【参照サイト】CPTPP – Singapore
【参照サイト】CPTPP: UK has joined Asia’s trade club but what is it?
【参照サイト】Economy | OECD
【参照サイト】環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉|外務省
【参照サイト】CPTPP|TPP等政府対策本部
【参照サイト】CPTPPとは 米国離脱後に11カ国で発効 – 日本経済新聞
【参照サイト】CPTPP発効によるメリットとは? 特恵関税適用までの流れも解説 – TR – Business Insight Japan
【参照サイト】環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉|外務省
【参照サイト】5 膠着するCPTPPをいかにして進展させるか
【参照サイト】英国がCPTPPに正式加入、日本を含む12カ国に枠組み拡大

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