ジェンダーレスとは・意味
ジェンダーレスとは?
ジェンダー(gender/社会的・文化的な性)にとらわれないこと。またいわゆる男らしさ、女らしさなどジェンダーによる区別をせず、ジェンダーの境界を無くそうという考え方。
例えば、「男の子だからブルー、女の子はピンク」というように性別による振り分けをしないことや、同じ職業の中で「看護婦・看護師」「保母・保父」といった呼び分けを無くすことなどもジェンダーレスの考え方と言える。
第二次世界対戦後、国連などが取り組んできた男女の機会均等や女性差別の撤廃を求める活動や、LGBTQをはじめとする性的マイノリティの人々など多様性を尊重する社会の広がりによって注目されている。SDGsでもターゲット5として「ジェンダー平等を実現しよう」という目標が掲げられている。
毎年、世界経済フォーラムがジェンダーギャップ指数を発表しているが、2023年のランキングで日本は125位と過去最低を更新している。これは先進国の中で最下位であり、国としてのジェンダーレスな社会へ向けた取り組みも求められている。
ジェンダフリー、ユニセックスとの違い
ジェンダーレスに似た言葉にジェンダーフリーやユニセックスがあるが、ここでは簡単にその違いを説明する。
ジェンダーフリー
誰もがジェンダーの役割に縛られずに、一人ひとりが自分の能力を生かし、自由かつ平等に行動や選択できること。ジェンダーレスが個人の性の在り方についての概念であることに対し、ジェンダーフリーは「男性は外に出て働き、女性は家事・育児に専念する」といった固定観念など、社会的な性差による差別を無くしていこうという考え方。
ユニセックス
男性、女性の間で共有される性別の概念で、主にファッションや化粧品などの商品や業界で使われることが多い。ジェンダーレスが生物学的、社会・文化的性別による差を無くそうという考えに基づいているのに対し、ユニセックスは男性、女性のどちらでも利用できるデザインやスタイルを指す。
ジェンダーレスの例
最近では「ジェンダーレス男子」「ジェンダーレス女子」などという言葉も浸透し、Z世代など若い世代の著名人やインフルエンサーなどを中心にジェンダーレスがトレンドにもなりつつある。ではどういったものが実際にジェンダーレスの概念として存在しているのか。いくつか例を紹介する。
ファッション
- 男性が女性用とされるアイテムを身につけたり、その逆で女性が男性らしいとされるアイテムなどを着こなし、自由で自分らしい表現を楽しむ
- ベージュ、カーキ、グレーなど性別を感じさせないカラーリングや中性的なデザイン
- 男性=短髪、女性=長髪というイメージにとらわれず、男性が髪を伸ばしたり、女性が髪を短めにしたりする、中性的なヘアスタイル
ジェンダーレスファッションの例
ミキモト
国内宝飾品大手のミキモトがファッションブランドの「コムデギャルソン」とのコラボレーションで、男性でも身につけられるパールのジュエリーを発表。パールはクラシカルで女性的なものという概念を覆し、性別、年齢を問わないパールの楽しみ方を提案している。
▶ミキモト
良品計画
「無印良品」が手がけるベーシックなアパレルラインの「MUJI Labo」。これまでメンズ・レディースでラインを分けていたが、2019年より年齢、性別、体型に関係なく誰もが着られる服を目指し、すべてのアイテムにおいて、デザインの共通化を図っている。
メイク
- 透明感や素肌感を出し、色味をあまり使わずにパーツを引き立たせるメイク
- ジェンダーレス用、男性用メイク用品やネイル用品などの発売
ジェンダーレスメイクの例
athletia(アスレティア)
花王グループ傘下の化粧品メーカーであるエキップが手がける化粧品ブランド。スキンケアアイテムを中心に展開している。「クリーンビューティー」を掲げ、自然・環境・社会に配慮したものづくりを行う同ブランドは、ジェンダーを問わず、自分らしく生きたいと願う人々から支持されている。
GIVENCHY
世界的なラグジュアリーブランドGIVENCHYのコスメラインで発表された、ジェンダーレスのメイクアップ製品「ミスター」シリーズ。ユニバーサルなデザインで誰にも使いやすく「自然体でありながら美しい自分でいたいと思う気持ち」を叶え、ナチュラルな美しさを引き出すアイテムを販売している。
学校
- 男女で同じデザインのジャケットとスラックス
- ジャケット・ボトム・ネクタイ・リボンなど、組み合わせを自由に選択できるアイテムの採用
- 露出を控え、体のラインを強調しない水着
- ランドセルのカラーバリエーション
学校におけるジェンダーレスの例
土屋鞄製造所
工房系ランドセルメーカーの老舗土屋鞄製造所が販売するジェンダーレスのランドセルブランド「RECO」。年々色のバリエーションに対するニーズが増え、現在では40色以上のカラーを展開。自由な色選びができることを謳い、デザインも装飾性を持たせず、中性的でモダンなイメージに仕上げている。同社のランドセルの中でも全体の3割以上の売上を占めており、青やネイビー、茶・キャメルという飽きのこない落ち着いたカラーに人気が集まっている。
▶TSUCHIYA RANDOSERU「RECOプレミアム」シリーズ
ジェンダーレス社会を実現するには
ジェンダーにとらわれない社会をつくろうという動きがありつつも、まだそれぞれの多様性がすべて認められているとは言えない現代。ジェンダーレスな社会を実現するためには、どういった取り組みや行動が必要なのだろうか?
- 性別に対する固定観念を無くす
- 性の在り方やセクシュアリティに関する教育
- パートナー証明の発行
- ジェンダーを意識しないものや、セクシュアルマイノリティの人々に配慮した商品やサービスの開発
- 雇用形態や働き方の見直し
- 選択的夫婦別姓
実際に、政府や自治体、企業などもこうした取り組みを始めるところが増えているが、まずは私たち個人が、正しい知識を知り、ジェンダーに対するバイアスを無くし、お互いを認め受け入れるという土壌を作っていくことが大切だろう。ジェンダー平等の先進国であるアイスランドやノルウェー、フィンランドなどの事例を参考にするのも良いかもしれない。究極的にはジェンダーレスという概念すらなくなる社会が本当のジェンダーレスではないだろうか?