Inner Development Goals(IDGs)とは?
Inner Development Goals(IDGs)とは、Sustainable Development Goals(SDGs、持続可能な開発目標)実現のために必要な、個々人の内面の成長目標を意味する。持続可能な社会の実現を目指す取り組みであり、すべての人にとって持続可能で公平な、かつ繁栄した未来を築くために不可欠な人間の能力、資質、スキルといった「内面」を育成するための枠組みだ。
IDGsの背景
IDGsは、気候変動、不平等、社会不安など、現代の多面的な問題に取り組むには、外的な解決策だけでは不十分であるという認識の高まりを受けて構成された。
2015年の国連サミットで、2030年までの目標としてSDGsが設定された。SDGsには持続可能性に関連する17の目標と169のターゲットが設定されているが、達成には多くの課題があり、進展は国や地域によって異なる。
これまでSDGsでは、各目標に対する実施方法や対策についての議論はなされてきたが、それを実践する人の育成やどのような能力が必要になるのかについては、十分に焦点が当てられていなかった面もある。
そんな中、「SDGsの達成にはそれを担う人間の心や意識の発達が必要なのではないか」といった、内面の成長の必要性が議論されるようになる。持続可能な解決策を実行するためには、共感力や回復力、批判的思考力といった内面的な能力が不可欠であるという認識が強まったのだ。この認識がIDGsの発展につながった。
IDGsは心理学、神経科学、哲学などさまざまな学問分野から、内なる成長のための総合的な枠組みを提供している。
SDGsとの違い
先述した通り、SDGsでは持続可能性に関連する17の目標と169のターゲットが設定されている。これらの目標は定量化が可能だ。
一方でIDGsは、SDGsを支えるための内面的な成長に焦点を当てたイニシアティブであり、私たちの考え方や行動のあり方を変え、科学に基づいた能力や資質を身につけ、目的意識を持って持続可能で生産的な生活を送れるようにすることが目的だ。
そんなIDGsは、持続可能な開発には個人の内面的な成長が不可欠であるという考えに基づいた5つのカテゴリーとそれらのサブカテゴリーに当たる23のターゲットスキルが設定されている。これらは内面的な資質や個人の成長に重点を置く。
SDGsの定量化可能な目標と違い、重点が置かれている「内面の成長」が目に見えるものではないことにもSDGsとの違いがある。
IDGs、5つのカテゴリー
内なる成長のための総合的な枠組みを提供するIDGsでは、以下の5つのカテゴリーが設定され、それぞれ補足となる言葉が添えられている。
- Being – Relationship to Self(自分のあり方 – 自己との関係性)
- Thinking – Cognitive Skill(考える – 認知スキル)
- Relating – Caring for Others and the World(つながりを意識する – 他者や世界への思いやり)
- Collaborating – Social Skills(協働する – 社会的スキル)
- Acting – Driving Change(行動する – 変化の推進)
Beingでは、マインドフルネスや情動のコントロールといった資質を培うことに重点を置く。これらの特質を身につけることで、複雑な現代生活の中でも、穏やかで明晰な感覚を保つことができる。
Thinkingでは、批判的思考や創造性、システム思考が中心となる。相互のつながりを理解し、革新的で全体的な解決策をもって問題に取り組むことの重要性を強調している。
Relatingでは、共感、思いやり、効果的なコミュニケーションの重要性を強調する。共感しあえる強い人間関係の構築は、社会の結束と相互理解を育むからだ。
Collaboratingでは、チームワーク、信頼、そして共創が重視される。コラボレーションのスキルを高めることで、集団的な取り組みがより効果的で包括的なものになる。
Actingでは、積極的で倫理的な行動を奨励する。意味のある変化を推進する上での勇気、忍耐力、誠実さの重要性を強調する。
これら5つのカテゴリーのほか、それぞれのカテゴリーに関連した人間の内面の成長と発達に関するスキル(23のターゲットスキル)がある。
2021年5月、世界に向けてオープンソースとして公開されたIDGsの公式ウェブサイトでは、IDGsについて世界各国の主要な言語で閲覧することができる。23のターゲットスキルについては、日本語版のPDF資料を参照していただきたい。
内面の変革が世界の変革につながる
IDGsは、SDGsをより身近なレベルで考え実践するために、自分自身の行動を通じて、どのように社会に貢献できるかを具体化するための枠組みだ。
IDGsが着目するのは個人の「内面」だが、その影響は個人的なものに留まらない。IDGsの目標に取り組むことで、個人レベルでは自己認識や感情的な回復力、目的意識が高まることが多いが、集団レベルで取り組めば、協力や共感、持続可能な行動を促進することが多い。
社会的な課題に対する意識を高め、行動を促すために重要な考え方を示すIDGsは、個人の成長を社会と環境の持続可能性というより広い目的と一致させる。IDGsは自分自身を変革することが世界の変革につながることを思い出させるものともいえよう。
なお、オープンソースとして公開されたIDGsのウェブサイトは、IDGsの概要について簡潔にまとめた動画(約5分)も公開している。
【参照サイト】What are the Inner Development Goals (IDGs)? — Turning Ground
【参照サイト】Beyond Action: The Role of Inner Development Goals for a Sustainable Future | UN SDG:Learn
【参照サイト】Framework – Inner Development Goals.
【参照サイト】From SDGs to IDGs – how many goals will it take?
【参照サイト】What are the Inner Development Goals (IDGs)? – SAMU
参考文献:新井範子、鬼木基行、佐藤彰、新宅剛、水野みち著『IDGs 変容する組織』(経済法令研究会、2023年)
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