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Nature-based Solutions(NbS)とは・意味

森にいる女性

Nature-based Solutions(NbS)とは?

Nature-based solutions(自然を基盤とした解決策)とは、社会課題に効果的かつ順応的に対処し、人間の幸福および生物多様性による恩恵を同時にもたらす、自然及び人為的に改変された生態系の保護、持続可能な管理、回復のため行動を指す。

自然の力を活用して生態系と人々に恩恵をもたらしながら社会的な課題を解決すること、つまり、人と自然にとってWin-Winの関係を目指すという点が特徴的な概念となっている。

NbSを提唱する国際自然保護連合(IUCN)は、2020年に初のグローバル標準「IUCN Global Standard for Nature-based Solutions」を発表し、政府や民間企業、開発援助機関や金融機関、NGOによるNbSの取組みを推進している。

また、NbSを推進する欧州委員会でも、2021年にNbSのインパクトを評価するための実務家向けハンドブックを公開している。

NbSのアプローチ

NbSのアプローチとして、生態系の保護、持続可能な管理、回復の観点から様々な方法があり、IUCNではそれらを以下のように分類している。

自然を基盤とした解決策(NbS)に関する国際的議論

出典:自然を基盤とした解決策(NbS)に関する国際的議論

WWFによると、NbSアプロ―チのベースは、生態系が健全で適切に管理されていれば、人間にとって不可欠な恩恵やサービス──例えば、温室効果ガスの排出削減、安全な水資源の確保、安全な空気の確保、食料安全保障の向上など──を提供できるという考え方であるという。

NbSのグローバル標準

2020年に発表されたIUCNのグローバル標準は、8つの基準および28の指標から構成されている。

基準1は、NbSが対応する社会課題の特定に焦点を当てており、基準2は、問題の規模に合わせた解決策のデザインを手引きする。基準3、4、5は、持続可能な開発の三本の柱、すなわち、環境的な持続可能性、経済的な実行可能性、社会的公平性、に対応している。基準6では、トレードオフと、短期的および長期的利得の達成のためになされるべき選択の比較考量、またそのようなトレードオフを決定するための、透明性が高く公平で包括的なプロセスの存在の保証に取り組む。基準7は順応的管理の必要性に対応し、最後の基準8では、主流化と持続可能性に取り組む内容となっている。

NbSの真の潜在能力は、長期的かつ大規模な実施を通して実現する。

自然に根ざした解決策に関するIUCN世界標準

出典:自然に根ざした解決策に関するIUCN世界標準

各基準ごとに取り組みの指標とガイダンスが提示され、ケーススタディも紹介されるなど、具体的な取り組みに活かしやすい内容となっている。基準ごとに設定されている指標は以下のとおりである。

基準1:NbSは効果的に社会課題に取り組む
【指標】
1 権利者や受益者にとって最も切迫した社会課題が優先されている
2 取り組む社会課題は、明確に理解され、文書化されている
3 NbSから生じる人間の幸福への結果が特定され、基準化され、定期的に評価されている

基準2:NbSのデザインは規模によって方向付けられる
【指標】
1 NbSのデザインは、経済、社会、そして、生態系間の相互作用を認識し、それらに対応するものである
2 NbSのデザインは他の補完的な取り組みと統合され、セクター横断的なシナジーを求めるものである
3 NbSのデザインには、取り組みの場所を超えたリスクの特定と管理が組み込まれている

基準3:NbSは、生物多様性、および、生態系の健全性に純便益をもたらす
【指標】
1 NbS行動は、生態系の現状、そして、劣悪化や喪失を招く主要因に関するエビデンスに基づく評価に直接的に対応するものでなくてはならない
2 明確で測定可能な生物多様性の保護に関する結果が特定、基準化され、定期的に評価されている
3 モニタリングには、NbSから生じる予期せぬ自然への悪影響の定期的な評価が含まれている
4 生態系の健全性および連続性を高める機会が特定され、NbS戦略に取り込まれている

基準4:NbSは経済的に実行可能である
【指標】
1 NbSに関連する直接的および間接的な便益と費用、負担者と受益者が特定され、文書化されている
2 関連法規制および補助金を含む、NbSの選択を裏付ける費用対効果の調査が提供されている
3 関連する外部性を考慮することにより、利用可能な代替的解決策に対するNbSデザインの有効性が正当化される
4 NbSデザインは、市場ベース、公共セクター、自発的コミットメントおよび規制コンプライアンスを支持するためのアクションなど、資源調達オプションのポートフォリオを考慮する

基準5:NbSは、包括的で、透明性が高く、力を与えていくガバナンスプロセスに基づいている
【指標】
1 取り組みが開始されるまでに、定義され、十分に合意されたフィードバックおよび苦情解決メカニズムが全ての利害関係者に対して整備されている
2 参画は、性別、年齢、社会的地位にかかわらず、相互尊重と平等に基づくものである。そして、先住民族の事前の自由なインフォームド・コンセント(以下FPIC)の権利を支持するものである
3 直接的、または、間接的にNbSにより影響を受ける利害関係者が特定され、NbS活動の全てのプロセスに参画している
4 意思決定プロセスにおいては、参画する全ての影響を受ける利害関係者の権利と利害が文書化、対応されている
5 NbSの規模が行政界を超える場合、影響を受ける行政区域の利害関係者の共同意思決定を可能にするメカニズムが確立されている

基準6:NbSは、主目的の達成と複数便益の継続的な提供の間のトレードオフを公平に比較考量する
【指標】
1 取り組みに関連するトレードオフの潜在的費用と便益が、明確に認識され、予防措置および適切な是正措置の指針となっている
2 様々な利害関係者の責任とともに、土地および資源の権利、利用、アクセスが認識され、尊重されている
3 相互合意されたトレードオフの限界が尊重され、NbS全体を不安定化しないよう、確立された予防措置が定期的にレビューされる

基準7:NbSはエビデンスに基づき、順応的に管理される
【指標】
1 NbS戦略が設定され、定期的なモニタリングおよび取り組みの評価の基礎として用いられている
2 モニタリングおよび評価計画は、取り組みのライフサイクルを通して、策定、実施される
3 順応的管理を可能にする反復学習の枠組みが、取り組みのライフサイクルを通して採用されている

基準8:NbSは、持続可能で、適切な法域の文脈の中で主流化される
【指標】
1 NbSのデザイン、実施、そして、得られた教訓は、根本的変化をもたらすよう共有されている
2 NbSは、その採用と主流化を支援するため、促進的政策や規制の枠組みを方向付け、向上させる
3 NbSは、人間の幸福、気候変動、生物多様性、先住民族の権利に関する国際連合宣言(UNDRIP)を含む人権に関する国家および全世界の目標に資する

NbSの課題と展望

NbSは、ネイチャー・ポジティブへの変革に向けたアプローチとして注目されている一方で、資金の拡大が課題となっている。例えば、クライメート・ファイナンスには莫大な公的資金および民間資金が流入している一方で、NbSへの資金流入は約5分の1程度であり、特に民間資金の流入は非常に限られた規模に留まっているのが現状だ。

2022年にはCOP15でポスト2020生物多様性フレームワークが採択され、2023年にはTNFDのフレームワークが発表される予定もあり、ネット・ゼロの次の潮流として、ネイチャー・ポジティブの波が押し寄せると言われている。このようななか、NbSへの資金の拡大が期待される。

【参照サイト】IUCN, Nature-based Solutions
【参照サイト】自然に根ざした解決策に 関するIUCN世界標準
【参照サイト】自然を基盤とした解決策(NbS) に関する国際的議論
【参照サイト】WHAT ARE NATURE-BASED SOLUTIONS AND HOW CAN THEY HELP US ADDRESS THE CLIMATE CRISIS?




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