世界の製品が生まれ、還ってくる国。インドが描く重要鉱物の確保戦略とは【WCEF2026レポ#2】

2026.10.13

西崎こずえ

「日本は、少子高齢化にどう向き合うつもりなのですか。インドとは真逆の問題です。また、ジェンダーギャップも、まだ大きいですよね」

インド・グジャラート州で開催されたWorld Circular Economy Forum 2026(WCEF2026)の会期中、筆者は現地の参加者からこう問われた。日本では、人手不足を前提に、いかに省人化し、既存のインフラや製品を長く使うかが議論される。一方、インドでは、増え続ける若年人口に十分な仕事をどうつくるかが課題になる。「人が足りない」という日本の常識は、ここでは必ずしも通用しない。

もちろん、人口が多いことと、誰もが働く機会を得られることは同じではない。インド政府統計によると、2025年12月の15歳以上の女性の労働力率は35.3%だった(※1)。上昇傾向にあるとはいえ、ジェンダーによる就業機会の差は依然として大きい。豊富な労働力を前提にできる国でも、包摂的で安全な仕事をどうつくるかは問われる。それは、サーキュラーエコノミーの中心的な課題でもある。

こうした違いを前にすると、インドを「高度成長期以前の日本」として理解することの限界が見えてくる。インドは、先進国が経験した工業化を時間差で追いかけているだけではない。世界の製造拠点であり、巨大な消費市場であり、国外で使われた衣類や船舶が最後にたどり着く場所でもある。同時に、脱炭素化とデジタル化に欠かせない重要鉱物を、国内採掘、海外権益、リサイクルのすべてから確保しようとしている。

前編では、WCEF2026で目立った三つの議論を取り上げた。DPP(デジタル・プロダクト・パスポート)、第二世代EPR(拡大生産者責任)、そして重要原材料である。そこから、世界のサーキュラーエコノミーが「廃棄物処理」から「製品と資源の統治」へ移りつつあることを紹介した。

本記事では、その開催国インドに焦点を当てる。世界でつくられつつある循環のルールは、この国の産業、雇用、暮らしに何をもたらすのか。そしてインドは、資源消費を拡大させた先進国とは異なる発展経路を選べるのだろうか。

これから「つくる」国だからこそ、選べる道がある

インドと日本の違いは、人口だけではない。これから建設される都市とインフラの規模が大きく異なる。

世界銀行によれば、インドの都市人口は2020年の約4億8,000万人から、2050年には約9億5,100万人へ、ほぼ倍増する見通しだ(※2)。2050年に必要となる都市インフラ、建物、サービスの半分以上は、まだつくられていない。今後建設される住宅、道路、交通、水道、廃棄物処理施設を、資源多消費型の設計にするのか。それとも、長寿命化、再使用、部材回収を前提にするのか。インドには、巨大な物質ストックが固定される前に選択できる余地がある。

日本や欧州は、すでに大量の建物やインフラを抱え、それらを後から改修しなければならない。インドの条件は、これとは異なる。「発展してから循環へ移行する」のではなく、発展の過程そのものに循環を組み込める可能性がある。

しかし、可能性は自動的に実現するわけではない。所得向上、都市化、中間層の拡大は、住宅、自動車、家電、衣類、エネルギーの需要を押し上げる。必要なインフラを整備しながら、資源利用と環境影響を経済成長から切り離さなければならない。先進国もまだ実現できていない課題である。

WCEF2026で、グジャラート州政府のマムタ・ヴェルマ氏は、インド側から見た循環経済の意味をこう語った。

「インドにとってサーキュラーエコノミーは、単なる環境上の要請ではありません。競争力、資源戦略、イノベーション主導の成長、持続可能な発展へ向かう戦略的な道筋です。循環性は廃棄物管理やリサイクルだけではなく、私たちがどう消費し、生産し、革新し、成長するかを再定義し得る新たな開発の枠組みなのです」

ここでの「循環」は、消費を抑えるための議論というより、成長のあり方をめぐる議論だ。つまり、インドのサーキュラーエコノミーは「先進国の制度を導入するだけ」ではなく、これからの成長を、どのような産業構造で実現するのかを再設計する挑戦なのだ。

世界の製造拠点であり、同時に「使い終えたもの」が集まる場所

インドの立ち位置を象徴する産業の一つが、繊維・アパレルである。同産業は4,500万人を超える人々を直接雇用し、農業に次ぐ規模の雇用を生み出している。綿花などの原料から糸、生地、縫製、輸出まで、幅広い工程を国内に持つ。インド政府によると、2025~26年度の繊維産業の規模は約1,900億米ドルに達した(※3)。

しかしインドは、衣類を世界へ送り出すだけではない。世界で使われた衣類を受け入れ、再び糸や毛布へ戻す場所でもある。

北部ハリヤナ州のパーニーパットは、世界各地から集まる古着や繊維くずを選別・反毛し、再生糸や毛布へ加工する一大集積地だ。学術研究によれば、米国、カナダ、韓国、アラブ首長国連邦、欧州各国などから輸入された使用済み繊維が、グジャラート州のカンドラ港などを経由して運び込まれる。インドでは古着としての輸入が制限されてきたため、衣類は裁断された「繊維原料」として入ってくる場合も多い。

そこでは、廃棄物が雇用と原料になる。色ごとに手作業で分ければ、再染色を省ける。ボタンやファスナーを外し、単一素材に近い繊維を選べば、機械的にほぐして再び糸にできる。高度な自動選別設備があるわけではない。それでも、素材を見分ける人の知識と安価な労働力によって、世界の繊維循環の一部が成り立ってきた。

同時に、低賃金、粉じんや化学物質への曝露、混紡素材の処理困難、再利用できない残渣といった負担も現地に残る。衣類を大量消費する国が得る便利さと、使用後の処理コストは、同じ場所にはない。

開催地グジャラート州のアラン・ソシヤには、世界最大級の船舶リサイクル産業がある。インド政府によると、2025年にインドは世界の船舶リサイクル量の35.4%を占め、その98%をアラン・ソシヤが担った。船から回収される鉄や機器は国内産業へ戻り、天然資源の採掘を抑える(※4)。一方、解体現場では、労働安全やアスベスト・油などの有害物質、環境管理が長年の課題となってきた。

パーニーパットとアラン・ソシヤが示すのは、インドが単なる「世界のごみ捨て場」でも、模範的な「資源循環国」でもないということだ。世界から流れ着いた使用済み製品を、労働と技術によって再び資源へ変える場所だ。そして、その価値とリスクの双方を引き受けている。

WCEF会場内では例年展示会も開催される。電子廃棄物(e-waste)とリチウムイオン電池のリサイクルを手がける、インドのリサイクル老舗Attero(アテロ・リサイクリング)も出展していた。(写真は筆者撮影)

インフォーマル経済は、なくすべき障害か、すでにある循環インフラか

インドの街を歩けば、壊れた家電や靴を修理する小さな店、古紙や金属、プラスチックを買い取るカバディワラ、家庭から再資源化できるものを集めるウェイストピッカーに出会う。所得水準や制度の不足から生まれた面もある。それでも、ものを長く使い、素材の価値を細かく見分け、再び市場へ戻す仕組みが、生活と商売のなかに存在している。

UNDPは、インドで廃棄物の回収・選別を担う「Safai Sathi(サファイ・サティ、廃棄物回収者)」が約400万人いると推計する(※5)。それでも、彼らが古紙、プラスチック、金属などを拾い、選別し、仲買人やリサイクラーへ渡していることは確かだ。それによって、自治体が回収しきれない資源が経済へ戻されている。

電子廃棄物では、この存在感がさらに大きい。NITI Aayogが2026年に公表した報告書によれば、インドで発生する電子廃棄物の約78%をインフォーマルセクターが処理している。広い回収網を持つ一方、手作業による破砕や不適切な薬品処理は、労働者の健康と土壌・水質に深刻な危険をもたらす。同報告書は、インフォーマルな処理の資源回収率を10〜20%、正式なリサイクル施設を95〜97%と推計している(※6)。

だからといって、インフォーマルな担い手を排除し、設備だけを近代化すればよいわけではない。回収の「最後の1キロメートル」を担うネットワークが失われれば、正式な施設へ届く材料そのものが減ってしまう。複雑な登録書類、土地や資金の要件、デジタルシステムへのアクセスが参入障壁になることもある。そうなれば制度は、循環を担ってきた人々を、循環の外へ追い出すことになる。

重要なのは、インフォーマルな状態を美化することでも、強制的に「正式化」することでもない。既存の回収知識とネットワークを認めたうえで、安全な設備、適正な価格、社会保障、技能認証、協同組合化などへつなぐことだ。

インドの循環経済は、何もない場所に新しいリサイクル産業をつくる話ではない。循環はすでにある。ただ、制度上は見えにくい。それを誰の権利も奪わずに、安全で公正なものへ変えられるかという話なのである。

EPRとDPP。制度による「見える化」は誰のためか

インド政府は、サーキュラーエコノミーを一つの包括法で進めるというより、産業・廃棄物分野ごとの行動計画と規則を積み重ねている。NITI Aayogには2022年にCircular Economy Cellが設置され、10分野の行動計画が関係省庁によって実施されている。

政策の中心にあるのがEPRである。その実務を担うのは、インド環境・森林・気候変動省(MoEFCC)傘下の中央公害管理委員会(Central Pollution Control Board:CPCB)だ。CPCBは、1974年の水質汚濁防止法に基づいて設置された法定機関だ。その後、大気汚染や廃棄物管理へと所管を広げてきた。

MoEFCCが廃棄物管理規則を制定し、CPCBが全国共通のEPRポータル、事業者登録、EPR証書、技術指針、義務達成状況を管理する。各地域では、州公害管理委員会が、リサイクラーや処理施設の検査・監督を担う。生産者やブランドは州境を越えて製品を販売し、EPR証書も全国で取引される。そのため、中央に一元的な管理主体が必要になる。

この制度配置は、インドのEPRの成り立ちを物語る。製品設計や産業転換の政策というより、まず廃棄物と汚染を管理する環境行政から発展してきたのだ。実際、2022年以降に整備された市場メカニズム型のEPRは、プラスチック包装、電子廃棄物、電池、廃タイヤ、廃油の5分野を中心に展開されている。生産者や輸入者、ブランドオーナーは、再資源化の義務量を果たし、登録リサイクラーが発行する証書を取得する。

制度化によって、これまで見えにくかった材料フローに資金が入り、リサイクルへの需要が生まれる。一方で、証書上の達成と、現場での適正処理が同じとは限らない。生産者が支払った資金がどの地域の回収や設備、安全な労働に使われたのか。インフォーマルな回収者へ価値が戻ったのか。製品が中古品として国外へ出た場合、最終的な処理国へ資金が移るのか。前編で紹介した「EPRは製品を追いかけなければならない」という指摘は、受け手であるインドにとって切実な問題だ。

さらに、回収量と証書を管理するだけでは、製品の耐久性、修理可能性、素材選択まで変える「第二世代EPR」には届かない。上流の設計へ踏み込むには、CPCBとMoEFCCだけでなく、産業、鉱山、繊維、電子・IT、商務などを担う省庁との連携が必要になる。公害・廃棄物行政として始まったEPRを、製品・産業政策へどう接続するかが、インドの次の課題である。

DPPも同様だ。EUで導入が進むDPPは、素材構成、原産地、修理方法、環境性能などを製品にひもづける。インドは繊維だけで4,500万人以上を雇用し、EUや米国を主要な輸出先とする。この国にとって、DPPは遠い地域の規制ではない。対応できれば、リサイクル材の含有量や環境配慮を証明し、市場アクセスや信頼につなげられる。対応できなければ、輸出市場から排除される新たな障壁になり得る。

筆者が参加したWCEFのDPPワークショップでは、「企業のデータは国境を超えると途切れてしまう」「何のデータを求められるか分からないため、準備できない」といった声が聞かれた。大企業がDPPを導入できても、それだけでは足りない。素材供給者、縫製工場、回収者、リサイクラーが異なるシステムを使い、入力する利益も感じられなければ、データは最後までつながらない。

インドにとってデジタル化の焦点は、制度に参加していない人を監視し、排除することではない。製品とともに国境を越える情報を、修理、再使用、資源回収を担う人が実際に使える形にすること。そして、資金と責任も同じ経路をたどっているかを検証できるようにすることだ。

インドスーパーマーケット大手Dマートの店内。所狭しと製品が並ぶ。(写真は筆者撮影)

重要鉱物を「採る・押さえる・取り戻す」国家戦略

インドのサーキュラーエコノミーが、環境政策から産業政策へ移っていることを最もよく示すのが、重要鉱物である。

インド政府は2023年、経済的重要性と供給リスクから30の重要鉱物を特定し、そのうち24鉱物を鉱山・鉱物法上の「重要・戦略鉱物」に位置づけた。2025年1月には「国家重要鉱物ミッション」を承認した。7年間で、政府支出1,630億ルピー(約2,670億円)と、国営企業などによる1,800億ルピー(約2,950億円)の投資を見込む。

その射程はリサイクルだけではない。国内での探査・採掘、鉱滓やフライアッシュなどからの回収、精製・加工拠点の整備、国営・民間企業による海外鉱山権益の取得、そして使用済み製品からの再資源化を、一つの供給網戦略として束ねている。インドは鉱物を国内で「採る」だけでなく、国外で「押さえ」、廃棄物から「取り戻す」体制をつくろうとしている。

2025年9月には、150億ルピー規模のリサイクル奨励制度も承認した。電子廃棄物、使用済みリチウムイオン電池、廃車部品などから、重要鉱物を分離・生産するための制度だ。政府は年間27万トンの原料処理能力、年間4万トンの重要鉱物生産、800億ルピー規模の投資を目標に掲げる。また、重要鉱物を含む廃棄物やスクラップへの関税を撤廃し、国内リサイクル産業へ原料を呼び込もうとしている。

ここに、インドが世界の廃棄物の「行き先」であることの別の意味が生まれる。電子機器、電池、自動車、船舶は、処理コストを伴う廃棄物であると同時に、銅、ニッケル、コバルト、リチウム、レアアースなどを含む「地上資源」でもある。廃棄物の受け入れは、環境負荷の押しつけにも、戦略資源の獲得にもなり得る。

重要なのは、その資源を誰が、どのような条件で回収し、価値を得るかである。安価な労働力と緩い環境管理によって競争力を生むなら、循環は新たな採掘現場を都市のなかにつくるだけだ。一方で、安全な設備と技能に投資し、回収した資源を国内の製造業へ戻す。そこで生まれた価値を、労働者や地域へ還元する。それができれば、都市鉱山は資源安全保障と公正な雇用を結ぶ可能性を持つ。

グジャラートで重なる、インドの可能性と矛盾

WCEF2026の開催地グジャラート州は、こうしたインドの立ち位置が凝縮された場所だった。

同州は化学、石油化学、繊維、セラミックス、製薬などの産業集積を持ち、インドの商品輸出の約4分の1を担う。州政府は、循環を産業政策として進めている。工業団地のなかで一つの工程の廃棄物を別の工程の原料にする産業共生、処理水の再利用、ゼロ排水、溶剤回収、セメント工場での廃棄物利用、繊維・電子廃棄物のリサイクルなどだ。

ヴェルマ氏は、州の考え方をこう説明した。

「グジャラート州では、循環性を制約ではなく、成長を支え続けるための道筋と捉えています。焦点は、廃棄物から価値を生み、資源生産性を高めることです。一つの工程から出る廃棄物が、別のバリューチェーンの資源になるよう、産業エコシステム全体をつくろうとしています」

州は、リサイクルを業種横断の重点産業に指定し、設備投資、電力、金利への補助を用意している。半導体やEV電池の産業と接続する重要鉱物の加工拠点も構想する。そのすぐ近くには、世界の廃船から鉄を回収するアランがあり、カンドラ港には国外の使用済み繊維が到着する。

しかし、産業集積を循環させることと、地域全体が持続可能になることは同じではない。大量生産が拡大すれば、再資源化率が上がっても、エネルギー、水、原料の総需要は増え得る。廃棄物が「原料」と呼び替えられても、有害物質や低賃金労働が消えるわけではない。重要鉱物を国内にとどめる政策は、資源安全保障を強める一方、国境を越えた資源の囲い込みを激化させる可能性もある。

グジャラートは、インドの成功例であると同時に、循環経済が直面する矛盾を映す場所でもある。成長を続けながら、本当に資源依存を減らせるのか。世界から集めた二次資源の価値を、処理を担う人や地域に還元できるのか。制度とデータによる近代化のなかに、既存の小規模な循環を残せるのか。

ガンディーナガルの街を抜けると突如出現する、真新しい高層ビルが並ぶGujarat International Finance Tec-City、通称GIFTシティーの一角(写真は筆者撮影)

「追いつく」のではなく、異なる発展経路を選べるか

インドは、先進国がたどった大量生産・大量消費・大量廃棄の道を、そのまま後から進んでいるわけではない。グローバルなサプライチェーン、デジタル規制、資源をめぐる地政学、気候危機が同時進行する時代に、都市と産業の大部分をこれからつくろうとしている。

そこには大きな機会がある。建物や製品が線形型の設計で固定される前に、修理、再使用、分解、素材回収を組み込める。世界の製造拠点として、DPPやエコデザインを単なる輸出規制対応ではなく、自国の産業競争力へ変えられる。廃棄物から重要鉱物を回収し、輸入依存を減らすこともできる。

同時に、危うさもある。デジタル化されたEPRが、証書と大規模施設だけを評価すれば、既存の回収者は排除される。DPPが欧州企業の必要な情報だけを集めるなら、データ入力の費用はインド側が負い、価値は国外に残る。国外の廃棄物を資源として引き受けても、処理費用と健康被害だけが地域に残るかもしれない。

前編で見たように、世界のサーキュラーエコノミーは、DPP、第二世代EPR、重要原材料政策によって、製品と資源のルールを書き換え始めている。インドが示しているのは、そのルールの成否は、技術の新しさだけでは決まらないということだ。すでに循環を担っている人々を参加者として認め、製品とともに情報、責任、資金を国境の先まで届けられるか。その設計にかかっている。

インドの問いは、「いつ先進国に追いつくのか」ではない。先進国とは異なる人口、産業、労働、資源の条件から、どのような豊かさをつくるのか。そして、物量を増やすことと豊かになることを、どこまで切り離せるのか。WCEF2026がインドで開催された意味も、そこにあるだろう。その選択はインドだけのものではない。これから都市化と産業化を進める、世界の多くの地域にとっての選択でもあるのだ。

編集後記

ガンディーナガルは、インドのほかの都市と比べて道幅が広く、緑の多い都市だといわれる。それでも、今回が初めてのインド滞在となった筆者は、街にあふれるエネルギーと人の多さ、そして圧倒的なモノやごみの量に驚かされた。

「日本にも、かつてこのような時代があったのだろうか」と考えた。しかし、高度経済成長期の日本と、現在のインドを単純に重ねることはできない。グローバル化したサプライチェーン、加速する資本主義とデジタル化、気候危機、資源をめぐる地政学的な競争。今日のインドは、これらが同時に進むなかで、都市化と産業化、経済発展を経験している。

筆者はこれまで、欧州や日本を中心にサーキュラーエコノミーに携わってきた。しかし現地では、先進国だけで循環のルールを議論することの一方的さも、改めて感じた。製品がつくられる国、消費される国、そして使用済み製品や廃棄物が行き着く国が同じテーブルにつかなければ、資源循環のループは閉じない。先進国で設計されたEPRやDPPも、製品の生産や回収を担う人々が参加できなければ、循環を促す仕組みではなく、新たな負担や障壁になり得る。

世界各国が重要原材料の確保と囲い込みを進めるいま、異なる立場のプレイヤーが一堂に会する機会は、これまで以上に重要性を増している。国や地域だけでなく、政府、企業、リサイクラー、中小事業者、インフォーマルワーカーなどが集まり、資源だけでなく費用、情報、責任、価値をどう分かち合うかを議論する場だ。WCEF2026の意義は、その議論をインドで行ったこと自体にもあったのだろう。

次回のWCEF2027は、2027年6月8日から11日まで、ニューヨークで開催される。共同主催は、コロンビア大学気候大学院、ニューヨーク大学(NYU)、そしてWCEF運営のフィンランドイノベーション基金Sitraだ。金融機関は以前からサーキュラーエコノミーの議論に関わってきたが、WCEF2026では、その存在感が一段と高まっていた。資源調達の持続可能性が不透明な従来型ビジネスを、供給途絶や価格変動などのリスクにさらされる事業として捉え直し、循環性を投融資や保険の判断に組み込もうとする動きが、より明確になってきたのだ。

しかし、この移行を担うのは金融機関だけではない。大学や研究機関、政府、企業、リサイクラー、市民社会など、多様な主体の知見と行動をつなぐ必要がある。インドで生産や回収を担う側から資源循環の課題が示された次に、世界の学術、ビジネス、政策、金融が交わるニューヨークへ議論が引き継がれる。その地に異なる立場の人々が集う意義は大きい。

※1 Ministry of Statistics and Programme Implementation, Monthly Bulletin, Periodic Labour Force Survey, December 2025
※2 World Bank, “India has a critical opportunity to drive resilient urban development”
※3 Press Information Bureau, Government of India, “India’s Textile Exports Register Growth of 2.1% in FY 2025–26”
※4 Press Information Bureau, Government of India, “Year End Review 2024 of Ministry of Textiles”
※5 UNDP India, “Safer and Stronger Together: Helping Safai Sathis work with dignity”
※6 NITI Aayog, Advancing Circular Economy of Waste Electronic and Electrical Equipment (E-waste) and Lithium-Ion Batteries in India

【参照サイト】World Bank, Towards Resilient and Prosperous Cities in India
【参照サイト】Kapoor and Khare, “The Afterlife of Discarded Woollens: Who Is Recycling My Clothes?”
【参照サイト】Shirvanimoghaddam et al., “Analysing the Barriers Involved in Recycling the Textile Waste in India Using Fuzzy DEMATEL,” Sustainability
【参照サイト】Press Information Bureau, Government of India, “Ship Recycling at Alang-Sosiya”
【参照サイト】UNCTAD, Review of Maritime Transport 2025
【参照サイト】UNDP, “Who picks (y)our waste? Evidence-based observations and policy priorities for equitable development”
【参照サイト】International Labour Organization, Tackling informality in e-waste management: The potential of cooperative enterprises
【参照サイト】Ministry of Environment, Forest and Climate Change, Annual Report 2025–26
【参照サイト】European Commission, Digital Product Passport
【参照サイト】Press Information Bureau, Government of India, “Thirty Critical Minerals List Released”
【参照サイト】Ministry of Mines, National Critical Mineral Mission
【参照サイト】Press Information Bureau, Government of India, “Cabinet approves Rs.1,500 crore Incentive Scheme to promote Critical Mineral Recycling”
【参照サイト】Press Information Bureau, Government of India, “Extraction of Critical Minerals from Tailings”
【参照サイト】UNEP, Sustainable Trade in Resources: Global Material Flows, Circularity and Trade

Edited by Megumi

この記事を書いたライター

西崎こずえ

西崎こずえ

西崎 こずえ(にしざき こずえ)。オーストラリア・キャンベラ大学卒。アムステルダムを拠点とするサステナビリティ特化型コンサルティング企業「Horizon Green」ファウンダー。サーキュラーエコノミー、再生可能エネルギー・水素、クリーンテック分野において、主に欧州と日本の企業・政府機関を支援。事業性とサステナビリティの統合に強みを持ち、ビジネスモデル構築、R&D支援、商談調整、プロジェクトマネジメント、投資家・技術パートナーとの連携、研修プログラムの提供など多岐にわたるサービスを展開。サステナビリティに情熱を注ぐ人のための秘密基地「エコハブ・アムステルダム」発起人・運営。note:https://note.com/kozk0z(この人が書いた記事の一覧)