アスファルトを、気候適応のインフラへ。トロント新街区が描く「育つ道路」

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私たちが「道路」という言葉を聞いて思い浮かべるのは、目的地へ向かうための無機質な灰色の線だ。アスファルトに覆われ、絶え間ない騒音に包まれ、歩行者は常に自動車の列を気にしながらその端を歩く。

都市の面積の多くを占めながら、ただ「通り過ぎるため」だけに存在してきたこの空間のあり方が、いま変わり始めている。カナダ・トロントの港湾地区で進む再開発プロジェクト「Ookwemin Minising(オークウェミン・ミニシング)」は、道路の役割を根本から見直そうとする試みだ。

Image via SLA

かつての工業地帯に誕生する約98エーカーの新街区において、デンマークの景観設計事務所SLAらが掲げるのは、「育つ街路」という考え方。ここでは道路はもはや、単なるA地点からB地点へ移動するための経路ではない。街路には雨水を貯留・再利用するインフラが組み込まれ、在来植物が植えられ、多様な生物が移動できる回廊が整えられる。アスファルトを剥がした地面が雨水を吸収し、植物が木陰を作ることで、都市のヒートアイランド現象を和らげると同時に、激甚化する嵐から街を守る「インフラ」として機能させる計画だ。

このプロジェクトの大きな特徴は、車を排除したあとに生まれる空間を、いかに人のための場所に変えるかにある。カナダ最長となる760メートルの歩行者専用ルート「センター・コモンズ」を中心に、街全体が徒歩や自転車、公共交通を軸に設計されている。

そこには、誰でも自由に座れる椅子や、人々が自然と集まれるスペースが至る所に配置される。設計にあたっては、SLAが培ってきた「建物と建物の間の生活」を豊かにする北欧流のヒューマンスケールな視点と、この土地の先住民族に伝わる物語や空間作りの作法を融合させたと。現地のデザイナーらと協働し、土地の歴史を「生きた遺産」として空間に編み込むプロセスを重視。歩行者中心の公共空間と自然との近さを両立させることで、空間の目的を「効率的な移動」から「滞在の質」へとシフトさせようとしているのだ。

Image via SLA

また、計画されている1万2,000戸の住宅のうち、3,000戸が手頃な価格の住宅として提供される点も重要だ。環境への適応や豊かな公共空間の恩恵を、特定の層だけでなく、多様な居住者が享受できるような仕組みが検討されている。

効率性やスピードを優先してきたこれまでの都市において、道路は人よりも車両の通行が優先される場所になりがちだった。しかし、オークウェミン・ミニシングが目指すのは、建物と建物の間に流れる時間を、再び人や自然の手に取り戻すことだ。

アスファルトを剥がし、そこに生態系を組み込んでいくプロセスは、気候変動という現実的な課題に対して、都市が取れる一つの回答といえる。トロントの挑戦は、これからの都市がどのような手触りを持つべきか、その具体的な形を示している。

【参照サイト】Ookwemin Minising
【参照サイト】SLA and GHD win major design project for Ookwemin Minising
【参照サイト】Toronto island neighbourhood to feature Canada’s “most ambitious” car-free space‘
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