難民のためのブロックチェーンを活用したプリペイドマスターカード

2017.10.23

Nagisa Mizuno

国連難民高等弁務官事務所によると、2017年上半期だけですでに10万人以上の難民がヨーロッパに避難し、難民問題はヨーロッパでの主要な論点の一つになっている。避難した先での住居や食糧を確保する問題だけではなく、実は銀行口座を作れないために経済的自由が奪われていることも、大きな課題の一つだ。そこで、フィンテックを活用し、フィンランドの企業が始めた取り組みがこの課題解決の糸口になっている。

フィンランドのスタートアップ企業MONIは、過去二年間で銀行口座を持っていない数千人の難民に対し、プリペイド式のマスターカードを提供してきた。ブロックチェーン技術を活用したこのカードは、仲介業者を交えず個人間で送金できる仕組みのため、身分証明書のない難民でも使用可能だ。

ブロックチェーン上では、すべての取引がコンピューターネットワーク間で暗号化され、過去の取引が改ざんできない形で連鎖して記録されるため、安全である。他にも、MONI口座間の取引はいつでも迅速で無料なだけではなく、友人や家族間で金利や手数料なしでローンが組める特徴がある。

moniカードと携帯アプリ

Image via MONI

30か国以上のヨーロッパ諸国が加盟する欧州経済領域内で現住所と電話番号がある18歳以上の人であれば、MONIカードを作ることができる。世界中のマスターカードの使えるお店やオンライン、ATMで使用可能だ。もちろん、このカードは通常の銀行口座として機能するため、給料の銀行振込が通常のヨーロッパで、このカードに給料を直接振り込んでもらえる。

日本で普通に暮らしていると、身分証明書がないことも、銀行口座が作れないことも、自由にオンラインでモノを買えず給料も受け取れないことも想像し難い。しかし、手元に何もないまま命からがら祖国を逃れてきた彼らが、たどり着いた新境地で自由に経済活動ができないことは、お金の不自由だけではなく、働くことで得られる生きる目的が奪われることにもなる。ドイツにもあるブロックチェーンを活用した同様の取り組みが広がることで、難民が金融システムの恩恵を受け、経済的能力を発揮できるより良い世界が実現できるだろう。

【参照サイト】UNHCR Europe situation
【参照サイト】MONI
【参照サイト】How Blockchain Is Kickstarting the Financial Lives of Refugees
(※画像:MONIより引用)

この記事を書いたライター

水野 渚

Nagisa Mizuno

水野渚(Mizuno Nagisa)。元国家公務員として、安全保障分野で語学力を駆使し、翻訳・通訳を始め、国家間交渉に携わる。国内では、名古屋、東京、沖縄に住み、海外ではイギリス、デンマーク留学経験の他、世界40か国以上を旅している。サステナブル、環境、海、クリエイティブ、デザイン、アート、ヘルシー、フード、シェアが気になるキーワード。現在、参加型コミュニティアートを大学院で研究中。