ピンクウォッシュとは?
ピンクウォッシュとは、ブランドが公式にLGBTQ+を支持するイメージ戦略を実施しながら、実際のビジネスの中ではLGBTQ+を全く支持していない、あるいは限られた範囲でしか支持していないこと。レインボーウォッシュともいわれる。
LGBTQ+の支持を宣言している企業で、例えば下記のような場合にピンクウォッシュと批判される。
- LGBTQ+に不当な労働慣行を強いている
- 雇用プロセスでLGBTQ+に差別的であったり、配慮がない
- LGBTQ+の支持に反するビジネスを行っている(同性愛が処罰対象となる国で事業を展開しているなど)
- 反LGBTQ+政策を支持する組織・政治家への寄付
環境に配慮していると見せかけるグリーンウォッシュや、広報・経済的利益のために人道的な面をアピールするブルーウォッシュなどと同じく、実態が定かではない「見せかけ」のイメージ戦略である。
ピンクウォッシュの背景
ピンクウォッシュという名前自体は、2002年頃にピンクリボンを象徴する乳がん啓発キャンペーンの推進を見せかける企業・団体への批判からはじまった。例えば、乳がん啓発を支持していながら、発がん性のある製品を製造・販売するといったことである。
2005年からは、パレスチナ人への人権侵害の事実を隠しながら「ゲイフレンドリー」を積極的に打ち出すイスラエル政府に対し、批判する人々がピンクウォッシュの言葉を使いはじめた。同性愛者に厳しいイスラム文化圏に比べて、イスラエルが人権先進国である「ゲイの聖地」としてリブランディングしようとしたのである。
2023年にも、ガザにてイスラエル軍とレインボーフラッグが映る画像をイスラエル政府がSNSで投稿し、「ピンクウォッシュだ」「LGBTQ+を利用しないで」と批判するコメントが並んだ。
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ピンクウォッシュとして批判された事例
ピンクウォッシュはイスラエルに限ったことではない。LGBTQ+フレンドリーを全面的に押し出す企業や、日本の自治体にもピンクウォッシュと批判されている事例もある。
ファッションと労働慣行
6月のプライド月間では、さまざまなファッションブランドがレインボーを模した、限定のカラフルな衣服を発表する。一方で、LGBTQ+の労働慣行は不当なものである事が多い。
H&Mやリーバイスはバングラデシュやインドなど、つい最近まで同性愛が違法であった、あるいは現在でも違法である国で衣服を生産している。また、SHEINはLGBTQ+に限らず非倫理的な労働慣行について厳しく批判されている。スイスの擁護団体Public Eyeの2021年の報告書によると、SHEINの労働者は週に75時間も働き、月に1日の休みしかないという。
ファッションブランドの評価を行うアプリGood on youは、下記のようにコメントしている。
LGBTQ+の人々を含む労働者を低賃金で働かせ、搾取しているブランドが生産・販売するプライド商品には、彼らを力づけるものは何もない
中東でのロゴ不変更
また、プライド月間に自社ロゴや公式SNSのアカウントプロフィールをカラフルにすることで、LGBTQ+の人々との連帯感を表現し、性の多様性を支持する企業も散見される。
Every. Single. Year. This will never not be funny pic.twitter.com/BVj40itRxs
— Libs of TikTok (@libsoftiktok) June 2, 2024
BMW、Ciscoなどの多国籍企業は、性的嗜好の自由を認める国ではロゴを変更したが、ロシアやサウジアラビアなどの中東諸国といった、LGBTQ+に寛容でない国では変更を行わなかった。「ロゴの変更は見せかけに過ぎず、勇気ある行動ではない」「利益とマーケティングのためにLGBTQ+を利用している」といった指摘の声が上がった。
他のマイノリティの排除
日本でもさまざまな自治体がLGBTQ+カップルのパートナーシップを証明したり、LGBTQ+については少しずつ動きがある一方で、他のマイノリティ層は排除するなど、真の意味で多様な立場にいる人々を尊重したまちづくりには課題がある。
東京・渋谷区は、「同性パートナーシップ証明」制度を導入し、LGBTQ+カップルを結婚に相当する関係と認める証明書を発行したり、多様性の配慮を宣言した条例を制定したりしている。その一方で、再開発のために区立公園の路上生活者を追い出すなど、ホームレスの人々の強制排除が批判されている。2023年には、こうした現状に問題提起をし、同区に声を届ける東京リベレーションマーチが開催された。
ブランド・アクティビズムとピンクウォッシュ
性の多様性に限らず、自然環境に耳を傾ける姿勢や、従業員の中絶手術の後押しなど、政治的・社会的な価値観やスタンスを主張をする企業が増加している(ブランド・アクティビズム)。その背景には、ブランドが示すパーパスへの共感が、顧客がブランドを選ぶ要因の大きな一つになっていることがある。
一方で、この共感を手っ取り早く得るために、特に短期的なキャンペーンにおいて「多様性」の言葉が安易に使われることが多々ある。「多様性」を企業や自治体にとって経済的メリットのある形に切り取って利用している場合があること、カラフルなレインボーに覆い隠されたマイノリティの声がある可能性を、気をつけて見る必要があるのではないだろうか。
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