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カーボンニュートラルにカーボンフリー……今話題の「カーボン〇〇」の違いとは?企業の事例もわかりやすく解説

カーボンフリー

Image via Pixabay

2020年9月には、米ITの巨人Google社が「2030年までに自社のオフィスや世界中のデータセンターでつかうエネルギーの100%『カーボンフリー』化を目指す」と発表し話題を集めた。このニュースのように、近年、様々な企業や国の発表の中で「カーボン○○」という言葉が使用されている。カーボンニュートラル、カーボンポジティブ、カーボンネガティブ、カーボンオフセット……読者の皆さんのなかにも、次々登場するカーボン○○の意味の違いが分からずに混乱してしまっている方がいるのではないだろうか?

今回の記事では、それぞれの言葉について事例を用いながら解説していく。

1.カーボンニュートラル:排出したCO2を実質的にゼロにする

カーボンニュートラルとは、ライフサイクル全体で見たときに、二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になることで、炭素中立とも呼ばれている。

この言葉は大きく分けて2つの文脈で使われる。

1.エネルギー分野において
植物由来のバイオマス燃料などに関し、「燃焼するときにCO2を排出するが、植物の成長過程で光合成によりCO2を吸収しているので、実質的にはCO2の排出量はプラスマイナスゼロになる状態」のこと。

2.社会や企業における生産活動において、「やむをえず出てしまうCO2排出分を排出権の購入や植樹などによって相殺し、実質的にゼロの状態にすること」。

1の意味でのカーボンニュートラルは、植物由来の燃料や製品の説明時に登場することが多い。
(この記事では、2の文脈の「カーボンニュートラル」について述べていく。)

2.カーボンポジティブ・カーボンネガティブ:排出されるCO2量<吸収したCO2量

ポジティブ・ネガティブと相反する言葉が使われているため、正反対の意味のように思えてしまうが、実はこの2つはどちらも「温室効果ガス(特にCO2)を削減した際、ライフサイクル全体をみて、排出される量より吸収できている量が多くなっている状態」を指す。

カーボンポジティブという言葉を使用しているのは、ユニリーバ、パタゴニア、IKEAなどの企業。カーボンネガティブという言葉を広めたのは、米マイクロソフトである。同社が2020年1月に「2030年までにカーボンネガティブを目指す」とブログで宣言後、「カ-ボンネガティブ」という言葉が注目されるようになった。

3.Googleが目指す「エネルギーの100%カーボンフリー化」とは

Googleが目指すのは、24時間365日いかなるときも「CO2を排出しない=カーボンフリー」エネルギーを利用して事業所やデータセンターを運営することだ。これまでも再生可能エネルギー利用を行ってきたGoogleだが、それは「データセンターで24 時間いつでも再生可能エネルギーを利用できる体制がある」ということではなかった。これまでは、天候に左右される自然エネルギーを使った発電で賄いきれない電力分、あるいは、再生可能エネルギーにアクセスしづらい地域の電力分を、余剰の再生可能エネルギーを購入することで補っていたのだ。世界中に点在するデータセンターのすべてを24時間クリーンエネルギーで運営できるようにするのは、かなり大きな挑戦だということが分かる。

4.カーボンオフセット:排出してしまったCO2を相殺する手段

カーボンオフセットとは、日常生活や経済活動を営むうえでどうしても排出してしまう温室効果ガスの量を、別の場所で削減・吸収して埋め合わせをしようとする考え方のこと。オフセットの方法には、植樹や森林の管理などによりCO2 の吸収を促す、再生可能エネルギーの利用や省エネ機器の導入などにより温室効果ガスを削減するといったものがある。これは、あくまでも温室効果ガスを極力排出しないよう努力をした上で、それでもどうしても発生してしまうCO2量を違った手段で削減するのが目的。「オフセットで埋め合わせをするから普段の活動に気を配らなくても良い」ということではない。

カーボンオフセットには「クレジット」というものを使用する。クレジットとは、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の良い機器の導入、あるいは植林や間伐等による森林管理を行うなどして実現できた温室効果ガス削減・吸収量をルールに従って定量(数値)化し、市場で取引可能な形態にしたもののこと。このクレジットを購入することでカーボンオフセットをすることができる。

グリーンエネルギー

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4.カーボンニュートラル/ポジティブ/ネガティブを目指す国や企業

まずは国の事例を紹介していく。

<カーボンニュートラル/ポジティブ/ネガティブを目指す国の例>

・2007年にはノルウェーのイェンス・ストルテンベルク首相(当時)が、2050年までに国家レベルでカーボンニュートラルを実現する政策目標を発表。
・同年、コスタリカのオスカル・アリアス大統領(当時)も2021年までの実現を目指したカーボンニュートラル宣言を行う。

・2017年にはパリで開かれたワン・プラネット・サミット(One Planet Summit)において、ニュージーランドとマーシャル諸島のイニシアチブでカーボンニュートラル宣言(Declaration of the Carbon Neutrality Coalition)が発出。この宣言では2050年までに国の温室効果ガス排出をネットゼロに抑えることを「政策公約」とすることを参加資格としており署名した国はカーボンニュートラル連合の一員となる。※2019年10月現在、参加国は29カ国で、日本も署名を行っている。

・2020年9月22日、中国の習近平国家主席が、CO2排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルを目指すと表明。

脱炭素化を目指す動きに賛同する企業も多く、なかには、Googleのようにカーボンニュートラルを達成済みの企業も存在します。カーボンニュートラルを達成した企業は、次のステップとしてカーボンポジティブ/ネガティブな経営を目指すことも多いようです。

<カーボンニュートラル・カーボンネガティブ/ポジティブに関する企業の動き>

・Amazon(グローバルEC大手):2019年9月、パリ協定の目標を10年前倒しで達成する取り組みである気候変動対策に関する誓約(The Climate Pledge)に署名。2040年までの炭素ゼロ達成に向け、2030年までに再生可能エネルギーの電力比率を100%にすると宣言

・グッチ(ファッションブランド):社長兼CEOのマルコ・ビッザーリ氏が、他業種の企業の経営幹部たちに対し「CEO Carbon Neutral Challenge」を提唱。企業活動により排出される温室効果ガスの問題に今すぐ取り組むよう呼びかけた。

・レゴグループ(玩具):2022年までに製造事業におけるカーボンニュートラルの達成を目標に掲げる。

・ユニリーバ(消費財大手):2015年11月、同社の気候変動に関する目標として「2030年までにカーボンポジティブを達成する」と発表。

・パタゴニア(アウトドアメーカー):2019年10月、「2025年までにリサイクルした原料や再生可能な原料のみを使用する」ことを決定。こうした取り組みを通じ、カーボンポジティブを目指す、と宣言した。

・IKEA(家具大手):2019年11月、「カーボンポジティブに向け240億円の投資を決定した」と発表。

・マイクロソフト:2020年1月、「2030年までにカーボンネガティブを目指す」と発表。
また同社は2020年7月、ユニリーバ、スターバックス、メルセデスベンツ、ナイキ、ダノンなどと9社で連携し、2050年までにCO2排出量のネットゼロ(差し引きゼロ)を達成を目指すイニシアチブ「Transform to Net Zero」を立ち上げたと発表している。

<カーボンニュートラルを達成済み>

・マイクロソフト:2012年にカーボンニュートラルを達成。さらに、2030年までにカーボンネガティブ達成、2050年までに創業以来排出してきたすべてのCO2を除去する計画を打ち出している。

・Google:2007年からカーボンニュートラルを維持。取り組みをさらに強化し、データセンターの冷房に機械学習を応用して、冷房システムによるエネルギー使用を30%削減するなどの対策を続けている。2020年9月14日には、1998年の創業時からカーボンニュートラルを達成した2007年までの間に排出した「カーボンレガシー(CO2排出量の遺産)」をすべてオフセットし、ゼロにしたと発表。さらに、2030年までに世界の事業所やデータセンターなどで使用するエネルギーを、二酸化炭素を排出しない「カーボンフリー」エネルギーに切り替えると宣言した。

脱炭素化を目指す動きは、多くの国や企業の間で広がりを見せている。

5.脱炭素化のための手段とは?

企業や団体がカーボンニュートラルやカーボンポジティブ、カーボンネガティブを目指す際、一般的に以下のようなことが実施される。

・CO2排出量の削減
・再生可能エネルギーへの切り替え(化石燃料を使わない)
・廃棄物の削減
・輸送削減のため、より局所的な生産をサポートする
・輸送の電化
・森林再生などのプロジェクトへの資金提供によるカーボンオフセット

カーボンオフセット等の手段を利用する場合は「CO2排出の免罪符」になってしまっていないかに気を配る必要がある。まずは、どこかでCO2発生量を減らすことはできないか考えてみよう。

また、「プロセスのうちのAを改善したらAにおける環境負荷は低下したが、Bという工程にしわ寄せが行ってしまいトータルとして考えると以前よりかなり高い環境負荷がかかるようになってしまった」ということも起こり得る。全体を俯瞰的にとらえて、さまざまな角度からベストな改善策を探していくことが大切だ。

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おわりに

カーボンニュートラル:排出したCO2を実質的に相殺
カーボンポジティブ・カーボンネガティブ:排出したCO2量<吸収したCO2量
カーボンオフセット:どうしても排出してしまうCO2量を、別の場所で削減・吸収して埋め合わせる

それぞれの単語の意味がクリアになっただろうか?脱炭素社会の実現へ向け、今後も「カーボン○○」にまつわるニュースが多数登場すると考えられる。似たようなカタカナの単語が並ぶと混乱してしまいがちだが、整理してみると意外とすんなり理解できるものだ。一つ一つ整理しながら、引き続き、「カーボン○○」のニュースに注目していきたい。

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【参照サイト】カーボン・オフセット / カーボン・ニュートラルとは?|カーボン・オフセットフォーラム
【参照サイト】クレジットとは?|カーボン・オフセットフォーラム
【参照サイト】中国のCO2排出量、2060年までに実質ゼロに 習主席が表明
【参照サイト】AmazonとGlobal Optimism、パリ協定の目標達成を10年早める気候変動対策に関する誓約を共同調印
【参照サイト】CEO CARBON NEUTRAL CHALLANGE|GUCCI
【参照サイト】レゴグループ、3年間で最大4億ドルをサステナビリティへの取り組みへ投資
【参照サイト】Nine leading businesses launch new initiative to accelerate progress to a net zero future

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