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アカウンタビリティとは・意味

会議室にいる人々

アカウンタビリティとは

アカウンタビリティとは、説明責任を意味する。行政や医療・福祉など、様々な分野で用いられるが、ここでは経営用語としてのアカウンタビリティについて解説する。

企業経営におけるアカウンタビリティは、具体的には、経営者が株主や投資家に対して、企業の状況や財務内容を報告する義務や、企業から他のステークホルダーに状況を説明する責任を指す。

アカウンタビリティは、もとは契約の経済学から発生した概念である。株主は経営者に経営を委託しているが、通常、株主と経営者の間には、会社の状況や経営者の行動に関する情報に格差がある。この情報の格差を埋めるために、経営者が企業の情報を開示する義務がアカウンタビリティである。開示する情報の代表例が財務諸表を中心とする会計情報であるが、近年ではESG投資の拡大にともない、環境・社会・ガバナンスといったESG情報、非財務情報についても自主的に情報開示する企業が増えてきている。

アカウンタビリティに関する法令や原則・指針

まず、日本の法令では会社法や金融証券取引法で会計情報の開示が義務づけられている。会社法では、株主総会招集通知に計算書類と監査報告書の添付が要求されており、金融証券取引法では、有価証券を発行・上場して不特定多数の株主・投資家から資金を調達する場合に、財務諸表と監査報告書を含む有価証券報告書を作成開示することが義務づけられている。

近年では、上記のような法令に基づく情報開示以外にも、様々な説明責任が求められるようになってきている。また、財務情報に限らず非財務情報に関しても、情報開示が求められるようになってきている。たとえば、2015年に東京証券取引所と金融庁が制定(2018年、2021年に改定)した、上場企業に向けた規範・行動原則である「コーポレートガバナンス・コード」では、「適切な情報開示と透明性の確保」に関する基本原則3で以下のように述べている。

上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。

つまり、法令に基づく開示を適切に実施した上で、さらに、株主との間で建設的な対話を行う上で重要となる非財務情報も含めた開示が推奨されている。

また、「コーポレートガバナンス・コード」の原則3-1では、上場企業が会社の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレートガバナンスを実現するとの観点から、以下の事項の開示ならびに、主体的な情報発信も推奨している。

  1. 会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
  2. 本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
  3. 取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続
  4. 取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
  5. 取締役会が上記4を踏まえて経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選解任・指名についての説明上記のように、企業は決算・財務情報に留まらず、環境・社会に関する非財務情報や、コーポレートガバナンスに関する情報など、より幅広い情報の開示と説明が求められるようになってきているといえよう。

なお、非財務情報報告に関する基準策定で先行している欧州では、2018年以降、非財務情報開示指令(Nonfinancial. Reporting Directive)に基づき、従業員500人超の企業に対してサステナビリティ情報開示が要請されており、2021年4月には欧州委員会がサステナビリティ報告に関する新たな指針の案(Corporate Sustainability-information Reporting Directives)を公表するなど、非財務情報開示の義務化の動きが進んでいる。米国においても、証券取引委員会(SEC)がESG情報の開示の強化を協議している。

まとめ

企業のアカウンタビリティについては、法令に準じた対応に限らず、積極的にその内容を拡充させていくことが求められている。上記で紹介した日本版の「コーポレートガバナンス・コード」では、2021年6月の改定で、TCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実させることや、サステナビリティについての基本的な方針を策定し自社の取り組みを開示すること、また取締役会で独立社外取締役を3分の1以上選任することなどが追加された。上場企業は特に、これらの要請に応じて説明責任を拡充していくことが必要である。

グローバルでも、今後も急速に新たな法令や原則・指針の策定が行われる見込みであり、企業は今後より一層、幅広い情報開示と説明が求められるようになるだろう。

【参照サイト】野村総合研究所、用語解説「アカウンタビリティとは」
【参照サイト】株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」
【参照サイト】日本取引所グループ「改訂コーポレートガバナンス・コードの公表」
【参照サイト】KPMG「欧州委員会が企業のサステナビリティ報告に関する指令(案)を公表」

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