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気候不安(エコ不安)とは・意味

気候不安

気候不安(エコ不安)とは

気候不安(エコ不安)とは地球環境の危機的状況に対する慢性的な強い恐怖心のことで、不安感や喪失感、無力感、悲しみ、怒り、絶望感、罪悪感などの心理的ストレスを抱くこと。またそのストレスが日常生活や活動に悪影響を及ぼしてしまう状態である。

英語でEco AnxietyやClimate Anxiety 、日本語では「気候不安症」「エコ不安症」と呼ばれており、正式な医学用語ではないものの、特に若者のメンタルヘルスに重要な影響を及ぼすとされている。

実際に2021年9月に医学雑誌「ランセット」に掲載された10カ国の16~25歳、1万人を対象に行われた調査結果 (※1) では、対象者の約3分の2が気候変動について「非常にまたは極度に心配」し、84%が「少なくとも多少は心配している」ことが明らかになっている。その中でも50%以上が不安、怒り、無力感、罪悪感を抱いており、45%以上が「日常生活や活動に悪影響を及ぼしていると感じる」と回答した。

地球の未来を考え危機感を持つことは大切な感情である一方で、気候不安は過度にメンタルヘルスに影響し、ウェルビーイングや健康を脅かす可能性がある。

どうして気候不安(エコ不安)は起こるのか?

気候不安を引き起こす要因として考えられているのは以下である。

気候変動の絶望的なニュース記事や視覚的映像

2021年の気候変動に対する政府間パネルでは、国連は気候変動を人類への赤信号と表現し、温暖化効果ガスの排出や森林伐採は人類の生存を脅かすと警鐘を鳴らしている。

実際に近年、山火事やハリケーン、災害の様子、絶滅する動植物などの自然災害や自然被害をメディアで頻繁に目にするようになった。こういった気候変動に関する記事やニュースは時に、将来を悲観してしまう絶望的なストーリーで語られることが多く、そこから精神的なストレスにつながってしまうのだ。

災害経験のトラウマ

実際に自然災害を経験した人は気候不安に陥りやすいとされている。
例えば、2005年に米国南東部を襲った「ハリケーン・カトリーナ」のあとで生存者に対して行われたサンプル調査では、6人に1人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)の基準を満たしており、自殺及び自殺願望を持つ人の割合が倍増したことが判明している。

米ウースター大学の心理学者のスーザン・クレイトンは報告書(※2)の中で「うつ病や不安、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、薬物乱用、家庭内暴力などのすべてが、自然災害のあとで増加する傾向がある。自然災害が増えるにつれて、このような精神衛生への影響も増えると予想される。」と指摘している。

失われていく生活様式

世界中にはすでに気候変動の影響を直接的に受けている人々もいる。カナダのラブラドル地方に暮らすイヌイットの人々もその一例だ。彼らの土地では世界平均の2倍の速さで温暖化が進んでいると言われており、町に留まり遠出ができない時期が長期化している。こうした期間には町での自殺や自殺未遂、自殺願望が増える傾向にあるという。

政府の対応への不安視

上記のように世界中で気候変動が地球を脅かしているにもかかわらず、政府の無行動に不信感を覚え、精神的ストレスを抱える若者も多いという。

バース大学等の調査結果 (※1) によると、各国政府の危機対応に関しては、「自分たちや将来の世代を裏切っている」と回答した人が58%、「対応策の影響についてうそをついている」と回答している人は64%と、批判的に捉えている若者が半数以上を占めている。

若者を脅かす気候不安(エコ不安)

気候変動問題が若者にとっては、より差し迫った課題になっている点、そして世界的なパンデミックの影響もあり、不確かな未来への不安を募らせる若者が増えている。
2020年11月、英国王立精神科医学会(RC Psych)が出したデータ(※3)では、児童・思春期精神科医の57%が、気候危機や環境の状況に関して悩んでいる子どもや若者を診察しているという。

実際の症状例として、17才の患者は自分が水を飲んだり家事に水を使用したりするたびに、何百万人もの人々が死んでしまう妄想に陥ってしまった。また診察した子どもの3分の1は温室効果ガスの排出を抑えるためにライトのスイッチや水道の蛇口などを過剰にチェックしてしまう症状がみられた。

こういった症状は将来への精神的な不安から引き起こされる。バース大学等の調査結果 (※1) では75%の回答者は未来に不安を感じており、「環境危機への不安から将来子供を持つことにためらいを覚える」と回答した人も約4割であった。

気候不安は若者の行動や将来への選択肢まで大きな影響を及ぼしていることが分かる。

気候不安(エコ不安)への対策

気候不安に対するケアにはまだ明確なガイドラインがなく、セラピストが相談者の不安を病的に捉えたり、不健康な反応として扱ったりするケースもある。しかし、気候不安は脅威に対する自然な反応であり、上記のような対応は悲しみや不安を抱えた相談者の感情をさらに悪化させてしまう危険性をはらんでいる。

わたしたちが気候不安と向き合いながらできること

以下に私たちが気候変動への不安や危機感と向き合いながら、自身のメンタルヘルスを保つためにできることをいくつか紹介する。

  • 自然の中で過ごす
  • 市民運動をする
  • デジタルデトックスをする
  • 毎日の生活の中で、地球環境を守るための小さなアクションや選択肢を考える(エコバッグやマイボトルを持つ、環境保護に取り組む企業からの商品を選択するなど)

また、英国王立精神科医学会(RC Psych)のウェブサイトでは、子どもや若者が気候不安に圧倒されずに、対処できるようにするため、親や保護者の接し方のヒントを提供している。
以下はその一例だ。

  • 子どもや若者の声に真摯に耳を傾ける。その感情は自然であり、想いやりがある人であるからこそ湧き上がる感情であると伝える。
  • 草木を植える体験や散歩など、家族一緒に自然の中で過ごす。
  • 環境保護に対してアクションをとる団体とオンラインや地元でつながる。

気候変動という問題は壮大すぎて、1人ではどうしようもできないと無力感に苛まれてしまう。気候不安に陥ってしまうのは、ごく自然な現象だと言えるだろう。しかし、気候変動に対するアクションを起こしている人は確実に存在しており、ポジティブなムーブメントが世界の至るところで起こっている。その事実は気候不安に陥った人々を安心させ、不安をポジティブなエネルギーに転換させてくれるはずだ。IDEAS FOR GOODを読むことで、あなたと一緒に気候変動に立ち向かう仲間を見つけてみて欲しい。

※1 気候不安に対する若者への調査(バース大学)
※2 気候変動と精神衛生に関する詳細な報告書(American Psyocological Association/Climate for Health/Eco America共同調査)
※3 子どもと若者への気候不安調査(英国王立精神科医学会 RC Psych)

【参照サイト】若者の「エコ不安」とは。地球の未来への不安を和らげるために、私たちができること(WORLD ECONOMIC FORUM)
【参照サイト】Climate Anxiety and Mental Illness(SCIENTIFIC AMARICAN)
【参照サイト】The climate crisis and the rise of eco-anxiety(the bmjopinion)
【参照サイト】「気候変動に絶望」 エコ不安症、どうすれば?(朝日新聞)
【参照サイト】地球温暖化で自殺やうつ病が世界的に増加する 研究結果(産経新聞)
【参照サイト】若者9割超が気候変動不安 「未来怖い」75%、政府批判も―10カ国調査(時事通信社)

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